多くのECサイトでは、顧客のオンラインでの行動を記録し、そのデータを分析して、売上拡大やマーケティング施策の立案に活用しています。
リアルな店舗や商業施設でも、これと同じようなことができれば、顧客の数やリピート率、店舗内での行動パターンが把握でき、売上アップのための効率的な対策を講じることが可能になります。とはいえ現実世界の店舗は、当然ながらオンラインではなく“アナログ”です。顧客がどのように行動しているのか、そのデータを掴むことは簡単なことではありません。スタッフの記憶や勘、経験に頼っているケースも多いかもしれません。
しかし、「Wi-Fi」の電波を活用すれば、たとえリアル店舗であっても、顧客の行動パターンを解析できます。それが、株式会社アドインテ(以下、アドインテ)、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)、NTTビズリンク株式会社(以下、NTTビズリンク)の3社が連携して提供する「人流解析ソリューション」です。
なぜWi-Fiを使うことで、店舗における人の動きが分かるのでしょうか? リアル空間でありながらも、まるでオンラインのように顧客の行動が把握できる人流解析ソリューションの秘密について、担当者4名にインタビューしました。
なぜWi-Fiで、顧客の動きが可視化できるのか?
――まずは、「人流解析ソリューション」がどのようなサービスか、簡単に説明していただけますか?
NTTコミュニケーションズ株式会社 ICTコンサルティング本部 第一グループ DXコンサルタント 木谷 純一郎氏(以下、木谷)
人流解析ソリューションは、顧客のスマートフォンが発している電波を元に端末の匿名位置情報を把握し、店内の人の流れを収集・解析することで、新たな気づきを与えることができるソリューションです。
このソリューションで核となるのが、スマートフォンの電波から端末の匿名位置情報を収集するデバイスである、アドインテ社の「AIBeacon(エーアイビーコン)」です。
株式会社アドインテ 事業開発本部 執行役員 荒川邦雄氏(以下、荒川)
AIBeaconは、Wi-Fiセンサーと、「BLE※ Beacon(ビーコン)」が一体となった端末です。スマートフォンが発信している電波をキャッチすることで、端末の匿名位置情報を捕捉します。
※BLE:Bluetooth Low Energy(低消費電力の近距離無線技術)
AIBeaconは、もともとWebにおける行動分析の一環として生まれたものです。
当社はモバイル広告配信事業を展開する企業で、Web上での人の動きをトラッキング(追跡)し、訪れた人が何を求めているのかを解析することで広告配信の最適化を図ってきました。この取り組みをより進め、人の行動を正しく多面的に捉えるためには、Web上だけでなく、リアルでの動きも捕捉する必要があると考えるようになりました。リアルな場での人の動きをトラッキングするためのデバイスとして、AIBeaconを開発しました。
位置情報収集:「Aibeacon」

――AIBeaconが「人の動きを把握するもの」ということはわかりました。しかし、なぜWi-Fiで人の動きが把握できるのでしょうか? その仕組みを教えてください。
荒川 AIBeaconは、スマートフォンが発信している匿名情報をキャッチし、Wi-Fi設定をオンにしている1つ1つのスマートフォンが発する電波信号を識別します。そのため、顧客がそれぞれ持つスマートフォンがどのように移動したのか、というデータが取得できます。
さらに、エリア内にあるスマートフォンの数も計測できるため、混雑状況の可視化もできます。ただし、ユーザーの名前や住所といった個人情報は一切取り扱いません。
ヒートマップ

顧客サービスのためのWi-Fiが、営業ツールに変わる
――AIBeaconで取得したデータには、どのような活用方法がありますか?
荒川 AIBeaconを使うことで、来店する顧客の数はもちろん、その顧客が店舗に滞在した時間、ある期間内における来店頻度、店舗内の回遊パターンも分析できます。分析によって顧客の行動を明らかにすることで、客観的なデータに基づいた店舗オペレーションの改善や、売上UPに向けた施策が実施可能になります。さらに、分析結果を活用し、ターゲティング精度を高めた広告をSNSやスマートフォンアプリ上に配信することも可能です。
――AIBeaconで取得したデータは、どのような形で保存されるのでしょうか?… 続きを読む