株式会社デンソー(以下、デンソー)のデジタルイノベーション室の室長である成迫剛志氏は、IT技術や業界トレンドなどに関する有志の勉強会として、2012年から「白熱塾」を主催しており、これまでに100回以上実施しています。
2019年2月21日(木)には、DX(デジタルトランスフォーメーション)をテーマにした「白熱塾 拡大版」を開催。イベントに登壇したのは、主催者である成迫氏のほか、株式会社みずほファイナンシャルグループ(以下、みずほFG) デジタルイノベーション部シニアデジタルストラテジストで、Blue Lab最高技術責任者(CTO)も務める大久保光伸氏、そしてNTT Comのクラウド・エバンジェリストである林雅之氏です。ファシリテーターは、SBクリエイティブ ビジネス+IT編集部 編集長の松尾慎司氏が務めました。

会場となったのは、1月からNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)の新しい本社となった「大手町プレイス」28階にある「ガレージ」。業務以外にも、講演会・映画上映会・ゲーム大会など、社内・社外問わず、様々な交流イベントが開催できる多目的空間です。
「白熱塾」のコンセプトは「ワインを飲みながらITを語る」というフランクなもので、会場からは登壇者だけでなく、聴衆者からもざっくばらんな意見が飛び交いました。本記事では、この「白熱塾 拡大版」におけるDXやイノベーションに関する話題を中心に取り上げます。
日本のエンジニアには「大阪のおばちゃん」が足りない
会ではまず成迫氏が、これからの時代の“エンジニアの在り方”について言及。成迫氏はIT Mediaに掲載している自身のブログにおいて、「新入社員への10のアドバイス」という記事をエントリーしており、「下積み期間はしっかりやること」「どうせやるなら楽しくやろう」などのポイントを挙げていますが、その中で特に言いたかったこととして、「海外人材との競争」を挙げました。
「少子高齢化が進むこれからの日本は、外国人に日本に来てもらい、日本で働いてもらい日本で消費してもらわないと、どんどん右肩下がりになってしまいます。つまり、中国やインドの優秀な人材が入ってくるわけです。そのときに、日本のエンジニアはどうするのか、どう戦うのか。ちゃんと考えなければなりません。
日本人は “テクノロジーオリエンテッド”(テクノロジーありき)で物事を考えがちですが、最終的には“誰が買ってくれるのか、儲かるのか”といったことがセットになっていなければなりません。それをフォーマルに考えてしまうと、堅苦しいやり方になってしまいます」(成迫氏)
成迫氏は、エンジニアがテクノロジーオリエンテッドな考え方から脱却する方法として、「大阪のおばちゃん」を目指すべきであると指摘しました。
「私は香港に3年いて中国や東南アジアとビジネスをしていましたが、彼らは会った瞬間にフランクに話して、すぐに仲良くなってしまうわけです。それで最終的には自分が儲かる方向に話を持っていくんですね。
それで思い浮かぶのは“大阪のおばちゃん”です。すぐに仲良くなって、気がついたら何か買わされている(笑)。でも実際は、それがグローバルスタンダードです。これからはそういったカルチャーも学んだほうがいいと思います」(成迫氏)
イノベーションを起こす人は社外から呼ぶべき?社内から人選すべき?
ファシリテーターである松尾氏が「イノベーションを起こすリーダーは、社内からの方がいいのか、それとも社外の方がいいのか」というテーマについて、会場から意見を募ると、来場していたデンソーの社員が挙手。2016年に成迫氏がデンソーに入社したことに対する影響について、次のように語りました。
「デンソーの場合、イノベーションの領域に対して知識がある人はそれほど多くはなかったと思います。その意味で、外部から来た人(成迫氏)の言葉はとても活きたと思います。デンソーはB2Bの会社なので、マーケティングを得意としていませんが、成迫さんが社内マーケティングとして社内に対して発信し、イノベーションを行う体制を固めていったのは、すごく良かったんじゃないかなと思います」(デンソーの参加者)
これを受けて成迫氏は、社内の人間と社外の人間がイノベーションを発信する違いについて、実体験を踏まえて述べました。… 続きを読む