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「変化し続ける事業会社」を体現するパイオニア–デジタル責任者の心意気
2020.07.28

IT&ビジネス最新ニュース第40回

「変化し続ける事業会社」を体現するパイオニア–デジタル責任者の心意気

 電機メーカーとして82年の歴史を持つパイオニアは、カーエレクトロニクスを中心に、2000年代初頭は世界で初めて製品化したDVDレコーダーなどのホームエレクトロニクスでも急成長を遂げた。しかし、市場の競争激化とともに現在は経営再建を進めており、カーエレクトロニクスとデータ活用を通じた新たな成長に向けて変革の途上にある。4月1日に同社のチーフデジタルオフィサー(CDO:最高デジタル責任者)に就任した石戸亮氏に、変革の取り組みやこれからのパイオニアが目指す姿を聞いた。

 同社では、2015年頃からクラウドを活用した情報サービスや運転支援サービスなども本格化させている。香港の投資ファンド、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアの出資を受けて2019年に非上場会社となった。主力事業は、カーナビなどの車載器の市販やOEMを手掛ける「モビリティプロダクト」、石戸氏が参画する情報サービスの「モビリティサービス」、自動車技術開発などの「自動運転」、そして音響機器やPC周辺機器などを開発・生産する「その他」の4つがある。

–どのような領域を担当していますか。

 私が所属するモビリティサービスカンパニーには、パイオニアのデータソリューション事業と、子会社でデジタル地図を提供しているインクリメントPなどがあります。複数の事業体をまたがっていますが、データソリューション事業では先進技術を利用した運転支援の「Intelligent Pilot」や営業用車両などの運行管理を支援する「ビークルアシスト」があり、主力になっています。インクリメントPは、パイオニアグループの社内ベンチャーとして設立され、25年にわたってパイオニアのカーナビに搭載する地図データを開発し、現在ではそのデータを外部にも提供するビジネスを手掛けています。

 これらモビリティサービスカンパニーのビジネスを相木(取締役兼常務執行役員モビリティサービスカンパニーCEOの相木孝仁氏)が所管し、私はその下で組織横断的に活動しています。私には4つのミッションがあり、1つはハードウェアビジネスからサービスやデータ活用ビジネスへの変化を推進すること、もう1つはデータを活用したアクティベーションの拡大です。また、マーケティングコミュニケーションやコーポレートにおけるデジタルの活用と、生産性をより高めていくための働き方やツールの活用、チェンジマネジメントがあります。

なぜパイオニア?

–なぜパイオニアに参加したのでしょうか。

 この3年ほど個人的に大きく感じていることが幾つかありました。その1つは、テクノロジーが必ずしも全ての解決策になり得ていないという点です。例えば、米国シリコンバレーの企業のスーパーエンジニアと称される人材が素晴らしいツールやサービスを次々に開発し、それを日本市場にローカライズして提供する形が一般的だと思います。私がいたマーケティングテクノロジーの領域でも、2011年頃は150種類程度しかありませんでしたが、現在は8000種以上もあると言われています。テクノロジーの進化によって数が増えていますが、事業会社側は必ずしもそれらを使いこなせているわけではありません。どんなに素晴らしいサービスでも9割近いユーザーから「全ての機能を使いこなせていない」「使うための人的リソースが足りない」といった声を聞き、違和感を覚えました。

 もう1つは人材の流動性です。米国はもとより日本でもベンチャーキャピタルから出資を得るスタートアップが1000社を超えるようになり、多くの優秀な人材が外資の大手IT企業や国内のスタートアップに流れています。それ自体は良いことですが、事業会社からも優秀な人たちが数多くITベンダー側に転職しつつあります。そうなると、テクノロジーを活用する人材が事業会社側にいなくなり、テクノロジーが活用されないというジレンマに陥ってしまうのではないかと危惧しました。

 現在のパイオニアはファンドの資本参加や非上場化を通じて再出発し、創業80年を超える歴史の中で最も変化しようとしている状況です。このタイミングでぜひ参加したいと思いました。また、パイオニアにはハードウェアと、30年近いカーナビ事業を通じて蓄積しているデータをはじめ、クラウドで生かしていくことができるさまざまな資産があります。一緒に働きたいと感じる人材も豊かで、経営陣や長くパイオニアで働いている社員も魅力的な方々ばかりで会社をもっと良くしようと気概に溢れています。

–多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を経営課題に位置づけていますが、DXをどのようにとらえていますか。また、パイオニアのDXはどのようなものでしょうか。

 社内でDXという言葉をほとんど使いません。個人的には、DXという言葉が先行するとその意味があいまいになり、DXを定義する議論に時間を取られてミスリードが起こりかねません。パイオニアも、以前にはなかったIntelligent Pilotやビークルアシストなどの新しいビジネスを自ら生み出しているので、既にDXをしている状況といえます。社員の皆さんも良い意味で「DXをしなければならない」ということを意識していません。

 歴史のある企業であえて変革を考えるとすれば、その1つにチェンジマネジメントがあると思います。長い歴史の中で無意識にしている習慣や思考といったものがあり、例えば、長らくハードウェアのビジネスをしてきた人がいきなりクラウドサービスを始めることには抵抗感を覚えるでしょう。つまり、意識の“クセ”のようなものがあり、それを変えていくチェンジマネジメントは重要だと思います。もちろん「言うはやすし」で、本当に変えるのは簡単ではありません。

 パイオニアには、カーナビやDVDレコーダーなど世界初の製品を市場に送り出した実績がありますが、クラウドサービスのような未経験の領域では、自分たちに何ができるのか冷静に考え見極めることが大切です。そのためにもチェンジマネジメントが重要だと考えています。

 

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変化への取り組み

※この記事はZDNet Japanから配信されています。

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