多くの企業が注目している「IoT(Internet of Things)」の活用を支援するべく、先進的プロジェクトの創出やIoTの活用において障壁となり得る規制を緩和することなどを目的として、新たに立ち上げられた組織が「IoT推進ラボ」です。このIoT推進ラボが担う役割やその活動について、経済産業省の佐野究一郎氏にお話を伺いました。

 

IoTにチャレンジする人を支援する「IoT推進ラボ」

 従来の産業や社会構造を一変させる可能性を秘める、IoTビッグデータAI(人工知能)といったテクノロジーの利活用を促進するべく、民主導の組織として2015年10月に設立されたのが「IoT推進コンソーシアム」です。産学官が参画・連携してIoTの推進に関する技術の開発と実証や、新たなビジネスモデルの創出・推進するための体制を構築することを目的とした組織であり、IoTに関する技術開発と利活用、政策課題の解決に向けた提言などを実施するとしています。

 このIoT推進コンソーシアムを構成する組織の一つが「IoT推進ラボ」であり、先進的プロジェクトの創出や規制改革などの環境整備に向け、さまざまな活動を行っています。この組織を支援する背景として、経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長の佐野究一郎氏は次のように説明しました。

「少子高齢化やエネルギー問題など、日本は現在さまざまな社会的課題を抱えています。それらの課題をIoTの技術で解決すると考えたとき、国内には多くの種が転がっていると思っています。たとえば地方には公共交通機関が無いため、高齢者であっても自動車のハンドルを握らざるを得ない地域もあるのが実情です。そこに対して、自動運転で運行するバスを導入できれば、公共交通網を維持することにもつながります。いわば日本は“課題先進国”であるが故に、IoTの先進的なテストベッドになる余地は十分にあるのではないでしょうか。そういったチャレンジをする人たちを支援することを目的に、IoT推進ラボが設立されました」

IoT推進ラボの概要

 

IoTに関連した優れたアイデアを表彰する「IoT Lab Selection」

 IoT推進ラボの目的は、先進的IoTプロジェクトの発掘と育成に向け、企業連携支援や資金支援、規制改革支援を行うこととしています。その一つである規制改革支援については、2015年11月に行われた「未来投資に向けた官民対話」において具体的な成果が生まれています。

 この会議では、自動運転やドローンによる配達および施工管理、医療診断支援システムについて、民間企業から規制などについての課題が示されましたが、出席した安倍晋三内閣総理大臣がその場で具体的な方針を決定し、関係閣僚に対して規制緩和などの検討について指示を出しました。

スピード感のある規制改革等(第二回官民対話の成果)

  IoTをはじめとする先進的なテクノロジーの利活用では、従来の法規制が壁となって立ちはだかることも珍しくありません。このような規制を緩和することもIoT推進ラボの大きな役割であり、未来投資に向けた官民対話で早々に成果を生み出したことになります。

 さらに具体的な活動として、2016年1月下旬から2月上旬にかけて、「IoT Lab Selection」と「IoT Lab Connection」、そして「ビッグデータ分析コンテスト」が行われました。まず「IoT Lab Selection」は、先進的IoTプロジェクトの発掘・選定を行うものであり、法人・個人を問わず広く一般に公募したIoTプロジェクトを審査して表彰、さらに資金やメンター、規制緩和といった面で支援を行うという内容です。

IoT推進ラボの活動実績

 

IoT活用のための規制緩和を積極的に推進

 第1回「IoT Lab Selection」では200を超えるプロジェクト申請の中から、最終的に16のプロジェクトがファイナリストに選ばれました。さらにグランプリと準グランプリ、審査員特別賞の受賞者が決定しました。グランプリを獲得したのは「指紋による訪日観光客の個人認証(決済・本人確認)」を提案した株式会社Liquidで、すでに実証実験が進められていると佐野氏は説明します。

「IoT推進ラボとしては、特に規制の見直しに重点的に取り組んでいます。たとえば、これまで外国人観光客はホテルのチェックイン時にパスポートの呈示が必要で、ホテル側はそれをコピーして保管することが義務付けられていました。しかし株式会社Liquidの提案は、パスポートのIC情報を登録した指紋と紐付けておくことにより、指紋認証だけでパスポート情報が呈示されチェックインできるようにしようというものです。そこで今回、旅館業法上で必要とされていた外国人観光客宿泊時のパスポート呈示、保存方法の法律のグレーゾーンを明らかにし、プリンスホテルで実証実験を行うことになりました」

第1回 IoT Lab Selection 結果概要

 このほかにも、株式会社アフロが提案したスマートフォンによるタクシー業務の効率化を支援するために、ネットワーク化されたタクシーメーターに関する計量法の技術基準を担保できるかどうかを明確化できました。またソニー株式会社が提案したレーザー方式の表示デバイスの実現において障壁となっていた、消費生活用製品安全法にかかる省令について、一部改正に向けて検討が進められています。

ファイナリストの具体的な進捗状況(規制支援)

 このほかにも、たとえば準グランプリとなった株式会社abaでは、要介護者の排泄を検知して通知することで、介護負担軽減を実現する排泄検知シート「LiFi」を提案し、高い評価を得ました。すでに大手寝具メーカーと今年度内の発売を目指して共同開発が進められているほか、船橋市の介護施設で実証実験が進められているなど、ビジネス化に向けて着実に動き出しています。

 

IoTを軸としたアライアンスを支援するマッチングも実施

 IoTの活用によってこれまでまったくつながってこなかった分野の事業者同士が連携することで、新たなビジネスが生まれることが期待されます。このためIoT推進ラボでは、企業間連携を促進するべく、IoT推進ラボの会員がもつシーズまたはニーズを他の会員のニーズやシーズとマッチングする取組として「IoT Lab Connection」を実施。第1回が2016年1月28日に行われ、総勢814名が参加しました。内容は、事業者同士が個別にミーティングする「ビジネス・マッチング」、1対Nでプレゼンテーションを行う「プレゼン・マッチング」、そして自治体と事業者がミーティングする「自治体ブース・マッチング」となっており、IoTの活用につながるパートナー探しのきっかけを提供しました。

Iot Lab Cnnection(ソリューション・マッチング)第1回の概要

 「ビッグデータ分析コンテスト」も面白い取組だと考えています。これは企業などから提供されたビッグデータと、それを活用したデータ分析の精度などを競うアルゴリズムの開発コンテストであり、参加しやすいオンライン形式で実施されました。IoTを活用することで多くのデータを収集することが可能になりますが、一方でその分析を行うデータサイエンティストの人材不足も指摘されています。この課題を解消する上で、このようなコンテストは非常に有益ではないでしょうか。

ビッグデータ分析コンテスト(第1回)の概要

  ここまで紹介した以外にも、IoT推進ラボではさまざまな活動を予定しています。たとえば「Lab Demonstration」は、テーマ別に複数の企業を巻き込んで中長期の実証実験を行うという内容で、「日本型スマート工場モデルケース実証事業」など、すでに9つのプロジェクトが動き出しているとのこと。またIoT推進ラボの活動を日本全国に広げる「地方版IoT推進ラボ」や、海外企業と日本の企業をマッチングする、「グローバル版」なども予定されています。

 

今後は企業間のアライアンスが鍵

 直近では、7月31日(日)に「IoT Lab Selection」と「IoT Lab Connection」を組み合わせたイベントを実施する予定です。「IoT Lab Selection」は第1回と同様、応募し集まったIoTに関連したプロジェクトの中から選ばれたファイナリストがプレゼンし、優秀なプロジェクトを表彰するという内容で、公募はすでに締め切られています。このイベントでは「IoT Lab Connection」も同会場で実施し、「ヘルスケア/スポーツ」、そして「物流/流通/インフラ」といった分野で、事業者間のマッチングを支援する予定で、応募は6月22日(水)までとなっています。

 IoTをはじめとするテクノロジーの普及により、今後ビジネスを取り巻く環境が大きく変わっていくのは間違いないでしょう。その新しい時代に対応する上で、佐野氏は今後はアライアンスがポイントになると指摘します。

「これからのIoTの時代は、1社だけでビジネスを進めるのは簡単ではないと思われます。従って、さまざまな分野の企業が先を見越してアライアンスを組み、新しい分野に投資するといったことが求められているのではないでしょうか。協調すべきところ、競争すべきところを見極め、それぞれの企業で峻別しつつアライアンスを組んでいく。そういった時代が来たのではないかと考えています」

 このようなアライアンスを考えるとき、IoTを活用した新たなアイデアを世間に広く知らしめ、また新たな事業の種を探している事業者とのマッチングまでをサポートする、IoT推進ラボが果たす役割は極めて大きいと言えそうです。

 『Bizコンパス』では、今後もIoT推進ラボの活動を紹介する予定です。ぜひご期待ください。

 

IoT推進ラボについて
■ ホームページ  http://iotlab.jp/jp

※掲載されている内容は公開日時点のものです。
※掲載されているサービスの名称、内容及び条件は、改善などのために予告なく変更することがあります。

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Bizコンパス編集部

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