よくある失敗例

本記事は2013年に制作されたものです。最新の情報は「2018年版・営業にダマされない!」にてご確認ください。

 企業のIT担当者のところには、よくシステム関連の企業から売り込みがやってきます。そのとき、どのように判断すべきでしょうか?売り込みの営業担当者の言葉だけを信じて○○を採用すると、失敗する可能性も……
 「営業にダマされない! ITサービスの選び方」第2回のテーマは、クラウドサービスです。まずは、営業マンの売り込みを信じてしまって失敗した3つの例を見ていきましょう。

 

低料金だがサービスのインフラの堅牢性に問題

営業担当

<営業担当>

 情報システムのインフラ部分のクラウド化をお考えなら、各業者のサービスメニューを見てみてください。
 実はインフラ部分のサービスはどの業者もだいたい同じなのです。提供されるサービスが同じなら、コストを抑えることが出来る料金の安いサービスの方が断然お得です。


情報システム担当

<情報システム担当>

 料金のメリットに注目して自社構築のECサイトを業者のクラウド上に構築、数ヶ月の運営を行なっていたのですが、ある日業者のサーバーが障害を起こして数時間にわたってサービスが停止してしまう事態が起こりました。
 業者とはSLA(※通信サービスの事業者が、利用者にサービスの品質を保証する契約)を交わしていたので、その月の利用料金は割引されたものの、ECサイトが停止した時間に想定される売り上げ金額には到底及ばない金額でしかありませんでした。業者は逸失利益の弁済には応じません。

 サービスメニューが似通っていても、サービスを提供するインフラのセキュリティや可用性はさまざま。サーバーのダウンを見越してバックアップや二重化対策がとられていないと、復旧までに長時間を要したり、場合によっては回復できない事態に陥ります。
 シマンテックの調査(2013年2月4日プレスリリース)によると、世界のクラウド利用企業の 43% は「クラウドのデータ喪失とそれよるバックアップからのデータ復旧」を経験しており、68% が「クラウドのデータ復旧の失敗」を経験し、22% がクラウドでの破滅的なデータ喪失からの復旧に3日以上かかると答えています。

 こうした失敗は常に起こりうると考え、業者のデータセンターがどのような設備構成になっていて障害対策をどのようにしているか、そしてバックアップ対策をどのようにしているのかを、契約前に確認し、できるだけ安心できる業者を選ぶ必要があります。

 

スケールアップ、スケールアウトに時間とコストがかかる

営業担当

<営業担当>

 当社のクラウドなら必要に応じて処理能力を増強するのが簡単です。
 その逆に処理能力を下げて料金を抑えることも簡単です。


情報システム担当

<情報システム担当>

 当面はごく小さな構成でスタートし、徐々にシステムを拡張する手法をとるのが合理的と考えました。しかし、実際に運用を始めてみるとアクセス数が予想を大きく超えることがあることがわかりました。
 システム増強策を考えましたが、その業者のサービスではシステムをいったん退避して、新しく構築した仮想サーバーに再構築する手間がかかることがわかりました。
 またこれは自動的に行なわれるのではなく、自社の運用管理者が処理能力の不足を見越して手作業で行なう必要があり、管理負荷が重いことも判明。予想していなかった追加料金と運用管理コストが加わり、予算をオーバーしてしまいました。

 性能を増強するには、システムに手を加えずにそのまま増強できる場合と、システムを再構築しなければならない場合があります。スケールダウンの場合も同様です。業者により違いがあるので注意しましょう。
 また、仮想サーバーを増やすスケールアウトの場合には、ローカルIPアドレス、グローバルIPアドレスのどちらも制限があるケースがあります。必要なサーバー数に対応できない場合は、アドレス追加のための追加料金が必要になるか、サーバーを一定数以上は追加できないことになります。

 なお、サーバー台数を減らす際は、スケールアウトしたサーバーを停止しただけだとサーバーの料金がかかり続けるサービスもあります。完全に仮想サーバーを削除しなければコストが抑えられないので注意が必要です。

 

業務の特長とネットワーク品質とが合わない

営業担当

<営業担当>

 インターネットを利用するので、クラウドの通信料金は低く抑えられます。御社では各地に拠点を展開しておられますが、本社のシステムを利用するためのネットワークにコストがかかっているのではありませんか? クラウドサービスに切り替えれば、全国どこからでも安い通信料金で業務システムにアクセスできますよ。


情報システム担当

<情報システム担当>

 これまで各地の拠点間をVPNでメッシュ接続していて、それにコストがかかっていたのは事実。インターネットを使っていてもデータを暗号化することで安全に通信できると聞かされ、これを機会に通信回線コストを削減できると判断してクラウドサービスに踏み切りました。
 しかし運用を始めてみると、思いのほか遅延が大きく、自社内のシステムとの連携が適時に行なえないことがわかりました。インターネットはベストエフォートサービスなので、利用できる帯域が一定でなく、遅延の大きさが読めなかったのです。

 インターネットは他のユーザーの利用状況によっても利用可能な帯域が変わります。リアルタイムなデータのやり取りが必要なシステム連携や、頻繁に大きなサイズのファイル転送を行なうといった利用法には向きません。ただし現在では通信事業者がクラウドに対応したネットワークサービスを提供しており、帯域の保証や優先制御が行なえるので、遅延が問題になることが少なくなります。

▼まずは、クラウドサービスの基本をおさらいしておきましょう▼
「クラウドサービスとは?」

※掲載されている内容は公開日時点のものです。
※掲載されているサービスの名称、内容及び条件は、改善などのために予告なく変更することがあります。

クラウドとは?

クラウドサービスとは?

  クラウドコンピューティングとは、これまで社内のコンピュータに保存していたデータやソフトウェア、ハードウェアを、インターネット上のサーバに移し、必要なデータは必要な時、必要な分だけ取り出して利用するといったコンピュータの利用形態になります。
 「クラウド」の語源はインターネットを図で示すときに描いたもやもやとした雲の形だと言われています。インターネットの「雲」の向こうにITサービスを提供するサーバーがありますが、それがどこなのか、ユーザーが知らなくてもサービスは受けられます。そんな、インターネットの向こう側のシステムを利用する比較的新しいコンピュータの使い方を「クラウド・コンピューティング」と一般的に言います。

 クラウドコンピューティングの特徴には以下4つがあります。

(1)クラウド業者が持つコンピュータリソースを複数の利用者が共用できる。
(2)クラウド業者が持つコンピュータリソースは利用者の求めに応じて柔軟、迅速に割り当てられる。
(3)さまざまな端末(パソコン、スマートフォン、携帯電話、タブレット)でネットワーク経由でサービス利用できる。
(4)リソースを使っただけの使用料を支払う従量制、あるいは月額固定の定額制で利用できる。

 つまり、クラウドサービス提供業者が持つハードウェアやソフトウェアを複数の(多数の)利用者で共用して、効率的、合理的、機能的に利用して、使用料を支払うようにするのがクラウドです。
 なお、クラウドはどんなリソースを提供するのかによって3種類のサービス形態に分類されます。

・SaaS
・PaaS
・IaaS

 また、どのように共用するのかという視点によって4種類に分類できます。

・パブリック・クラウド
・プライベート・クラウド
・コミュニティ・クラウド
・ハイブリッド・クラウド

 

クラウドサービスの種類

パブリック・クラウド

 クラウド業者が用意した施設・設備をネットワークを介して複数の利用者が共同利用できるようにしたサービスのことをパブリック・クラウドと言います。
 90年代からデータセンター業者が提供しているホスティングサービス(レンタルサーバー)とよく似ています。異なるのは、1台の物理サーバー上に多数の仮想サーバーを稼働させる仮想化技術が用いられていることと、月別に定額の利用料金を支払う方式以外に、データを利用した量や使用した時間のように細かい従量制料金方式もとられていることと言えるでしょう。
 パブリッククラウドのメリットとしては、業者があらかじめ用意しているサービスになるので、ユーザーはそれを利用するだけです。インフラを提供するパブリック・クラウド(IaaS、PaaS)なら、インフラ部分の構築が要りません。アプリケーションまで含むパブリック・クラウド(SaaS)なら業務システムの構築が不要です。そのため、システムが欲しいと思ったら短時間(場合によっては数分で)で利用できるようになることも長所です。
 また、同じ施設・設備を多数のユーザーが共同で利用するので、1社が自前でハードウェアやソフトウェアを用意するよりも安価な料金で利用できることもパブリッククラウドの特徴です。
 デメリットとしては、用意されるハードウェアやソフトウェアは業者側が選定したものであり、ユーザーが自分の希望でメーカーや構成を選ぶことが基本的にはできない点があげられるでしょう。「安価だけれども自由が効かない」のがパブリック・クラウドの短所です。但し、ハードウェアもソフトウェアも、適宜、業者側の責任でバージョンアップされ、常に最新のバージョンを利用することが可能です。その際にユーザー側は追加費用を支払う必要がなく、バージョンアップに伴うテストなどの必要も原則ありません。

 

プライベート・クラウド

 仮想化技術を使って柔軟に拡張や縮小が行なえるようにインフラ構築をして、1社が自前で運営するクラウド基盤のことをプライベート・クラウドと言います。これは従来からのシステム構築とさほど変わりはありません。ただし、仮想化技術を使って好きなときに好きなだけのリソースを利用できる「ユーティリティ・コンピューティング(※ハードウェア資源を必要なときに必要な分だけ利用し、使った分だけ料金を払う方式)」を実現しているところが違います。
 基本的にはハードウェアやソフトウェアをユーザー企業自身で所有することになるので、どんなサーバーを使うのか、ネットワーク機器はどのメーカー製にするかなど、システム選定をすべてを自社でコントロールすることができます。
 最近の傾向としては、クラウド業者が提供するプライベート・クラウド基盤を利用して、プライベート・クラウドサービスを実現する方法が続々と採用されています。少しわかりにくいですが、クラウド基盤(IaaS、PaaS)は業者に任せて、その上で稼働するクラウドサービス(SaaS)は自社の責任で構築するという方法です。この場合でも、システムはすべて自社専用になるので、セキュリティ面で安全性が高くなります。もちろんシステムは全部購入・構築するのでコストはかなりかかります。主に大企業で導入されることが多いようです。いわば「高いけれども自由で安全」なクラウドです。

 主要な2サービスを紹介

 

ハイブリッド・クラウド

 セキュリティやパフォーマンスにこだわる必要がある基幹系システムにはプライベート・クラウドが向いています。一方、比較的ルーズな運用ができる情報系システムは、料金が安いパブリック・クラウドのほうが好ましい場合が多いでしょう。このように用途が違う両者を連携させて活用するシステムがハイブリッド・クラウドです。クラウド業者の中にはプライベート・クラウドもパブリック・クラウドも両方提供している場合があり、両クラウド間のインタフェースも備えていることがあります。それで両クラウド間の連携を図るのがハイブリッド・クラウドサービスです。

 

コミュニティ・クラウド

 パブリック・クラウドのリスクは、一緒の物理サーバーを共用する相手が誰かわからないところです。その気味の悪さを解消するのがコミュニティ・クラウドだと言えるでしょう。例えば同じ企業グループの会社となら、ITの利用ポリシーはあまり変わりません。同じ物理サーバーを使っていても、お互いが考えもつかないような使い方をするとは考えられないので、リスクは低いと予想されます。このような、特定範囲のユーザーだけで利用するクラウドがコミュニティ・クラウドです。

 

仮想プライベート・クラウド

 基本的にはパブリック・クラウドなのですが、自社から業者へのアクセスをVPNを通して行なう方式です。これはパブリック・クラウドの2つの大きな問題を解消します。1つはインターネット上の情報盗聴や改ざんなどの脅威を避けられることです。低価格なインターネットVPNでもこれは実現します。またインターネットの遅延などの品質の問題も解消します。通信事業者が提供しているIP-VPNや広域イーサネットなどのサービスを利用すれば、帯域保証や優先制御機能を使った安定した通信も実現します。低価格なパブリック・クラウドをより安全に利用する方法です。

 

マルチクラウド

 複数のクラウドサービスを同一の画面からコントロールできるようにする仕組みのこと。またそのように連携した複数のクラウドの全体のこと。クラウドサービスはそれぞれに管理機能を提供していますが、それ以外に外部のプログラムから運用管理操作ができるインタフェースも持っています。そのインタフェースを利用して、複数のクラウドが連携して、相互間のシステム移行や障害対策などを実現することができます。

 

クラウドのサービスモデル

 SaaS

 業者が保有しているシステムをネットワークごしに利用できるようにしたサービスを一般的に「SaaS」と言います。アプリケーションのある場所がパソコンのハードディスクや業務システム用サーバの中ではなく、遠く離れたネットワークの向こうの別会社のサーバーの中にある、というイメージです。ユーザーは、使ったデータの量に応じて、あるいは使用時間に応じて、ソフトウェアの使用料金を支払うことになります(従量料金制)。もっとわかりやすく、契約したら1人あたりひと月いくら、という形の定額制をとる業者もあります。
 ユーザーとしてはハードウェアもソフトウェアも用意しなくてよいので、初期投資が抑えられます。利用料金も低く見積もれる場合がありますが、長期間利用すると、オンプレミス構築(自社構築)のシステムよりも累計金額が高くなります。もっともオンプレミス構築の場合でも数年で更改時期が来てコストがかかるので、その金額も計算に入れて、コスト効果を見積もる必要があります。

 

PaaS

 SaaSからアプリケーション部分を除いたシステムを、ネットワークごしに利用できるサービスを「PaaS」と言います。サーバーハードウェアとOS、さまざまなミドルウェアをそのまま利用できるサービスです。これは十数年前からデータベース業者が提供してきたホスティングサービスとあまり変わりません。ただしクラウド基盤を利用するので、サーバーの追加が場合によっては数分で完了するという使いやすさがあります。アプリケーション開発の際の開発用のサーバー、あるいはテスト用のサーバーとして利用されることが多いようです。
 提供されるOSやミドルウェアは業者によってさまざまです。自社のアプリケーションに適合するものを選ぶ必要があります。

 

IaaS

 PaaSからOSもミドルウェアも除いたハードウェアを、ネットワークごしに利用できるサービスを「IaaS」と言います。何をインストールしてもよい裸のサーバーが、従量料金、あるいは定額料金で、簡単に入手できます。
 料金は、ハードウェアリソースをどの程度利用するかで細かく設定されています。例えばCPUは1コアでいくら、2コアでいくら、といった形です。メモリ容量やストレージ容量、ネットワーク機器の個数や速度、IPアドレス数など、さまざまな条件で料金が変わります。中には管理コンソールが有料であったり、IPアドレスの個数に上限があったりするので、詳しく確認しておく必要があります。また各種のOSのイメージが業者側に用意してあり、必要に応じてそのイメージで仮想サーバーを構成できることが多いようです。この場合にも料金は発生します。また自社でサーバーのシステムイメージを作成し、クラウドに保管しておくと、いつでもそのイメージに基づく仮想サーバーが作ることが可能です。
 長所としてはやはり短時間でサーバーの増減ができる柔軟性と、自社でサーバ−を保有する必要がなく、運用管理の負担が少ないというところです。利用料金は一見すると非常に低いように見えますが、さまざまな条件項目を積算すると、ランニングコストはそれなりにかかることは認識しておくと良いでしょう。

クラウドのサービスモデル

 

クラウドを取り巻く状況

 クラウドが普及してきた理由には大きく2つの理由があります。
 1つはサーバーの仮想化技術の進化です。1つの物理サーバーに数台から数百台という数の仮想サーバーを稼働させられる時代になったことです。
 もう1つはネットワークの発達によるものです。インターネットの普及と高速化が急速に進み、企業情報システムが必要とする要件をクリアするようになりました。
 この2つの技術的な進歩が進むなか、企業ではビジネス環境の変化に迅速に対応できるよう、柔軟なITインフラが求められるようになってきました。従来のように、情報システムを改変するのに数年を要するといった悠長な対応では競争に勝てなくなってきているのです。
 そうした中で、巨大な規模でコンピュータリソースを保有しているAmazonが、自社のリソースを仮想化してユーザーに時間単価で提供するサービスを始めました。このビジネスは、柔軟なITインフラを求める企業に広く受け入れられ、世界中に広がるようになりました。この以前には、SalesForce.comがCRMシステムのサービスをインターネット経由で開始し、これがSaaSと呼ばれるクラウドサービスの最初の成功例と言われています。
 その後たくさんのクラウド業者が参入し、利用企業もどんどん増えました。日本でも近年クラウドが続々と企業に採用されています。

 なお、株式会社シマンテックの調査 (2013年 クラウドの隠れたリスクに関する調査) によると、クラウドの利用について「少なくとも検討を行なっている」と答えた企業のがグローバルでは90%以上、日本でも64%にのぼるそうです。また250名未満の中小規模企業においてはグローバルで82%、日本で46%という調査結果がでており、今後ますますクラウドサービスの利用が広がっていくと予測されます。

 日本国内でもサービス提供業者は近年急速に増加しており、サービスの種類も多岐にわたります。
 特に増加が著しいのはSaaS業者でしょう。さまざまなソフトウェアメーカーが、自社の製品をクラウド基盤を利用したSaaSとして提供し始めています。これまでは企業が購入して自社内で運用するのが当たり前だった会計管理や就業管理などまでSaaS化が進み出しました。IaaSやPaaSなどが利用しやすくなり、SaaS構築が容易で低コストになっていることが背景にあるようです。
 一方、IaaSやPaaSの提供業者も数年前から増えています。従来からのデータセンター業者や通信業者、システム開発業者などに加え、既存のデータセンターを借りて自前のサービスを提供する業者も数多く登場しています。サービスの内容も多岐にわたり、特にIaaSとPaaSの境界領域で、各社の違いが見えるようです。特にバックアップサービスなどはさまざまな方式、形態で提供されています。

▼クラウドサービスを利用するメリット・デメリットを確認しましょう▼
「メリット・デメリット」

メリット・デメリット

クラウドを使う3のメリット

コストとリソースの負担を軽減

 クラウドを利用する一番のメリットは、システムを自社で保有(オンプレミスといいます)しないことにより抑えられる費用でしょう。概ね、IaaS、PaaS、SaaSの順にコスト削減効果が大きくなり、逆にシステムの自由度は下がります。
 何が浮くのかといえば、まずはハードウェアの購入コストです。PaaSやSaaSの場合はOSやミドルウェア、アプリケーションの購入コストも不要になります。もっともこれらは突き詰めれば利用者が支払っていることになります。利用者みんながハードウェアやソフトウェアを共用することによって現実にかかっているコストを分担することにより、1社1社の分担額が少なくて済むということです。またサーバーや関連機器を設置する場所のコストも不要になります。
 次に、システムの開発工数が削減でき、短期間で低コストに目的のシステムを実現することができます。IaaSの場合はオンプレミスでシステム構築するのと大差ないのですが、SaaSではほとんどゼロ、PaaSでもOSやミドルウェアが用意されている分、構築はラクになります。同時にテスト工数も少なくできるので、さらにコストが下がります。
 加えて運用管理の手間が減ることが重要です。専門の運用技術者を獲得するのが難しい現在、このメリットはますます注目されるべきでしょう。運用管理担当者の人件費をそのまま維持しながら、システムを増強、追加していくことができるようになります。運用管理負荷の削減効果が高いのはSaaS、PaaSはその次、IaaSではあまり変わらないこともありえます。IaaSであってもマネージド・サービスといって各種の運用管理サービスが付随しているケースもあるので、サービスの選び方によってここは違いが出るところです。
 なお、コストを考えるときには、料金体系が定額制なのか従量制なのかはよく考えなければなりません。よく「初期費用無料」「◯月まで利用料を割引」などという宣伝を見かけますが、クラウドといえどもシステムを移行するのにはかなりの体力と時間が要ります。一度利用を開始するとそう簡単には移行できないので、あとあとのランニングコストをよく考えて契約する必要があります。
 特に従量制の場合は最初は小規模でオンプレミス構築に圧倒的なコスト差があっても、やがてシステムが大規模化していくとクラウドのランニングコストが上がり、オンプレミス構築の場合よりもコストが上回る時期が来ます。これも意識して導入を図るべきでしょう。

コストとリソースの負担を軽減

 

セキュリティの強化

 外部に自社の大切な情報を保管することにセキュリティ面で不安だと考えるかたもいるかもしれません。たしかに100%安全だと言い切ることは難しいですが、利用の仕方次第では、自社で保管するよりも逆にセキュリティ面を強化できるメリットがクラウドサービスにはあります。
 たとえば、優良なクラウドサービス業者は、堅牢で入退館のセキュリティにも配慮したデータセンターに設置したインフラを使ってサービスを提供しています。災害に強く、ネットワークからの攻撃にも強いので、多くの場合は自社の社屋にサーバーを置くよりもセキュリティのレベルを高めることができるでしょう。また、インターネットとの接続回線や電源なども複数引き込んでいるデータセンターを利用したクラウドサービスなら、万一の場合にもシステムやデータが生き残る可能性が高いと言えます。
 とはいうものの、業者の言うことを鵜呑みにするのは危険です。そもそも本当に安全な施設・設備で運営されているどうかの確認は難しいものです。標準的なセキュリティ基準をクリアしているかどうかを、例えばISMSやPマーク、PCIDSSなどといった第三者による認証を受けているかどうかなどで判断する必要があります。
 もちろん、データやシステムのバックアップのサービスが標準で提供されるのか、オプションなのか、そしてどのような仕組みで行なわれるのかも注意して確認することが重要です。

 

生産性の向上

 インターネットを介してシステムにアクセスできる環境さえ整えば、いつでも、どこからでも必要な時に、サービスを利用できるのが、クラウドサービスが持つ3つ目のメリットです。ノートパソコンに限らず、スマートフォンやタブレットでも、会社内のクライアントパソコンと同等の業務が行なえる場合があります。出張先に海外からであっても国内と同様にシステム利用が可能になります。営業担当者のクライアント対応が迅速に行なえる、オフィスに戻ることなく出先で報告業務が行なえる、クライアント情報を出先で確認できるなど、営業力の強化や業務効率のアップなどクラウドサービスは業務の生産性に大きく寄与することが可能です。

 

クラウドを使う3のデメリット

 ネットワーク障害が発生するとクラウドは利用できない

  クラウドサービスを利用する上で懸念されるのが、ネットワークの信頼性です。
 インターネットを通じていつでもどこでもサービスを利用できるのがクラウドの利点ですが、それがそのまま欠点にもなり得ます。クラウドサービスの利用でよく発生するトラブルとして、「ネットワーク負荷の高まりによる遅延」があります。こうしたトラブルが発生する原因としては、同じデータセンターを使う一部のサービスに極端な人気が集まっているか、外部から不正アクセスを仕掛けられているかのどちらかが考えられます。あるいは、クラウドサービス業者内のネットワーク機器の障害や、通信業者の回線障害というケースもあります。クラウドサービス業者はネットワークを多重化しているのが普通なので、1箇所に障害が起きてもサービスに影響が出ないようになっていますが、その対策に不備があると、サービス停止が起こるケースもあります。
 クラウドサービスを利用する際には、信頼性の高いネットワークを運用している業者を選ぶことが大事です。なお、インターネットではなくVPNと呼ばれる安全性の高いネットワークが使えるクラウドサービスもあります。その場合はセキュリティ面の問題はほとんど解消できます。またVPNでは通信帯域の保証や、大事な通信を優先して通す優先制御などのサービスが利用できるので、インターネットのように遅延が問題になることも回避可能となります。

 

システム運用・管理ノウハウの喪失

 クラウドサービスを導入することで、運用管理技術者の負荷を削減しようとするのは良いことですが、運用管理の業務を一度社内から外に出してしまうと、後進の技術者を育てることができない点については注意が必要です。運用管理のノウハウが社内に蓄積しないので、万一クラウドサービスが廃止されるようなことになってしまった際、社内に戻すことも、他のクラウドにも移行できないといった事態に陥る可能性があります。運用管理には専門のスキルと経験が必要です。クラウドサービス導入後の、運用管理に関するスキルやノウハウに関する継承について事前対策をとる必要があるでしょう。
 ノウハウの継承がなければ、利用しているクラウドサービス業者のいうがままになるかもしれません。そうした事態はなるべく避けたいものです。

 

カントリーリスク

 クラウドサービスの提供事業者の国籍やデータセンターの所在地によって、利用者のデータに対して思いもかけない法令が適用されうるという点もクラウドサービス利用におけるリスクとして認識する必要があります。
 例えば、海外ではクラウドサービスの利用者の誰かが犯罪を犯したような場合、捜査機関がサービスを提供しているサーバーを差し押さえた事件も発生しています。その際に業務が止まるのも怖いですが、個人情報や機密情報がそこにあった場合にそれが丸裸にされてしまう危険があります。日本の法律では、メールサーバーのメールデータは犯罪捜査の場合でも秘密にされますが、海外にあるサーバーではその法律が及ばず、その国の法によって取り扱われてしまいます。
 米国のパトリオット法などはこうしたカントリーリスクの典型例です。最近では、海外のクラウド業者も日本のユーザーのために日本国内にデータセンターを設立して、国内のデータセンターだけを利用するサービスを提供するようになりました。
 対策の一例としては、基幹システムの顧客情報や財務データなど重要情報に関しては、日本のデータセンターにデータが保管されることをサービス利用条件にする、あるいは自社内から外に出さないようにしておいたほうが安全と言えるかもしれません。

▼では、もっと詳しいチェックリストで確認しましょう▼
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すぐに使えるチェックリスト

 クラウドサービス選定は、検討すべき項目が多岐にわたるため、導入に際しては専門家や事業者の担当と相談しながら進めることになるでしょう。

 ここではクラウドサービスを初めて導入される方でも、事業者の言いなりにならずに自社に最適なクラウドサービスを選ぶための、チェック項目と解説をまとめた資料をご用意しました。クラウドサービス事業者へのヒアリングの際などにご活用ください(ダウンロードにはBizコンパスへの会員登録(無料)が必要です)。

 

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サービス事業者比較

国内のクラウドサービス提供事業者3社(NTTコミュニケーションズGMOニフティ)のサービス内容について、製品機能(アプリケーション、ネットワーク、管理、セキュリティ)、価格、保守・運用などの観点で比較しました(ダウンロードにはBizコンパスへの会員登録(無料)が必要です)。

 

 

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Bizコンパス編集部

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