教育のデジタル化において「技術」をむき出しにするな
確かに、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、多くの小中学校の授業が実施できなくなり、文科省が描いていた「教育のデジタル化」は大幅な前倒しを迫られることになった。ICT関連企業のOBらを「助っ人」に活用するのも、うまく適用できれば、それなりに効果は出るかもしれない。
ただ、それよりも、しばらく“ウィズコロナ”の状況が続くことも想定して、今こそ教育のデジタル化に抜本的な施策を講じるべきではないかと考える。それは何かと言えば、デジタル技術を活用した授業そのものの仕組み作りと、その仕組みを使う上でのユーザーエクスペリエンス(UX)を徹底的に追求することだ。
オンラインだろうがオフラインだろうが、デジタル技術を活用した授業を進める上で、デジタル技術そのものが足かせになるのは本末転倒だ。オンライン授業を行う上で、もし設定や操作方法が難しくて教員が使えないとしたら、それはそんな仕組みを作ったICT関連企業の責任において改善すべきである。
筆者は、ICT関連企業のOBらはプログラミング教育の支援において役回りがあるかもしれないが、教員が行う各教科の授業については、手助けを必要としない仕組み作りに注力すべきだと考える。その中でもUXは、教員、そして生徒に提供すべき最も重要なデジタル技術である。
重ねて申し上げておきたい。教育のデジタル化において、デジタル技術の「技術」がむき出しになっているようなオンライン授業やデジタル教科書ならば、その仕組みを作っている側が恥ずかしいと受け止めるべきである。教育のデジタル化は、ビジネスのそれ以上に完成度を高めるべきだと考える。
日本は世界の中で教育のデジタル化が遅れていると言われるが、その仕組み作りに注力して教育におけるUXを磨けば、まだまだ優位に立てるチャンスがあるのではないか。仕組み作りに携わるICT関連企業の奮起に期待したい。
※この記事はZDNet Japanから配信されています。