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【PNP Spring Summit】モノに貼ってIoT化するテープ、Cookieなしでクリック率を上昇する広告など
2021.06.28

シリコンバレー通信第38回

【PNP Spring Summit】モノに貼ってIoT化するテープ、Cookieなしでクリック率を上昇する広告など

著者 小室 智昭

4.Media & Ad(メディア&広告)

 Media & AdのカテゴリーはAdvertising Innovation(広告のイノベーション)、Film & TV Innovation(映画&テレビのイノベーション)、Gaming(ゲーム), Virtual World & Social Innovationの3つの分野に関するスタートアップがピッチを行った。ここでは、各カテゴリーで気になったStartupを1社ずつ紹介する。

 

(1) Startup Pitch

(1-1) Hindsight社

 Advertising Innovationの分野からはHindsight社を紹介する。Hindsight社は、Cookieを使わずにパーソナライズされた情報を広告主、コンテンツオーナーに提供するプラットフォームを提供している。Hindsight社のFounder & CEOのHersh Patelさんは「広告はもっと柔軟で効率的に配信されるべきだ」と説明した。

 Hershさんはピッチの中で、スポーツカジノアプリを運営しているFanduel社の導入事例について説明した。Fanduel社は以前、次の試合の情報を宣伝するために、広告バナーを作成してWebサイトに掲載していたが、「自然な形でユーザーを獲得する方法はないか?」と、新たな集客方法を探していたという。Fanduel社は、HindSightの技術を活用したことにより、Webサイトに掲載した記事に自然な形で次の試合の情報を掲載できるようになり、CTR(Click-Through Rate、クリック率)も上昇したそうだ。

Fanduel社のBefore(上)/After(下)

 CTRが0.5%と言われている一般的なWeb広告と比べるとHindsight社のCTRは平均して2.5%と非常に高い。それをプライバシーファーストでCookieを使わずに実現している。

 技術的な実現方法の確認は必要だが、プライバシーや個人情報の取り扱いに関する規制が高まっている中、注目すべきスタートアップだと思う。

 

(1-2) CatapultX社

 Film & TVの分野からはCatapultX社を紹介する。CatapultX社はOn-Streaming Adと呼ばれる広告配信プラットフォームを提供している。

 CatapultX社のサービスを簡単にまとめると、同社はAIを活用して映像を深く理解し、最適な広告をリアルタイムに映像内に表示するというものだ。CatapultX社のCo-Founder & CEOのZack Rosenbergさんは、Facebook時代の同僚のJames Altschulerさんと共にCatapultX社を立ち上げた。

 Zackさんは「市場規模が$61B(610億円、約6兆7千億円)とも言われているビデオ広告市場は、70年間変わっていない。」と課題を語った。そして「その誰も望まない既存のソリューションにより、84%の視聴者がコンテンツの視聴をやめ、65%の視聴者がビデオ広告をスキップし、25%の視聴者がビデオ広告をブロックしている。広告主はCookieを使わない方法で広告効果を高める方法を必死に探し、コンテンツオーナーは、貧弱なビデオ広告でマネタイズしようとしている。」と続けた。

既存の広告業界が抱える課題

 CatapultX社はAIを活用して映像を分析し、映像のシーンとビデオ広告をマッチさせる。例えば、有名選手、製品、ブランド、トピックス、イベントなどだ。Zackさんはピッチの中で、映像の中のブランドを元に、関連するビデオ広告を表示したり、ゴールしたサッカー選手の映像をもとにユニフォーム販売サイトの広告を表示するデモを見せてくれた。

 CatalutX社はPre-Seedとして2020年に$550K(55万ドル、約6千万円)の資金を調達している。そして、技術開発を加速するために2021年中にSeed Roundとして$3Mの資金調達の機会を探している。

画面に映るバナー広告を分析した同的な広告配信事例

 

(1-3) Sport Buff社

 Gaming, Virtual World, & Socialの分野からは、Sport Buff社を紹介する。

 米国の放送局は最近、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)などのスポーツ中継中にクイズ形式で「誰が次にタッチダウンをするか?」といった懸賞付きアンケートを実施している。Sport Buff社はスポーツのライブ放送、eスポーツのライブ放送に選手情報、広告、アンケート、クイズ、投票などの情報をオーバーレイできるプラットフォームを提供している。

 ピッチの中でSport Buff社のVP of Business DevelopmentのBrendan Sockさんは、Fomula-E(電気自動車のフォーミュラカーによるレース)が同社のプラットフォームを活用してドライバー情報や順位に関する情報をオーバーレイ表示している動画を見せてくれた。また、Brendonさんは、「5試合だけだったがFIBA(International Basketball Federation、国際バスケットボール連盟)がSport Buff社のプラットフォームを活用して視聴者プレゼントを提供した」と説明した。

 Sport Buff社はFIA(国際自動車連盟)、FIFA(国際サッカー連盟)などのスポーツ団体やエンターテイメント業界にPlatform提供している。ほかのスポーツ団体、エンターテイメント業界への提案も進んでいるようだが、「NDAがあるから詳しいことは言えないんだよ」とBrendanさんは、個別の打ち合わせで嬉しそうに教えてくれた。

左: Sport Buff社のシステム概要、 右: Formura-EにおけるSport Buff社システムの導入事例

 Media & Adのカテゴリーは、ここで紹介した3社以外にも効率的に複数のメディアに広告配信できるプラットフォーム、Clubhouseが火をつけた音声メディアによる広告配信プラットフォーム、コロナ禍でも友達と一緒にコンテンツ視聴できるCo-Watching(共同視聴)プラットフォーム、いま注目度が急上昇しているnft(Non-Fungible Token、非代替性トークン)など、他にも興味深いスタートアップが多く、別の機会に紹介しようと思う。

後編に続く

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