よくある失敗例

 企業のIT担当者のところには、よくITサービスの売り込みがやってきます。そのとき、どのように判断すべきでしょうか? 営業マンの言葉をうのみにした導入は、あとで後悔することもあるのでは。

 最新のIT動向に合わせてリニューアルした「新・営業にダマされない! ITサービスの選び方」。第1回のテーマは固定電話サービスです。まずは、よくある失敗例を見てみましょう。

 

通話料無料が生んだ想定外のコスト

営業担当

<営業担当の売り込み>

 物理的に距離の離れた拠点同士の通話が多いようでしたら、いっそいまお使いのデータ用ネットワーク(イントラネット)を使って内線化してはいかがでしょうか。内線なら北海道と沖縄の通話であっても通話料はかかりませんし、音声の品質も問題ありません。各拠点でお使いの電話機やPBXもそのまま使えますので、この機会にいかがですか。


情報システム担当

<情報システム担当>

 「拠点間の通話が無料」という売り文句につられて全拠点のデータと音声を統合する内線化を決断。既存の設備が使えるというふれこみだったが、専用電話機の購入など予想外の費用がかかってしまった。また、拠点ごとに異なるPBXベンダーの調整も難航。どうにか稼働にこぎつけたものの、この投資は一体いつ回収できるのだろうか。

 拠点間の通話が無料になるのは確かに魅力的ですが、データ用ネットワーク(イントラネット)に音声を通す際には予想外の費用がかかる場合があるので注意が必要です。

 これはIP電話による外線通話で拠点間を結ぶ際も同様で、想定外のコストをきちんと可視化して検討する必要があります。

 また、移行時には各拠点の調整が難航することが少なくありませんので、たとえばプロジェクトを組んで対応してもらえるようなノウハウを持った事業者を選ぶのが正解です。

 

目先のコスト重視が事業拡大の妨げに

営業担当

<営業担当の売り込み>

 うちのIP電話サービスでしたら、携帯電話への発信についても社内外の通話がまとめてお安くなります。初期投資も最小限に抑えられますので、導入すれば時間をかけずに回収できるはずです。ただいまキャンペーン中ですので、ご契約いただければ、さらにお得な割引もご用意しています。


情報システム担当

<情報システム担当>

 社内外の通話料削減が最大のミッションだったため、各社のIP電話サービスのコストを比較検討して選択。狙った通りの効果も得られて満足していた。

 ところが、スマートフォンの内線化に制限があったり、BYODに対応できなかったりすることが判明。さらに事業拡大に伴い、国内だけでなく海外拠点における通話料削減も課題になってきた。

 内線や固定電話をIP電話に置き換える最大のメリットは「通話コストの削減」でしょう。しかし、そこにとらわれ過ぎると大きな落とし穴が待っています。なぜなら、企業における電話環境とは5年、10年単位で継続的に利用されるものだからです。新たな業務スタイルに対応するためのPBXクラウド化やユニファイドコミュニケーションサービスとの連携など、将来的に予測される変化をきちんと想定して、柔軟に対応できる“懐の深さ”を持ったサービスを選ぶことも重要なポイントです。

 

“高品質”という言葉を信じたばかりに

営業担当

<営業担当の売り込み>

 うちのIP電話サービスは高品質なVPNを通して提供されますので、品質に関しては問題ありません。いまお使いの固定電話から切り替えても、ほとんどの方が気付かれないはずです。実際にトライアルで通話の品質をお確かめいただけますので、一度使ってみて判断してみてはいかがでしょうか。


情報システム担当

<情報システム担当>

 トライアル期間を設け、通話品質に問題はなかったので全社の固定電話をIP電話サービスに切り替えた。ほぼ問題なく使えているのだが、しばしば回線の故障や定期的なメンテナンス工事などにより一時的に一部拠点で通話できないケースが発生。短時間で復旧するため大きな問題はないが、ある部署から業務に支障があるとの申告があり、そのままにしておくわけにはいかないのだが……。

 IP電話サービスの品質を事前にデモやトライアルで確認しておくことは、固定電話切り替え時のセオリーです。その点においては、担当者の判断は正解でした。しかし、いくら品質の高いVPNを使っても、回線の故障やメンテナンス工事で一時的に電話が使えなくなるリスクは想定しておくべきです。たとえばメイン回線故障時に迂回させるバックアップ回線を用意するなどの対策や、重要な業務での利用にあたってはギャランティ型のサービスを検討しておくことが重要になります。

▼それでは、固定電話サービスの基本をおさらいしておきましょう▼
「固定電話サービスとは?」

※掲載されている内容は公開日時点のものです。
※掲載されているサービスの名称、内容及び条件は、改善などのために予告なく変更することがあります。

固定電話サービスとは?

固定電話は「技術」によって2種類に分類される

 ここ10年あまりの間にITをはじめとするテクノロジーは著しい進歩を遂げました。なかでも顕著なのが通信機器です。かつて一家に一台あった固定電話機は携帯電話などの普及によって利用者数が減少する傾向にあります。その一方で、今後すべての電話機が携帯電話に置き換わることはなく、企業にとって固定電話は今後も重要な通信手段であることに変わらないのもまた事実なのです。

 固定電話サービスは、技術的に従来型の電話網(PSTN)とIP電話網の2種類に分けられます。

 

従来型の電話網(PSTN)

 まずはNTT東日本・西日本が提供する加入電話サービスについて紹介します。最も古くて一般的な電話回線です。各オフィスや家庭とNTTの電話局を銅線でつなぎ、そこにアナログの音声信号を流します。銅線は安価で取り扱いも容易であるため、早い時期から日本全国へと電話を普及させるのに貢献しました。

 

IP電話網

 光ファイバーなどの高速・大容量な通信回線の普及により、従来型の電話網に代わって現在主流になりつつあるのがIP電話網です。IP電話ではIPプロトコルを利用することにより、安価なインターネット回線や高品質なVPN回線などを利用して音声のやりとりができます。従来型の電話網に比べて基本料や通話料が抑えられるのが大きなポイントです。なお、サービスによって「03」「06」から始まる従来の電話番号が継続して使えるタイプ、「050」から始まる新たな番号が付与されるタイプがあります。

IP電話回線とデータ通信回線の統合

 IP電話のメリットは音声通話回線と高速なデータ回線を統合して利用できることです。これにより通信コストの大幅な削減と運用の効率化が図れます。またIP電話を利用した内線網も構築できるため、従来の内線網と置き換えることで、さらなる通信コストの削減も図れます。現在、通信事業者各社からはさまざまなIP電話サービスが提供されています(「サービス事業者比較」参照)。

ビジネス向け固定電話を取り巻く現状

 今やビジネスでの連絡手段の主流は電子メールや携帯電話に移っているかもしれませんが、まだまだ固定電話の利用もなくなりません。しか、技術革新や規制緩和によってサービスを提供する通信事業者が新たに登場したため、どのようなサービスがあるのか、どのようなメリットとデメリットがあるのかが見えづらくなっています。

 さらに、NTT東日本・西日本では2020年ごろから5年ほどかけて、従来の電話網をIP電話網に移行する構想も発表しています。詳細についてはこれから徐々に明らかになっていくと思われますが、このような変化に柔軟に対応できるよう、自社で利用する固定電話をIP電話サービスに切り替えるのが得策と言えるでしょう。

▼IP電話サービスを利用するメリット・デメリットを確認しましょう▼
「メリット・デメリット」

メリット・デメリット

 ここではIP電話サービスにおけるメリットとデメリットを説明していきましょう。

 音声とデータ通信を統合する試みは従来から行われてきましたが、自社内の通信の効率化、拠点間の電話の内線通話化が中心でした。しかし最近登場している音声とデータの統合サービスでは、IP電話の技術を利用することにより、外線発信通話料もお得になっています。

 

IP電話を使うメリット

基本料金の削減が可能

 NTT東日本・西日本の加入電話の基本料金と比べると、基本料金が安価。電話の固定料金に関するコストを削減できる。

割安な通話料、無料通話も

 市内や市外への電話や国際電話、IP電話や携帯電話への通話が一般加入電話よりも割安に。また同じ事業者同士の場合、無料になることもある。

データ通信との統合でさらにお得に

 音声をデータ通信用ネットワークに統合することで、事業者に支払うコストはもちろん、保守や請求も一本化されることから、社内の運用コストも削減できる。

050番号で柔軟な運用形態に

 「050」で始まる番号を利用することが可能なので、移転後も同じ番号を使い続けることができるほか、1人1番号制をとることで将来的なスマートフォン内線化やBYODなどへ向けた土台を作ることができる。

 

IP電話を使うデメリット

一部利用できない電話サービスがある

 110番や119番、フリーダイヤル、ナビダイヤルなど、サービスによって一部で利用できないことがある。

従来の電話番号が使えないことがある

 従来使っていた「03」などで始まる番号に移行できるタイプと、新たな「050」から始まる番号に切り替えるタイプがある。後者の場合、新しい電話番号を取引先などに伝える手間や、名刺や印刷物などを作り変えるといったコストなどが発生する。

IP化に関する設計が必要な場合がある

 データ通信用ネットワークに統合して利用する場合、ネットワークの帯域や優先制御などの設計や、移行のプランニングが必要となる。

 

選択のポイント

  IP電話最大のメリットはコスト削減効果ですが、そこにとらわれすぎると先の失敗例のような事態を招いてしまいます。コストを前提としつつも、その他の条件もきちんと併せて検討することがいいサービス選びのポイントです。

コスト

・初期費用(工事、機器購入など)
・基本料、通話料(拠点間、外線、携帯電話、国際通話など)
・運用保守費用

柔軟性

・サービス仕様(従来の電話番号利用、内線利用、利用可能なオプション)
・連動するサービスの充実度(スマホ内線利用、BYOD、クラウド型PBX、ユニファイドコミュニケーションなど)
・移行に関する各種調整の対応可否

品質

・利用できる回線の種類(帯域、障害時の対応、音声専用ギャランティアクセス提供の有無など)
・バックアップ回線提供の有無
・デモ、トライアルサービスの有無

▼では、もっと詳しいチェックリストで確認しましょう。▼
「すぐに使えるチェックリスト」をクリック!

すぐに使えるチェックリスト

 IP電話サービスは、提供事業者が多く検討すべき項目が多岐にわたるため、導入に際しては専門家や事業者の担当と相談しながら進めることになるでしょう。

 ここでは事業者の言いなりにならずに自社に最適な固定電話サービスを選ぶための、チェック項目と解説をまとめた資料をご用意しました。サービス事業者へのヒアリングの際などにご活用ください。(ダウンロードにはBizコンパスへの会員登録<無料>が必要です)

サービス事業者比較

 国内のIP電話サービス提供事業者3社(NTTコミュニケーションズ、他2社)が提供する、音声とデータ通信を統合したサービスの内容について比較しました。(ダウンロードにはBizコンパスへの会員登録<無料>が必要です)

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Bizコンパス編集部

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