「Amazon Connectにしたら音声が良くなるか」という質問には
――コロナ禍前後でユーザー企業のCXやコンタクトセンターはどのように変化したか。
幸崎氏:2020年はコロナ禍を理由にプロセスの簡略化や在宅勤務に踏み切ったが、今後は運用ルールやセキュリティ対策など、突貫工事の後始末に移っていく。また、着手し始めているお客さまが最近増えているように感じる。
羽富氏:お客さまとの会話で在宅勤務は欠かせないキーワードとなった。消費者向け企業の中には、在宅勤務を要件に含めないとオペレーターの応募が集まらない所もあるらしい。オペレーター自身もコンタクトセンターに集合する雇用形態を選択せず、働き方自体が変化した。加えて、2020年は頑張って持ちこたえたが、「2021年は分からない」という声も聞こえてくる。運用という観点でも一段階進むのでは。
幸崎氏:RFP(提案依頼書)を見ると在宅勤務は必要。デジタルチャネルやクラウド化も含まれている。従来のお客さまはクラウド移行するパターンが多かった。オンプレミスを意識しつつ、ライセンスだけサブスクリプション化するのか、アバイアのプライベートクラウドやパートナーのクラウドに移行してもらうなど、多様な提案をするように変化した。
羽富氏:インフラストラクチャーという意味では、VDIシンクライアントに変化が生じている。私がオペレーターだとしても、自分のPCから社内システムにアクセスするのは抵抗があるし、アプリケーションをインストールするのも嫌だ。VDIシンクライアントであれば、個人所有のPCに変わりはないが、会社環境のデスクトップを利用できる。また、在宅勤務でネットワーク経路が変化し、十分な帯域が確保できなくてもVDIシンクライアントやオンライン会議システムが使えてしまう。われわれもパートナーも顧客に「帯域を確保できるネットワークを構築してほしい」とお伝えするようになった。
福井氏:当然クラウドも在宅勤務も必ず求められるが、お客さま側にノウハウがなく、アイデアを求められることが多い。当初は部分的なGenesys Cloudの導入を追加提案していたが、構築後の課題も見据えなければならないので、顧客からは全体を見直した上で提案を求められるようになった。VDI周りも当社で動きがあり、WebRTC(ウェブブラウザーなどを介して高速なデータ通信を実現する規格)の採用や、音声経路とVDI経路を切り分けるなど、羽富氏がおっしゃるような点に着目する流れは大きい。
羽富氏:よくある質問に「Amazon Connectにしたら音声が良くなるか/悪くなるか」というものがあるが、はっきりとは答えられない。土管が細ければ音声も通らないし、在宅勤務でも家族がネットワークを使っていれば、業務利用時に遅延してしまう。そのため、顧客には計測の必要性を強調している。
幸崎氏:音質を気にされるお客さまは結構多い。
福井氏:こだわる方が多いのは確かだが、高音質でなければ話せないわけではない。
――仮に新型コロナウイルス感染症が収束してもオペレーターの在宅化は進むだろうか。
幸崎氏:在宅の選択肢があるかどうかは、企業の魅力に大きく関わってくる。「在宅できる」と宣言しないと、まずい状況だ。
羽富氏:「Amazon在宅物語」で検索してもらうと分かるのだが、とある男性がAmazonのコンタクトセンターで在宅勤務する動画が出てくる。当社は採用を含めてコンタクトセンターに一切出向かず、トレーニングも業務も在宅勤務でいい。地方ではコンタクトセンターに出向くのに片道数時間を要する方もいる。例えば、午前中はミーティングがあるからセンターに行くが、午後は在宅で数時間働くこともあり得るし、古くからあるサテライトオフィスやVDIを組み合わせることで、自由度は高まる。採用や運営の観点で見れば、多様な働き方に対応できない企業は成り立たないのでは。
福井氏:われわれも同感だ。在宅勤務で十分業務を遂行できることが証明された。もう、あとは進むしかない。さらにコスト面でも組織の負担は軽減されたはず。それが証明されれば在宅勤務は加速するし、当社も2021年1月からオフィス縮小の計画がある(1月18日、WeWork神谷町トラストタワーへの本社移転を発表)。ただ、セキュリティインシデントが発生したら、在宅勤務への抵抗感が生まれるかもしれないが、一度加速すれば止まらないと思う。
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