よくある失敗例

 企業のIT担当者のところには、よくITサービスの売り込みがやってきます。そのとき、どのように判断すべきでしょうか? 営業マンの言葉をうのみにした導入は、あとで後悔することもあるのでは。

 Bizコンパスの人気コンテンツ「営業にダマされない! ITサービスの選び方」シリーズが、このたび最新のIT動向に合わせてリニューアル。第3回のテーマはデータセンターです。まずは、営業マンのセールストークを信じてしまって失敗した3つの例を見ていきましょう。

 

コストを重視したために品質が低下

営業担当

<営業担当の売り込み>

 いまどきのデータセンターは、どこのサービスも内容に大差はありません。それならば価格の安い郊外型データセンターはいかがでしょうか。また、郊外型は広大な用地を確保しやすく拡張性にも優れているため、サービスの利用コストを抑えながら将来の拡張を見据えるのであれば最適です。


情報システム担当

<情報システム担当>

 事業継続の観点から、社内のサーバールームで運用していた業務システムのデータセンター移設を検討。コスト重視で相見積をとり郊外型のサービスに移設したところ、電源設備の故障によるシステム障害が発生。障害発生時に担当者がデータセンターへ到着するまでに時間がかかり、顧客からのクレームに対しても適切に対応できなかった。

 データセンターに預けるリソースの重要度とサービス品質のバランスに失敗した例と言えます。責任範囲や運用のサービスレベルについても事前に確認すべきでした。データセンターを選ぶ際には、目先のコストにとらわれず、預けるリソースに求められる品質をしっかり確保したいものです。

 また、郊外型データセンターを選択する場合、災害時に公共交通機関で駆け付けられない可能性もあるので、リソースの監視・運用・保守まで委託できる事業者を選ぶとよいでしょう。

 

“クラウドファースト”を信じて割高に

営業担当

<営業担当の売り込み>

 いまどきはクラウドに企業リソースを集約して、資産を「所有する」から「利用する」に切り替えるのがトレンドです。コロケーションのように先行投資もかからず、スピーディに移行・拡張できるため、お客さまに負担もかかりません。業務環境の変化にも柔軟に対応できるクラウドサービスの利用をおすすめします。


情報システム担当

<情報システム担当>

 物理的なコロケーションではなく、低コストで柔軟性の高い仮想的なクラウドへ社内の主要なサーバーリソースを移行。当初は予測した効果が得られたものの、事業拡大に伴いサーバー数量、トラフィック量が増加し、コストが経営を圧迫してきた。“クラウドファースト”って、そういうものなの?

 これはクラウドファーストの風潮に乗って失敗した例。物理的なコロケーション、仮想的なクラウド、双方のメリットとデメリットをしっかり理解したうえで、リソースの特性に応じて併用するのが正解と言えるでしょう。

 また、併用する際にはコロケーションとクラウド間を同一セグメントで運用できるような柔軟なネットワークで接続して、きちんとデータ連携ができることもサービス選びの重要なポイントです。これが将来的な事業拡張の際の大きな強みになります。

 

グローバルなデータ連携が図れない

営業担当

<営業担当の売り込み>

 弊社は世界中にデータセンター事業者のパートナーを持っていますから、必ずやお客さまのグローバルな事業展開のお力になれます。それぞれの国で同レベルの品質でデータセンターをお使いいただけるはずです。システムご担当者さまにご負担をかけることもありませんので、ご安心ください。


情報システム担当

<情報システム担当>

 日本の事業者が運用窓口になってくれるというので、海外の拠点ごとに異なるデータセンター事業者と契約して利用することに。ふたを開けてみると事業者ごとにサービス品質にばらつきがあり、センター間のデータ連携もままならない。頼りの日本の事業者にトラブルの連絡をしても現地の担当者がつかまらず、業務に支障が出ている。

 日本の常識がきっと海外でも通用するだろうという過信から生まれた失敗例です。国や地域によって違いはありますが、日本と同等以上のサービス品質を海外のデータセンター事業者に期待すると裏切られることも少なくありません。

 やはりグローバル均質な高品質にこだわるなら、グローバルで一元的にサービス契約ができる日本の事業者を選ぶのが正解です。複数の事業者を使うと事業者ごとに基本的な契約条件が異なるため、均質なサービス品質の確保が難しくなります。

 また、運用窓口が多言語に対応していることも稼働軽減の大きなポイントになります。長年グローバル拠点でサービスを提供しているというような運用の実績にも目を向けたいところです。

▼まずは、データセンターの基本をおさらいしておきましょう▼
「データセンターとは?」

※掲載されている内容は公開日時点のものです。
※掲載されているサービスの名称、内容及び条件は、改善などのために予告なく変更することがあります。

データセンターとは?

データセンターとは?

 サーバーやネットワーク機器を収容し、電力、空調、VPNやインターネットへの接続回線や保守・運用サービスなどを安全に提供する施設のことです。事業者がデータセンターで提供するサービスには、大きく分けて2種類あります。

 利用者のサーバー機器等を預かり、電力、空調、回線、保守などを提供するサービスを「コロケーション(ハウジング)サービス」と呼び、事業者側が自ら用意したサーバー機器等のITリソースを顧客に貸し出すものは「クラウドサービス」と呼びます。両者の大きな違いは利用者がサーバーなどの物理的な設備を所有するか、しないかにあり、特性も異なります。

 このコロケーションサービスとクラウドサービスを用途によってうまく使い分けることが、データセンター活用では重要です。

 

「データセンター」のサービスには大きく分けて二種類ある

コロケーション(ハウジング)サービス
「場所貸し」
◎サーバー機器等は利用者が用意する
◎利用者の専用サーバーのためパフォーマンスが安定
◎先行投資が必要で導入、拡張に時間がかかる
◎システムの規模拡大によるコスト変動が少ない

クラウドサービス
「サーバー貸し」
◎サーバー機器等は事業者が用意する
◎他の利用者との共用サーバーのためパフォーマンスが変動
◎コストを抑えた迅速な導入、拡張ができる
◎システムの規模拡大によるコスト変動が大きい

 データセンターは耐震性に優れたビルに高速大容量の通信回線を引き込んだ施設で、安定した電力を供給するUPSや非常用発電装置、高度な空調設備を備え、ICカードや生体認証による入退出管理やカメラによる24時間監視などでセキュリティを確保しています。

コロケーションサービス

 基本的にサーバーの運用は利用者自身が行ないますが、停止していないか監視したり、定期的にバックアップしたりする付加サービス(マネージド・サービス)を提供している事業者もあり、必要に応じて利用できます。

クラウドサービス

 基本的にサーバーの運用は事業者が行いますが、利用者自身がネットワーク経由でCPU、メモリ、ストレージの必要に応じて迅速かつ柔軟に増減できるメリットがあります。

 

データセンターを取り巻く状況

 2014 年のデータセンタービジネス売上1 兆5,641 億円のうち、大規模企業向けの売上が1 兆2,150 億円と77.7%を占めています。大規模企業はシステム更改時に複数拠点のシステム集約、M&Aによるシステム統合など、システムの大規模化・全体最適化が進行。併せてプライベートクラウドの構築も進み、データセンターサービスの利用拡大につながっています。

 中規模企業については業務システムのクラウド移行、BCP/DR を目的としたバックアップ拠点の構築が進んだこともあり、堅調に市場が拡大。一方で小規模企業は東日本大震災をきっかけに、重要度の高いシステムをデータセンターに移す、あるいはクラウド上へバックアップデータを保存するといったケースが増えています。

 またSaaSなど各種アプリケーションを手軽に利用できるサービスについてもコストや運用面の負担軽減から活用が進んでおり、それがデータセンター活用を後押しする一因になっています。

▼データセンターを利用するメリット・デメリットを確認しましょう▼
「メリット・デメリット」

メリット・デメリット

 サーバーをデータセンターに移すことで得られるメリットには以下のようなものがあります。どこに重点を置くべきなのかは会社によって異なりますので、何を目的にデータセンターを使うのかを明確にすることが、ダマされずにデータセンターを選ぶ第一歩です。

 

主なメリット

安定運用

・自社のリソースが十分でない場合も専門設備、専任スタッフによる安定した運用が期待できる
・冗長化した電力・空調を提供する堅牢な施設内にサーバーを置くことで災害や停電に強くなり、BCP(事業継続プラン)対策となる
・24時間365日体制、多言語対応の窓口に運用を一任することでオペレーションの稼働が軽減できる

セキュリティの強化

・サーバーを自社内で運用する場合に比べ、専用施設で集約運用を行うことで入退室管理を厳重に行えるなど強固なセキュリティを実現できる
・外部ネットワークからの不正侵入対策などを専門業者に任せることでリスクを低減できる

人材・資産の最適配置

・IT部門は日常的運用・トラブル対応などをアウトソースすることで本来のビジネスに注力できる
・最適な設備を選択することで、ITコストの最適化が期待できる

エネルギー消費の最適化

・効率が高いデータセンター施設を利用することで、節電やC02排出量削減などの社会貢献ができる

 

主なデメリット

対応時間の自由度の低下

・コロケーションサービスの場合、サーバーを自社ビル内で運用する場合に比べ、トラブル時の駆けつけ対応に時聞がかかることが多い

⇒データセンター事業者が提供する監視サービスや一次保守サービスの利用で、ある程度はカバーできる

構成変更の自由度の低下

・コロケーションサービスの場合、物理的な構成の変更を行う場合など自社内運用に比べ自由度が制限される場合がある。たとえば機器の増設を行う場合に契約しているラックの隣のラックが空いているとは限らない

⇒コストとの引き替えでもあるため、日常の運用状況や将来的な拡張を把握した上でサービスを選ぶことが重要になる

意外と大事な湿度管理

 空気中の水分量に変化がなくても、気温が上がれば相対湿度は下がり(乾燥し)、気温が下がれば相対湿度は上がります。データセンターの空調というと、とかく冷やすことばかり考えてしまいますが、冷やしすぎると結露が起こり、機器内の電気回路がショートすることがあります。反対に空気が乾燥していると静電気の発生により、機器内の半導体などが破壊される原因になることがあります。このような乾燥時の静電気、高湿度時の結露を防ぐため、データセンターでは温度はもちろん、湿度も厳しく管理されています。

 

選択のポイント

 利用目的に合わせて、メリットとコストのバランスを考えて選択することが大切です。

<主なチェック項目>

立地・災害リスク

・立地(データセンターへ駆けつけるまでにかかる時間)
・地震、水害などの地理的リスクと対策

建物・設備・サービス

・建物構造、建設年、床荷重
・電力や空調設備の冗長構成

・ラックの構造、作業スペースの余裕
・コロケーションとクラウドのシームレスな連携
・グローバルにおけるサービスのカバーエリア
・運用、ヘルプデスクの対応言語数

ネットワーク

・コネクティビティの充実度
・利用できる通信事業者(キャリア)
・利用できるネットワークサービスの種類
・SDN、FMVといった先進機能への対応

セキュリティ

・入退館チェック方法
・監視体制

コスト

・ラック料金の内訳
・追加電力費用
・回線費用
・監視・運用費用

▼では、もっと詳しいチェックリストで確認しましょう。▼
「すぐに使えるチェックリスト」をクリック!

すぐに使えるチェックリスト

 データセンター選びで検討すべき項目は多岐にわたるため、検討時には社内のIT部門だけでなく、機器ベンダー、複数の事業者や専門家と相談しながら進めることをおすすめします。

 ここではデータセンター未経験の方でも、事業者の言いなりにならずに最適なデータセンターを選ぶための、チェック項目と解説をまとめた資料をご用意しました。データセンター事業者へのヒアリングの際などにご活用ください(ダウンロードにはBizコンパスへの会員登録<無料>が必要です)。

サービス事業者比較

 国内のデータセンター事業者3社(NTTコミュニケーションズ、他2社)のサービス内容について、建物性能/電力/ネットワーク/セキュリティ/保守サポート(監視・運用)/規模/実績の観点で比較しました(ダウンロードにはBizコンパスへの会員登録<無料>が必要です)。

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Bizコンパス編集部

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