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2013年からクラウド移行を進める協和キリン–「高崎プロジェクト」を聞く
2020.11.02

IT&ビジネス最新ニュース第73回

2013年からクラウド移行を進める協和キリン–「高崎プロジェクト」を聞く

デジタル化の「高崎プロジェクト」

 プロジェクトを担当した協和キリン 生産本部 高崎工場情報システム室 兼 生産企画部企画グループ マネジャーの武内雅春氏は、その目的を安定的な業務の遂行と競争力の維持、そしてデジタルトランスフォーメーション(DX)の経験と説明する。

 「高崎は主要製品の生産拠点であり、業務の安定的な遂行と製造拠点としての国際的な競争力の維持、そしてスピードの速い情報通信の領域において周回遅れとならないためにDXに着手する必要があった」(武内氏)

 高崎プロジェクトでは、特にサプライチェーン管理にまつわるデータを活用した「予測」と「モニタリング」を重点に置いている。予測では、専門家や熟練者の経験や勘を定量化し、AIで補完や置き換えしていくことで、生産の安定性や品質を高める。モニタリングでは、データの入力作業を自動化、省力化するとともに、業務に応じたデータ分析を行いやすい環境を整備していく。そのために、ライブ接続やデータベース化、ビジネスインテリジェンス(BI)ツール導入などに取り組んだ。

 まず、AWSのVPC環境にデータを活用するための「データハブ」をETL(KNIME)、データレイク(Amazon S3)、データウェアハウス(Amazon RedShift)で構築した。製薬業界のガイドラインの1つとなる「GMP(Good Manufacturing Practice)」に準拠するために、CSV領域のコンサルタントを活用してシステム連携を考慮したValidation(検証)コンセプトの設計を行った。AWSの採用理由は、「各種機能をフルマネージド型で利用でき、他に多くの採用実績があり、AWSが製薬業界で求められるサービスやセキュリティを提供しているため」(武内氏)という。

 データハブでは、高崎工場内の各種業務システムからFTPツールあるいはWindowsのフォルダー機能を介してデータがETLのサーバーに送られる。ETLのサーバーでは、オープンソースソフトウェアのKNIMEでデータの抽出、変換、格納処理を行い、Amazon S3のデータレイクで保管、整形してAmazon RedShiftに格納、RedShiftのデータをBIツールで可視化している。モニタリングでのBIツールには、TableauとSONAR(横河電機製)を用いる。SONARは製造業務に特化した機能も多く搭載されているため、「各種業務の担当者に応じて使いやすいツールをそろえた」(武内氏)とのことだ。

 武内氏によれば、データハブの整備によって膨大なExcelファイルを手作業で管理したり可視化したりする従来の業務が大幅に効率化され、アラートをシステムからメール通知で代替できるようになった。各種システムからのトランザクションデータを自動的にデータベース化して今後データを活用していくためのスキームが整備されたという。なお、一部の処理はETLに切り替えずExcelを使う。「厳密に試算したわけではないが、全てをETLにすると大幅にコストがかさむことが予想され、Excel関数の扱いにもノウハウが必要になる。ただ、今後環境整備が進めばETLに切り替えていくだろう」(武内氏)

 高崎プロジェクトは、こうしてデータを可視化するまでの仕組みを第1期として半年ほどかけて整備し、2019年10月に本格稼働を開始した。2020年5月からは第2期として、システムからのトランザクションデータの自動的に連携させる仕組みが稼働している。武内氏は、「さまざまな部署で取り組みが加速し、経営陣のDXに対する理解や期待につながったと思う。高崎工場でフルマネージドのクラウドサービスを利用したアーキテクチャーの構築は初めての経験だったが、そのメリットを享受することができた」と総括する。

 現在は第2期の中でさまざまなテーマに取り組んでおり、今後は「AIやVR(仮想現実)、AR(拡張現実)といった新しいテクノロジーの活用にも挑戦し、ビジネス側のニーズとすり合わせをしながら具体的なテーマを検討していきたい」(武内氏)という。楠本氏は、「高崎プロジェクトでの経験を生産本部で共有しており、今後はほかの事業所への展開といった取り組みを推進していく」と話している。

※この記事はZDNet Japanから配信されています。

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