カスタマージャーニーの仮説は、全ての施策が効果を発揮している「理想」の状態
多くのマーケティングプラットフォームには、ユーザーの行動プロセスを可視化するカスタマージャーニー分析の機能が備わっている。この機能を活用することで、マーケターが作成したカスタマージャーニーと実際にユーザーがたどったプロセスのギャップを発見することができる。
しかし、この機能を正しく活用するためには、マーケターが作成したカスタマージャーニーは、全ての施策が効果を発揮している「理想」の状態であるということを念頭に置いておく必要がある。全ての施策を一度に実行できるケースは、残念ながら現実には多くはない。デジタルマーケティングの戦略上必要な施策であったとしても、予算やスケジュールの都合で実施の規模を縮小したり、実施自体を見送ったりすることもある。
カスタマージャーニー分析に当たっては「今」が理想のカスタマージャーニーの実現に至る過程の途中段階にあることを認識した上で、実行前の施策と実行済の施策を明確に切り分け、実行済の施策だけで実現し得るカスタマージャーニーを定義する必要がある。定義したカスタマージャーニーを今の理想の状態として、実際にユーザーがたどったプロセスとの違いを比較する。
カスタマージャーニー分析で施策の課題を発見する
カスタマージャーニー分析は、ユーザーのカスタマージャーニー達成率の把握やジャーニーの途中で離脱したポイントを発見するのに有効である。ジャーニーの実現を妨げるボトルネックを発見することで、個々の施策の改善に生かすことができる。本稿では、カスタマージャーニー分析でユーザーの離脱ポイントを発見した際に、可能性として考えられる施策の失敗のパターンとその改善について3つ紹介する。
(1)コンテンツの内容に課題がある
ユーザーの途中離脱を生む原因の多くは、施策にひも付くコンテンツの内容にある。コンテンツがユーザーの期待と異なることで離脱が発生する。既に商品のことを認知しているユーザーが、商品の特徴やメリットをもっと詳細に知りたいと思ってコンテンツを訪れた場合、そこに書かれている内容がユーザーにとって分かりづらかったり、既に認知している内容しか書かれていなかったりすると、ユーザーは離脱してしまう。
カスタマージャーニー分析でコンテンツの内容に関する課題を発見した場合は、コンテンツを執筆したライターや編集者と連携して改善に取り組む必要がある。
(2)ユーザーインターフェイス(UI)/ユーザーエクスペリエンス(UX)に課題がある
コンテンツがユーザーの期待する通りの内容について書かれていたとしても、その情報を効果的に伝えるデザインに課題があるとユーザーの離脱を生む原因となる。また、コンテンツを読んだ後に進むべき次のコンテンツへの導線が分かりづらい場合も離脱を発生させてしまう。コンテンツを読んで、商品に対する理解が深まり、ユーザーが具体的な利用事例を知りたい、商品についての資料を請求したいと思っても、それらのコンテンツへの導線が用意されていなければユーザーは目的を達成することができない。
カスタマージャーニー分析でUI/UXに関する課題を発見した場合は、UI/UXデザイナーと連携して改善に取り組む必要がある。
(3)ターゲットが誤っている
その他に、コンテンツに訪れたユーザーが、コンテンツを読んでほしいターゲットとして当初設定していたユーザーセグメントと一致していないケースもある。広告やメール配信などの集客施策を実施した際によく発生する。この場合は、本来のターゲットにリーチできる集客施策を広告代理店や広告運用担当者と連携しながら検討し直す必要がある。
このように、カスタマージャーニー分析により発見された課題は、施策の企画・実行担当者へとフィードバックし早期に改善に着手すべきであるが、前述の通り、個々の施策には社内外の多くの協働者が関わっているため、連携がスムーズにいかずに課題が手付かずのまま放置されるケースも残念ながら少なくない。個々の施策が本来の役割を果たし、デジタルマーケティング戦略の一貫性を保つためには、マーケターが協働者に対してデジタルマーケティングの目的や方針をいかにうまく浸透させるかが重要となってくる。
※この記事はZDNet Japanから配信されています。