よくある失敗例

 企業のIT担当者の元には、「○○を導入しませんか」「○○に変えればコスト削減につながります」といったようなITサービスのセールスが日々訪れることでしょう。しかし、実際に導入しても、営業マンの言葉のような成果は上がらず、かえって導入前よりも不便になったり、コストも高くなってしまうケースもあります。

 本連載「2018年版・営業にダマされない!ITサービスの選び方」は、そうした営業の売り文句を鵜呑みにせず、ITサービスを正しく導入するためのノウハウを紹介します。

 第1回目のテーマは、携帯電話やスマートフォンを固定電話の子機として使う通信サービス「FMC(Fixed Mobile Convergence)」です。働き方改革の一環として、導入を進めている企業も多いでしょうが、中には以下に紹介するような失敗をしてしまったケースもあるかもしれません。

 

専用設備なしで全国の事業所が内線エリアに! コストが削減できます!

営業担当

<営業担当の売り込み>

 弊社のFMCサービスを利用することで、いまお使いのスマートフォンや携帯電話で、全国の事業所が“内線エリア”になります。たとえば、事業所の電話とスマートフォンの通話、スマートフォン同士の通話など、社内の通話料が大きく抑えられます。

 弊社のサービスであれば、専用設備を特別に導入する必要がなく、既存の電話設備を活かして簡単に導入できるので、初期コストを削減できます。御社のように、全国に拠点を持たれている企業様であれば、大幅なコスト削減効果が見込めます!


情報システム担当

<情報システム担当>

 専用設備を導入する必要がなく、初期コストを抑えて通話料を大きくコスト削減できる点に魅力を感じて、FMCサービスの導入を前提に、見積もりを依頼した。

 しかし、見積もり内容を精査するうちに、携帯電話の基本料金や、企業の拠点と携帯電話事業者のネットワークを結ぶ固定回線の料金などが別途発生することが分かった。こうしたランニングコストを含めると、従来よりも料金が高くなってしまった。

 FMCサービスは基本的にはコスト削減効果が見込まれるサービスではありますが、自社のケースにあてはめた際に、本当にコスト削減効果や利便性向上が見込まれるかどうかは、実際の利用環境で検証する必要があります。

 事業所の通信環境や電話の使い方を把握した上で、本当に課題の解決につながるのか、利便性は向上するのか、ランニングコストは妥当なのか、といった点の検討なしで導入するのは、できれば避けておきたいところです。

 

スマートフォン内線化により、営業マンの利便性や業務効率が向上します!

営業担当

<営業担当の売り込み>

  FMCサービスを導入すると、スマートフォンとオフィスの電話が内線番号でつながります。担当者がどこにいても内線でつながるので、クライアントからの問い合わせにもスピーディに対応できます。つまり、営業マンの利便性や業務効率の向上が期待できるのです!

 さらにいえば、テレワークやシェアオフィスなどの先進的なワークスタイルにも対応できます!


情報システム担当

<情報システム担当>

 弊社は従業員が多く、営業マンの割合が非常に多い。外出先での利便性や業務効率の向上に期待して、FMCサービスの導入に踏み切った。

 しかし、スマートフォンから外線をかける際は、携帯電話回線経由での通話になることを、導入後に初めて知った。そのため、見込んでいたコスト削減効果を得ることはできず、かえってコストがかさんでしまった。

 FMCサービスを利用することで、電話の取り次ぎ業務も効率化できます。たとえば「顧客側がオフィスの電話にかけた場合に不在」→「顧客側がもう一度携帯電話にかけ直す」といった手間がなくなります。電話番号が統一できるという部分で、便利になるのは間違いありません。

 ただ、忘れがちなのが、外線の発信時には、携帯電話回線を利用するという点です。内線通話になるのはどういうケースなのか、どのような状況で外線通話になってしまうのか、その条件はあらかじめ認識する必要があるでしょう。

 

既存の設備やスマートフォンを活用するので、初期コストがかかりません!

営業担当

<営業担当の売り込み>

 FMCサービスは既存の設備を活用するので、初期コストを抑えて簡単に導入できます。しかも、現在ご契約いただいているスマートフォンや携帯電話1台あたりの基本料金、通話料金が安くなります。携帯電話料金が大幅に削減できる、オススメのサービスです!


情報システム担当

<情報システム担当>

  導入に手間がかからず、基本料金や通話料金も下げられるということからFMCサービスの本格検討を開始した。

 しかし、実際に導入するとなると、全社のキャリアを一本化しなければならないことがわかった。自社はすでに複数の携帯電話会社と契約しており、その契約期間の問題で、携帯電話会社を一本化することは難しい。導入するためにさまざまな準備を行ったものの、最終的に断念せざるを得なかった。

 FMCは内線として携帯電話を利用できるようにするため、携帯電話会社を一本化することが、サービス導入時の前提条件です。そのため、複数のキャリアと契約している場合、導入時期や契約期間、営業上の問題などによって、キャリア一本化ができないケースもあります。導入検討時には、事業所ごとの携帯電話の契約状況を把握し、社内外の関係者を含めた調整が重要になるでしょう。

▼そもそも、FMCサービスとは何なのか? 基本をおさらいしておきましょう▼
「そもそもFMCサービスとは?」

※掲載されている内容は公開日時点のものです。
※掲載されているサービスの名称、内容及び条件は、改善などのために予告なく変更することがあります。

そもそもFMCとは?

FMCは携帯電話が固定電話の子機として使えるサービス

 FMCとは、スマートフォンや携帯電話を、固定電話の子機として使える通信サービスの総称です。FMCは「Fixed Mobile Convergience」の略語となります。

 FMCは、製造業の工場や建設業の工事現場、小売業・サービス業の店舗といったような、担当者がデスクに不在がちで、社内外のコミュニケーションでロスが発生しやすいケースに有効です。

 たとえばAさんが、仕事を依頼している営業担当者Bさんに連絡しようと、Bさんの社内番号へ発信しても、不在であれば連絡は取れません。ですがFMCであれば、社内の電話応対者が外出しているBさんへ内線という形で電話をつなぐことで、スムーズに連絡がとれます。これまで不在時は応対できなかった顧客対応が、FMCによって素早くできるようになります。

 FMCを検討する際に、ポイントは2点あります。それは、(1)利便性がどれだけ向上するのか、(2)コストはどれだけ削減できるのか、を明確化することです。

(1)の利便性向上については、たとえば業態によっては、営業担当者が外出先で電話を受ける必要がない企業もあります。そのような場合、FMCを導入しても、利便性はさほど向上しないでしょう。

 導入前には、社内のヒアリングなどを行い、オフィスや事業所で外部から電話がかかってくるような状況がどれだけ発生しているのか、そこでどれだけ重要なコミュニケーションロスが発生しているのか、見極める必要があります。

(2)のコスト削減効果については、特に現在の通信費からどの程度の削減効果が見込まれるのか、予め試算をしておく必要があります。

 その際に注意しなければならないことは、現在の携帯電話の契約状況です。FMCサービスは、携帯電話の通信キャリアを一本化することで利用できるサービスです。たとえばキャリアA社の回線に一本化するに当たり、キャリアB社の回線とは解約をしなければならず、解約料を負担しなければいけないケースも考えられます。

 

 

FMCサービスの種類とは

 今日広く使われているFMCサービスには大きく分けて(1)内線ワンナンバー型、(2)モバイルVoIP型、(3)クラウドPBX型の3種類があります。

 この中で、大手携帯キャリアが提供しているFMCサービスが、「内線ワンナンバー型」です。内線ワンナンバー型FMCサービスは、携帯電話事業者と契約することによって、社内外で内線番号による通話を可能にするサービスの総称です。企業は通信設備を自社で保有する必要がありません。加えて、社内の通話もすべて内線となるため、通話料金も安価になります。導入を検討するにあたって、最も妥当性と信頼性の高いFMCサービスといって良いかもしれません。

 以下、3種類のFMCサービスの特徴を、箇条書きで紹介します。

(1)内線ワンナンバー型

 携帯電話事業者と契約することによって、社内外で内線番号による通話を可能にするFMCサービスです。通信事業者の回線を利用するため、企業は専用の設備を持つ必要がなく、全国で内線番号による通話が可能となります。音声通話できる端末であれば、端末の種類を選ばず利用できることも魅力の一つです。もちろん、スマートフォンでも利用可能です。

(2)モバイルVoIP型

 モバイルVoIP型FMCは、スマートフォン向けのSIP(インターネット上で電話の発信や着信を制御する仕様)に準拠したIP電話アプリケーションを利用するFMCサービスです。このIP電話アプリをインストールしたスマートフォンを“内線電話機”として利用します。企業の拠点に置いたSIPサーバー配下で利用できます。

(3)クラウドPBX型

 クラウドPBX型FMCは、PBX(構内電話交換機)の機能を、ネットワーク経由でクラウドサービスとして使う方法を指します。クラウド型のPBXと、SIP準拠のIP電話アプリケーションを搭載したスマートフォンを利用すれば、スマートフォンを内線電話機のように、全国で利用できることが特徴です。

 クラウドPBX型にはキャリアフリーを謳うNTTコミュニケーションズのArcstar Smart PBXなどがあり、FMC、BYODとの親和性が高いといえます。

▼FMCサービスを利用するメリット・デメリットは次ページで!▼
「メリット・デメリット」

メリット・デメリット

FMCサービスを利用するメリット(内線ワンナンバー型の場合)

営業品質の向上

 部署の代表固定電話に取引先から電話がかかってきた際に担当者が外出している場合、携帯電話へ内線として電話を転送できるため、対応時間が早くなる。

コスト削減

 社内に入電があった際、社内から営業担当者へ転送する際の通話料や営業担当者同士がやりとりする通話料が削減されるため、コスト削減効果が見込まれる。

専用設備が不要

 企業はFMCサービスの利用にあたり、追加の専用設備を持つ必要がないため、導入負荷が低い。

 

FMCサービスを利用するデメリット(内線ワンナンバー型の場合)

「従来の内線とすべて同じ」というわけではない

 社内から内線電話のように転送できるが、たとえば携帯電話から取引先に外線を発信する際には、固定電話番号ではなく、携帯電話番号が表示される。(※別途料金を支払って、固定電話番号を通知するサービスもある)。

キャリアを一本化する必要がある

 FMCサービスを利用する前提として、携帯電話キャリアとの契約を一本化する必要がある。そのため、契約先を複数社に分散できない。

固定回線の増設が必要なケースも

 社内のネットワーク状況によっては、PBXと接続する固定電話回線の契約が別途必要になるケースが存在する。

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すぐに使えるチェックリスト

 FMCサービスは検討項目が多岐にわたるため、導入に際しては、専門家や事業者の担当と相談しながら進めることが望ましいです。

 そこで本記事では、FMCサービスを検討する際に、事業者の言いなりにならずに自社に最適なサービスを選ぶためのチェックリストを用意しました。サービス事業者へのヒアリングの際などに活用ください。

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サービス事業者比較

 国内の主要FMCサービス提供事業者3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)が提供するFMCサービスの内容を、さまざまな観点から比較しました。

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Bizコンパス編集部

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