数年前からCESでも米国の都市が企業と連携したSmart Cityの事例紹介をよく目にする。2015年ごろにCESで紹介されたSmart Cityの事例は、センサーやカメラを設置してデータを集めている程度で将来性を感じるものではなかった。おそらく、自治体は「何かできる」と思っていたが「何をしたい」がなったのだろう。そのため米国では、Smart CityはNice to HaveなIoTと捉えられてきた。
ところが、2020年になりSmart Cityの関心が高まり始めた。街が抱える課題を解決するソリューションやAIによるセンサーデータの分析とその分析結果をもとに都市インフラを操作するソリューションを提供するスタートアップが数多く登場した。
シリコンバレーの自治体のSmart City担当者が”解決したい課題”の一番にあげるのは”交通事故の減少”だ。特に歩行者、自転車の交通事故の減少が最優先のようだ。TEXIT(Texas州への本社移転)が話題になっているシリコンバレーだが、人口増加に伴う歩行者、自転車の交通事故が急増しているそうだ。
また、交通渋滞がひどいシリコンバレーではストレスフリーな交通システムの実現も優先度が高いという。交通事故防止、ストレスフリーな交通システムの実現に向けては、カメラとゲートウェイで既存の交通システムを自動制御するソリューションや都市インフラが歩行者などの障害物を車両に通知する(V2X; Vechicle-to-Everything)などが注目だ。V2Xの普及は、Lidarなどのセンシング技術、AIによる分析・認識技術、5GによるリアルタイムなOT(Operational Technology; 制御技術)が重要な鍵となる。個人的に興味深いのは、これらのソリューションを開発しているスタートアップは、Israel、NYC、シリコンバレーなどの交通渋滞がひどい地域から誕生していることだ。

V2Xのコンセプト
(1) CES 2021
CESを主催するCTA社は2020年12月15日に開催したメディア向け記者会見で、CES 2021で注目分野を紹介した。CES 2021期間中にKeynoteが開催される5G、Smart City、Digital Health、Transportationは、特に注目すべき分野であろう。
・5G and IoT(5GとIoT)
・Ad, Entertainment & Content(広告、エンターテイメントとコンテンツ)
・Automotive(モビリティ)
・Blockchain(ブロックチェーン)
・Health & Wellness(医療と健康)
・Home & Family(家庭向けソリューション)
・Immersive Entertainment(没入感のあるエンターテイメント)
・Product Design & Manufacturing(設計と製造)
・Robotics & Machine Intelligence(知的なロボット)
・Sports(スポーツ)
・スタートアップ(スタートアップ)

CES 2021における注目分野
(2) Gartner社
Gartner社は2020年10月のGartner IT Symposiumで2021年に注目すべき技術について紹介した。その中で、Gartner社は以下の9つの技術を注目すべき技術とした。
1. IoB, Internet of Behavior(様々なデータからの行動分析)
2. Total Experience(エコシステムにおけるトータル・エクスペリエンス)
3. Privacy-Enhancing Computation(高度なプライバシー対策)
4. Distributed Cloud(クラウドとエッジを連携させた分散型クラウド)
5. Anywhere Operations(セキュアで柔軟性が高い新たなオペレーション)
6. Cybersecurity Mesh(拡張性がある分散型サイバーセキュリティ)
7. Intelligent Composable Business(再編成可能な高度なビジネスプロセス)
8. AI Engineering(継続的なAIへの投資)
9. Hyperautomation(高度な業務自動化)

Gartner社が注目する2021年の技術トレンド
Gartner社はさらに、見逃してはいけない2021年〜2025年のトレンドとして、以下の7つをあげた。これらには、今話題のQuantum Computing(量子コンピュータ)、Distributed Cloud(分散クラウド)、Augmented Tech(拡張現実)が含まれている。Hypecycle(新技術が登場した後のサイクルを類型化したもの)的な思考に立つと、これらの技術がブレイクするにはもう少し時間がかかるとGartner社は考えているのかもしれない。
1. Nontraditional compute technologies(新たなコンピューティング技術)
2. DNA data storage(大容量ストレージ)
3. Distributed Cloud(クラウドとエッジを連携させた分散型クラウド)
4. Digital twin of the earth(ITを活用した気候変動対策)
5. Augmented humans(バーチャル技術による業務支援)
6. Technological biohacking(プライバシーに配慮した医療IT)
7. Emotional experiences(感情分析のビジネス利用)