2020年の企業は、つぶれたくなければデジタル化するしかなかった。デジタルトランスフォーメーション(DX)が技術的なプロジェクトを後押しし、コロナ禍によってリモートワークやリモート教育が当たり前のものになり、クラウドコンピューティングや、人工知能(AI)や、機械学習などの要素技術の発展が加速した。
Salesforceのプレジデント兼最高執行責任者(COO)であるBret Taylor氏は、ビジネスの現状について「デジタル化されていないビジネスはビジネスではない」と一言で説明している。
2021年のビジネステクノロジーに関する展望に期待できることは確かだが、不確定要素も多い。例えば、次のような問題がある。
・今後、仕事のニューノーマル(新しい日常)はどのようなものになり、コラボレーションはどのように発展していくのか。
・企業は、職場文化を維持するためにどのようにテクノロジーを利用していくのか。
・今後、技術的なプロジェクトのマネジメントのあり方は変わるのか。
・エッジコンピューティング、5G、クラウド、自動化は各産業にどのような影響を与えるのか。
疑問への答えがすべて分かっているわけではないが、この記事では、海外各国のZDNetの編集リーダーが、2021年の展望についての見通しをいくつか示すことにしたい。
2021年は2020年のDXラッシュの延長線上にある
Larry Dignan
2020年には、企業の急速なデジタル化や、リモートワークへの移行や、DXの大幅な加速などさまざまな変化が起こったが、2021年の最大の不確定要素は「その中の何が定着するのか」ということかもしれない。
明らかなのは、仕事とコラボレーションのニューノーマル(新しい日常)が生まれるということだ。また、コラボレーション技術が進歩することと、ハイブリッドな業務体制や、業務継続に必要なクラウドコンピューティングなどの基本技術に対する関心の高さが今後も続くことも確実だろう。仕事のリモート化がこれ以上進展するとは考えない人もいるが、それは誤りだ。リモートワークにはあまりにも経済的なメリットが多い。企業はオフィス用不動産の経費を削減でき、従業員を雇用できる地域を広げられ、生産性も維持できる。
筆者の予想では、PCベンダーや、新しい企業のアライアンスが、仕事の新しい日常に参画するためにイノベーションを推進するだろう。解決すべきことはすでに分かっている。これまで、同じ部屋に集まって行っていたことをどうするかだ。例えば研究室もそうだし、プロトタイピングの作業や、業務フローの改善などもそれにあたる。あるいは2021年には、企業における拡張現実(AR)や仮想現実(VR)の使い方が発達するかもしれない。
以下では、2021年に注目を浴びる可能性があるその他のテクノロジーをいくつか挙げておく。
・量子コンピューティング。2020年の量子コンピューティング業界は順調に発展したが、2021年にはこの技術の導入がこれまで以上に一般的になるだろう。今この業界に欠けているのは、クラウド経由で利用される量子コンピューティングのアプリケーションスタックだ。また、この技術が定着するにつれて、ベンダーの間に新たな序列が生まれるだろう。
・3Dプリンティングおよび付加製造。コロナ禍によって、サプライチェーンには大きなギャップがあり、製造業には素早く対応する能力が必要であることが明らかになった。2020年中には、金属や新しい材料を使った3Dプリンティングや、さまざまな業界に特有の利用事例が発達したが、サプライチェーンの問題を完全に解決するまでには至らなかった。また3Dプリンティングの企業は、コロナ禍で顧客の状況が悪化したことで打撃を受けた。2021年には、付加製造分野への投資が増えるだろう。また、製品のパーソナライズが大幅に進む可能性がある。
・マルチクラウドへの移行が加速する。新型コロナウイルスが蔓延すると、クラウドファーストの方針を取っていた企業が優れた業績を上げた。また現在、多くの企業が、マルチクラウドの導入を計画している。問題は、顧客がハイパースケーラーを信頼して複数クラウドの管理を任せるようになるかどうかだ。筆者の直感では、既存のデータセンター事業者が、他のクラウドのリソースも一元的に管理するようになる可能性が高い。
・自動化、人工知能(AI)、機械学習。ワークフローは急激な勢いで自動化されつつある。2020年が自動化の必要性を明らかにした年だったとすれば、2021年は自動化が本格的に展開される年になるだろう。簡単に言えば、AIと、機械学習と、ロボティックプロセスオートメーション(RPA)に任される仕事が増えることになる。最大の問題は、これらの技術をうまく管理することができるかどうかだ。
・職場の安全確保のためのソフトウェアには見直しが必要になる。ServiceNowやSalesforceのような企業は、職場の安全確保を、わずか数カ月のうちにソフトウェアの1つのカテゴリーとして確立した。今日では、職場の安全確保ツールが、労働者や、労働者の健康状態や、新型コロナウイルス検査や、パンデミックへの対応の管理に使われている。しかし、ワクチンの登場によって状況は変わるはずだ。Salesforceは、すでにワクチンの配布管理に「Work.com」を使用している。2021年の今頃に、このカテゴリーのソフトウェアがどうなっているかは未知数だ。
※この記事はZDNet Japanから配信されています。