オペレーターには、営業職以上のスキルが必要な場合も
羽富氏:だが、SNSの利用は日本が進んでいるのでは。コロナ禍前は交通公共機関に乗れば、誰もがスマートフォンを操作し、いつでも誰かとつながっている状態を保っている。しかし、コンタクトセンターというチャネルに対するアプローチは遅い。数年前に渡米した際、友人に「娘がスマートフォンでピザを注文した」と自慢されたが、「日本では小学生でもやっている」と返答した。コンタクトセンターのデジタル化に舵(かじ)を切るという意味でも日本は遅い。
幸崎氏:(日本は)不思議な国だ。顧客の声で増えているのが、「テキストチャネルも使い始めたが、種類が増えて統治できなくなる。オペレーションが回らない」という要望。Webhook(サーバーで特定のイベントが発生した際、サーバーから顧客へ通知するシステム)を増やしてルーティングエンジンの統合を提案しているが、コンタクトセンターの体制がエンドユーザーに追いついていないほか、アナログな部分が残っているのが厄介だ。海外企業との情報共有で必ず驚かれるのが、ファックスが残っている点。
福井氏:コンタクトセンターの方々にはもっと誇りを持ってほしい。企業の窓口であり、矢面に立っているという自覚が必要だ。責任者も数年で転部し、コンタクトセンターについて本気で考えていない。
幸崎氏:同感だ。リーダーシップがないと現場のモチベーションも向上しないし、マインドセットも変わらない。
羽富氏:とある顧客は「うちのオペレーターはどこの部に出しても恥ずかしくない」とおっしゃっていた。オペレーターは、エンドユーザーからクレームを受けることもあれば、売り上げアップのために商品を売り込まなければならないこともあり、営業職以上のスキルが必要な場合もある。コンタクトセンターは、企業の窓口にしても恥ずかしくない人材が必要な部署だ。
――最後に今後のCXはどのように変革していくか。もしくは変革させたいか。
幸崎氏:正しくCXを考えること。カスタマーセントリック(顧客中心主義)の観点が欠落し、コンタクトセンターに任せておけばいい、という発想を根本から変えなければ、日本自体が生き残っていけない。実装側はクラウドの利点を強調するが、カスタマイズという領域も重要。CXデザインは企業ごとに異なり、パーソナライズの必要性が注目されるように、われわれベンダーも各企業に対してパーソナライズに近い概念でソリューションを提供する必要がある。
羽富氏:以前、「ベストなコールセンターとは」と問われて回答できなかったが、答えは「電話がかかってこないコールセンター」。何十年経っても、これだけは覚えている。商品の構成や説明を踏まえたCX設計が、ロイヤルカスタマーにつながる。AWSやパートナーと共にそんな世界を作っていきたい。
福井氏:当社顧客にはコンタクトセンターのDX題材を提供することで、Genesys Cloudを選択していただけると考えている。その上でCXに着目していただき、その数が増えれば日本のCXも向上していくだろう。
幸崎氏:CXは企業の商品/サービスと一体だ。エンドユーザーが商品/サービスを選択する際はCXも加味しているからこそ、企業はCXを研ぎ澄ませなければならない。日本は遅いと偉そうに申し上げたが、われわれが追いつけない時代も訪れるかもしれないので、常にアンテナを張り、テクノロジーの変革スピードに追いつけるようなエコシステムへの順応性を高める必要がある。現在は試行錯誤の段階だ。
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