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AI活用でコールセンター変革に挑む損保ジャパン日本興亜
2017.04.26

人工知能(AI)はビジネスにどう活用されるのか第9回

AI活用でコールセンター変革に挑む損保ジャパン日本興亜

著者 Bizコンパス編集部

 日本各地に拠点を持ち、総席数1,200という規模でお客さまからの年間約190万コールに対応している損害保険ジャパン日本興亜のコールセンターにおいて、人工知能を業務に活用するためのトライアルが始まりました。このプロジェクトの狙いや今後の展開について、同社の執行役員カスタマーコミュニケーション企画部長である陶山さなえ氏、そしてカスタマーコミュニケーション企画部企画グループ課長兼グループリーダーの丸山直俊氏にお話を伺いました。

損害保険ジャパン日本興亜株式会社について

 損害保険ジャパン日本興亜株式会社は、2014年9月、損害保険ジャパンと日本興亜損害保険の合併により誕生した損害保険会社です。損害保険事業を核に、顧客の安心・安全・健康に資する最高品質のサービスを提供し、真のサービス産業への進化を目指しています。

 

ビジネス上重要な役割を担う損保ジャパン日本興亜のコールセンター

 損保ジャパン日本興亜のこれからのビジネスについて、陶山さなえ氏は「保険会社の枠を超え、『サービス産業』への進化を目指していきます」と話し、その実現においてコールセンターは重要な役割を果たすと続けました。

 「サービス産業へ進化する方針において、お客さまとじかに接する部門の対応力強化は重要な命題になります。とりわけ電話での問い合わせや、手続業務までをサポートするコールセンターの品質向上は、極めて重要な取り組みと言えます」

 損保ジャパン日本興亜のコールセンターは、保険契約に関する相談、交通事故時の手続きといったお客さまからの問い合わせのほか、全国の保険代理店からの各種問い合わせに対応しており、お客さまからの保険契約に関する問い合わせは年間約190万コールに及んでいます。扱う保険商品の数は多岐にわたるため、一人前のアドバイザーになるためには多くの経験が必要となると陶山氏は説明します。

 「私どもコールセンターは、当社における営業店や代理店、および保険金支払部門のサポート機能を担う組織に位置付けられると考えています。従ってコールセンターに従事し、お客さまの問い合わせに対応するアドバイザーは、それぞれの業務において、営業部門や保険金支払サービス部門の担当職員と同様のスキルが求められます。このため大変難しい部署であり、またお客さま接点となる重要なポジションであるととらえています」

 

コールセンターの“あるべき姿”の実現に向けてAIを導入

 このように非常に重視しているコールセンターについて、損保ジャパン日本興亜では5年後、10年後を見据えた“あるべき姿”を2014年度に検討し、お客さまをお待たせすることなく品質の高い応対を実現するにはどうすべきか、といったことが検討されています。その“あるべき姿”に向けたファーストステップとして検討されたのがAI(人工知能)の導入でした。その背景にあった課題について説明するのは丸山直俊氏です。

「私たちのコールセンターでは、人材育成や教育に多くのリソースを割いてきましたが、一方で多岐にわたる商品を扱っているため、システムから規定や約款、FAQを検索するといった作業に相応の時間がかかるケースがありました。それによりお客さまをお待たせしたり、あるいはこちらからコールバックしたりするのは、お客さまにとっても、また我々にとっても好ましい姿ではありません。この品質と生産性を同時に改善する技術として、AIに着目しました」

 

音声認識エンジン「VoiceRex」、AIエンジン「corevo」を選定

 実際の導入に当たっては、国内外の複数のベンダーを検討し、最終的にNTTコミュニケーションズが提案するNTTグループの音声認識エンジンである「VoiceRex」とAIエンジンの「corevo」が選ばれています。VoiceRexは音声認識精度の技術評価で世界ナンバーワン(2015年の技術評価国際イベント「CHiME-3」において、参加25機関中トップの精度を達成)となったソリューションであり、人間の自然の会話を高精度にテキスト化できます。corevoは人間の感情を理解した上での会話が可能であり、モノや周囲の環境をリアルタイムに把握して制御できる高性能なAIエンジンです。今回の損保ジャパン日本興亜のシステムでは、VoiceRexで得た会話データをもとに、適切なFAQを表示する役割をcorevoが担っています。

 NTTコミュニケーションズが提案したソリューションで高く評価されたのは、高精度な音声認識の精度でした。

 「学習しない状況でも80%台の認識率だったのですが、学習させることで90%を超える精度に到達しました。他社の認識精度についてもある程度把握していましたので、この数値には驚きました。より速く、正確に認識できることに加え、年齢や出身地などによって微妙に言葉が異なるケースでも問題なく適切に認識してくれます。この結果から、私たちのコールセンターで使うソリューションとしてはベストだと判断し、導入を決めました」(陶山氏)

 

AI活用で応対時間を大幅に短縮

 VoiceRexとcorevoを利用し、損保ジャパン日本興亜では独自の「アドバイザー自動知識支援システム」を構築しています。これは顧客とアドバイザーの会話を自動的にテキスト化し、その内容に含まれるキーワードをcorevoが抽出した上で、適切なFAQの候補をアドバイザーが利用する端末の画面に表示する仕組みです。現在は一部拠点においてトライアルが始められています。

 このシステムの効果として、損保ジャパン日本興亜が期待しているのは顧客の待ち時間の短縮です。コールセンターに電話したとき、保留音を聞かされることなく、期待したとおりの対応が即座に行われれば、お客さま評価も高まると考えます。またコールセンターにとっても、お客さまに保留音を聞かせることなく答えを提示することができれば、それだけ生産性を高められることになります。損保ジャパン日本興亜では具体的な目標として「1件あたりの応対時間を3分の2にする」ことを掲げ、実際にトライアルでは順調に成果を出しています。

「アドバイザー自動知識支援システム」の概要

 一方、導入においては課題もありました。それはアドバイザーの画面に表示する、FAQの品質です。

 「画面にFAQが自動的に表示されるのは画期的であり、実際の会話に即したFAQがリアルタイムに表示されたときは非常に助かるとアドバイザーも評価しています。しかし、導入当初はFAQ自体が不足しており、期待するFAQが表示されないケースがありました。そのため、現在FAQの拡充を行っており、今後もFAQの整備を進めていく予定です」(丸山氏)

 ここで問題となってくるのは、FAQの作成にかかる手間です。基本的に人手で作業することになるため、さまざまな問い合わせに対応するために必要となる大量のFAQを整備するには、膨大なリソースが必要となってしまいます。NTTコミュニケーションズでは、その解決策も損保ジャパン日本興亜に提案しているようです。

 「NTTコミュニケーションズから、FAQの作成を支援する技術についても提案を受けています。今後はその提案などを採り入れてFAQ整備の効率化が図れれば、システムとしての広がりが生まれますし、コールセンター運営の将来も明るい展望が期待できますね」(丸山氏)

 

将来は“コンシェルジュ”を目指す

 今後の展望について、丸山氏は「感情認識の技術や要約技術についても活用したい」と話します。NTTコミュニケーションズにはこれらを実現するプロダクトもあり、その技術を活用してコールセンターの応対に対するお客さまの満足度の分析を行いたいと考えていると言います。その部分について、「これからの発展性に大いに魅力を感じています」と丸山氏は期待を寄せます。

 また、陶山氏が将来展望として示したのは、コールセンターがグループ全体のゲートウェイとなり、アドバイザーがコンシェルジュとしてお客さまに寄り添い、最適なサービスを提供する姿です。

 「損保ジャパン日本興亜ホールディングスでは、損害保険を軸としつつ、生命保険や介護、あるいは住宅のリフォームなど、お客さまの安心・安全・健康に資する最高品質のサービスを提供しています。その中でコールセンターが多種多様なサービスを展開しているグループ全体のゲートウェイとなり、最適なサービスをご提供することが可能となることで、新たな展開につなげ、お客さまに寄り添ったコールセンターを実現していきたいですね」

 今回の事例でも述べられた顧客応対時間の短縮など、コールセンターの現場ではAIに大きな期待が寄せられています。この新たなテクノロジーを積極的に採り入れた損保ジャパン日本興亜が、これからのコールセンターをどのようにデザインしていくのか。同社の取り組みから目が離せません。

※掲載されている内容は公開日時点のものです。
※掲載されているサービスの名称、内容及び条件は、改善などのために予告なく変更することがあります。

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