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セコムがオープンイノベーションで開発、5GとAIによる公共空間の警備システムとは
2021.04.23

新しいテクノロジーの波第4回

セコムがオープンイノベーションで開発、5GとAIによる公共空間の警備システムとは

著者 Bizコンパス編集部

人はいないけど、人の存在感が感じられる工夫とは?

 「バーチャル警備システム」の存在価値には、2つの側面があるといいます。1つはエンドユーザーにとっての価値です。バーチャル警備員と対面する利用者は、映像や画像、そして設備連動など、会話以外の情報も交えたデジタルコミュニケーションが可能になります。

 もう1つの価値は、セコムやビルなど施設の管理者といった運用者にとっての価値です。

 「このサービスを開発した背景には、労働力不足の問題や警備需要の増加もあります。バーチャル警備員を複数の箇所に配置することで、警備員を増やさずに、警戒・監視のポイントを増やしたり、受付応対の機会を増やすことが可能になります」

 さらに、コロナ禍によって、もう1つ新たな価値も生まれることになりました。それは、人と人との接触リスクが避けられるという点です。来場者の検温や体温に応じた対応などでは、従来のように、警備スタッフが来訪者に直接対応することがリスクになるため、バーチャル警備システムのような、バーチャルなキャラクターによるデジタルなコミュニケーションが社会的にも求められる機運になってきました。

 コロナ禍においてバーチャル警備システムを価値検証している最中、意外な効果も発見されたようです。病院でバーチャル警備システムの検証を行った際、システムに表示されるキャラクターがマスクを“装着”していない場合、高齢者や子供がマスクを外してしまう傾向があったといいます。デジタルなキャラクターのため、本来はマスクは不要ではあるものの、感染拡大防止のためには必要なケースもあるということで、敢えてマスクを着けるキャラクターのオプションを新たに開発したといいます。

 「バーチャル警備システムは、タッチパネルとは違い、画面にキャラクターを表示します。キャラクターが周辺の人物を見つめて、人間と目が合うことで“見られている感”が高まって、コミュニケーションの質も高めることができます。

 バーチャル警備システムは、『人の存在を中核としたコミュニケーションプラットフォームのフロントエンド』を目指しています。そのためには、実際にそこにいるという“実在感”が非常に大事です。立体的な存在感やUI、UXによってコミュニケーションを促しながら、さまざまな外部機器と、あるいは人とも連動して、体験を深めていくことを実現しています」

 システムではキャラクターの“実在感”を出すために、写り込んだ周辺環境と投影されたキャラクターが調和する、専用のミラーデバイスを採用しています。ミラーによって、人間の目が鏡に写った奥を見るときと、手前のキャラクターを見るときでピントの深さが変わり、あたかもそこに本当のキャラクターがたたずんでいるかのような、実在感を演出します。

 さらに、キャラクター自身もカメラだけではなく、空間全体を認識するため、周辺を往来する人や、方向、行動、背の高さなどを認識しながら、必要に応じて声をかけます。会話中には、話者の目をじっと見つめ“あなたのことを見ています”というメッセージを体現しているといいます。

 会話を促すUI、UXも搭載されています。たとえば、バーチャル警備システムに人が接近すると、メッセージを聞いていることがと直感的にわかるよう、集音波形が表示されます。あるいは、人間の言葉をAIが聴き取ったときに、テキスト表示することで、人間側がAIの聞き取り間違いに気づいて、自発的に言い直すことができます。このようにして、人間側が自然とAIに寄せていけるようなコミュニケーションの仕組みがとられています。

 「ここまで挙げた機能は、全てクラウドで制御されているため、インターネットにつながる端末があれば、どこからでもリモートでモニタリングや遠隔制御、設定変更ができます。たとえば、AIに替わってモニタリングしている人間が話しかけることもできますが、その場合も音声はキャラクターの合成音声にリアルタイムで変換されるため、雰囲気を壊すこともありません。

 バーチャル警備システムは、このようにさまざまな技術をベースに、社会側と開発側を行き来しながら、探索的に新しい価値や体験、商品をつくっていくというアプローチで進めています。2021年の発売を目指して、最終開発を進めています。ぜひ、注目してください」

 新しいサービスやビジネスをスタートするのは、簡単なことではありません。しかしセコムは、オープンイノベーションという手法と、5GやAIというテクノロジーを活用することで、「AIによる公共空間の警備システム」という、常識を裏切るようなソリューションを生み出しました。新規ビジネスを生み出すことに苦労している企業は、セコムのように新しい開発手法と新しいテクノロジーに着目してみてはいかがでしょうか。

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