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IoTの三種の神器とは?バイデン大統領で何が変わる?2021年のITトレンド予想
2021.01.06

シリコンバレー通信第35回

IoTの三種の神器とは?バイデン大統領で何が変わる?2021年のITトレンド予想

著者 小室 智昭

(1) 5G

 米国では2018年にVerizon社が世界で初めて家庭用に5Gサービスを提供した。しかし、実際はNetgear社のルーターを使って、家庭内の無線部分を5G対応したに過ぎなかった。2019年は5G元年となると期待が高まったが、CESでは端末ベンダーの5G対応スマートフォンは”参考出品”にとどまった。

 そして迎えた2020年。通信事業者がこぞって「世界初の5Gサービス」を競った。Samsung社などの携帯端末ベンダーやGoogle社が5G対応スマートフォンを発表し、11月にApple社がiPhone Proの発売を始めて役者が揃った。ただ、スマートフォンは出揃ったが、通信インフラがユーザーのニーズに追いついていない。シリコンバレーでもAT&T社、T-Mobile社、Verizon社が5Gサービスを提供しているが、提供範囲は限定的だ。スマートフォンの画面には”5G”の文字が表示されているが、5Gの恩恵は実感できていない。

 5Gは一般消費者だけでなく、ビジネスユースとしての期待も高い。例えば、倉庫でのオペレーションの自動化を目指す製造業や流通業、精度の高い自動運転を実現したい自動車業、人手不足を解消して収穫を増やしたい農業などだ。各携帯事業者は現在、都市部を中心に5Gサービスを展開している。

 提供エリアを広げるには多くの基地局を設置する必要があり、都市部でも提供範囲の拡大は遅々として進まない。また、5Gは障害物に弱いとされているため、建物の中や工場の中に電波を届けることが難しい。そこで、注目されているのがローカル5Gだ。

 ローカル5Gにはパブリック5Gの信号を反射させるもの、パブリック5Gの信号を増幅してリレーするもの、有線での光通信を5G信号に変換するものなど、色々誕生している。方式は違うがこれらのローカル5Gを提供しているスタートアップ達は、パブリック5Gの死角を消し、必要な場所に安価に5Gサービスを提供することを目標としている。

 すでに日本市場で実証実験をしているスタートアップもいれば、日本の投資家から資金調達を受けて製品開発を進めているスタートアップもいる。技適(技術基準適合証明)の取得、ローカル5Gの無線免許を持つ日本企業との協業を探しているスタートアップもいるため、彼らのようなスタートアップと組んでSmart Factory、Smart Warehouse向けソリューションの提供を始める日系企業が出てくるだろう。

シリコンバレーの5G提供エリア(左: AT&T社、中: T-Mobile社: Verizon社)

(2) AI

 AIは目となり、耳となり、鼻となって私たちに生活を豊かにしている。例えば、身近なサービスでいうとYouTubeの英語の字幕はAIを活用して作成されているものもある。他にもレントゲン写真からごく小さな病気の予兆を見つけたり、カスタマーセンターとのコミュニケーション(チャットボット)、機械の振動や音から不調を診断する故障検知にも利用されている。自動運転を実現するための技術としてもAIは欠かせない。

 特に、2021年はL3/L4(L3: 特定の場所でシステムが全てを操作し緊急時はドライバーが操作、L4: 特定の場所でシステムが全てを操作)実現への期待が高く、AIが果たす役割は重要だ。ここで挙げた事例は、AIの恩恵を直接的に実感できるサービスだが、AIはサービスの裏側でユーザーの利便性、サービス品質の向上にも一役かっている。Gartner社は、このようなAIを活用したソリューションを”IoB(Internet of Behavior)”と名付け、2021年に注目すべきトレンドして紹介している。

 IoBはマーケティング、金融、保険などで活用されているデジタル空間での行動分析だけでなく、センサーデータを分析して人々の行動を把握し、効率化、収益化にも利用できる。自動車に搭載したDashcam(ドライブレコーダー)のデータから運転の安全性を分析して料金をダイナミックに変動させる今のどきの自動車保険もIoBの事例の一つであろう。また、建設業界においては、重機などのアセットの管理や作業員の効率的配置もIoBを使って実現できる。

 残念ながら感染拡大が止まらないコロナ禍において、センサーデータを活用した人流分析、分析結果に基づいたニューノーマルにおける新たな行動変容の提案は、2021年のIoBの代表的なソリューションになるかもしれない。

Internet of Behaviorによる顧客分析事例

(3) Automation

 Automationといえば、ロボット、自動運転、チャットボットなどが代表だが、事務作業の効率化を支援するRPA(Robotics Precess Automation)もAutomationだ。

 RPAはさほど新しいサービスではないが、個人的には、日本ではRPAの機能をフルに利用されていないような気がする。シリコンバレーにいる赴任者も、RPAよりも、紙の書類をデジタル化するiOCR(Intellitent OCR)の方に関心が高いように見える。

 ただ、全ての米国企業の業務がデジタル化されているわけではない。米国の企業でも紙の伝票や請求書などは、まだまだ現役だ。運送業、金融業、保険業などの業界でも紙の書類のデジタル化、自動化は大きな課題で、その課題を解決しようと多くのスタートアップが誕生して、急成長している。じっくりと時間と手間をかけて”おもてなし”することは日本の美徳かもしれないが、コロナ禍ではそれは難しい。それよりも、時間と手間をかけずに素早くサービスを提供する方が、今後はサービスの価値が上がると思う。

 コロナ禍で企業が仕事の進め方を見直す中、2021年はさらに自動化は進むだろう。企業内のシステム連携だけでなく、企業システムのAPIをパートナーに公開して業界全体で自動化を推進する動きも加速するだろう。あるスタートアップは、クラウドアプリ同志を連携させて効率的なDevOps、タイムリーな顧客サポートを実現する自動化ソリューションの提供を始めた。

 コロナ禍で、無駄な業務や手続きが炙り出されて業務フローの最適化が図られたと思うが、自動化を検討する上で、「この業務や手続きはなぜ必要なのか? 本当に必要なのか?」を問うことも忘れてはならない。

Workflow Automationのコンセプト

2.リモートとバーチャル、そしてリアル

 COVID-19の感染拡大でビデオ会議がより身近になった。私の場合、ビデオ会議アプリは、電子メール、Webブラウザー、Slackに次いで利用頻度の高いアプリになり、利用しない日はなかった。SIP(Shelter-In-Place、不要不急の外出禁止)、 Order(自粛)が始まった頃は、移動時間もなく、世界各地のカンファレンスやピッチコンテストに参加できるので、COVID-19以前よりも多くの情報を得ることができたが、ビデオ会議のコンテンツは一方通行のものが多く、双方向なコミュニケーション、コミュニケーションの熱量という点で不満を感じるようになった。

 活発なコミュニケーションを実現するために、新機能、新サービスが登場した。Zoom社は、双方向のコミュニケーションを提供するためにBreakout Room機能を追加した。Remo社は、自由かつ活発な会話が生まれるように、Round Table(円卓)を仮想化したアプリを提供した。また、Hopin社はデジタル空間でカンファレンスを実施できるようにし、Disrupt SF 2020のプラットフォームとして採用されて注目を集めた。Hopin社は、2020年6月にSeries Aとして$40M(4千万ドル、約41億円)」の資金調達をし、2020年11月にはSeries Bとして$125M(約128億円)の資金を調達した。

 このような仮想環境が注目を集めているのは間違いないが、”自然なコミュニケーションの提供”という課題を解決したわけではない。”何気ないコミュニケーション”や”雑談”は、思いがけないアイデアの想像や従業員のメンタルケアのためには欠かせないという人は多い。コワーキングスペースにいる異なる業種や企業の人たちとの何気ない会話から新しいアイデアが生まれるのと同じ理屈だ。

 今の普及しているツールを俯瞰すると、”何気ない会話”を実現したスタートアップはUnicorn(ユニコーン企業)となる可能性が高い。ただし時間はない。それは、人々はリアルな出会い、会話を求めているからだ。

何気ない会話を実現するアプリ例(NTT ComのNeWork)

 PNP Winter Summit 2020に参加していた投資家は、「今のバーチャルな環境は一時的なもので、COVID-19が落ち着いたら元の環境に戻す」と話した。Zoom社の株価を見てもそれは分かる。COVID-19の感染拡大とともにZoom社の株価は値上がりを続けた。しかし、COVID-19のワクチン完成のニュースが流れると株価は少しずつ値を下げ、最高値を記録した10月19日の株価($568.34/share)と比べると、12月31日時点($337.32/share)では、40%以上値を下げた。

Zoom社の株価の変動

 全てがリアルに戻ることもないと思うが、全てがバーチャルで継続されるとも思わない。ただ、「リモートでもいいよね」とか「リモートの方がいいね」というものはバーチャルであり続けるだろう。例えば、Telemedicine(遠隔医療)、Distance Learning(遠隔授業)、Remote Mentoring(遠隔支援)だ。遠隔医療/遠隔授業は医療・教育の地域的格差をなくすだけでなく、どこでも一貫した治療・教育を提供できる。これらは、単なるビデオ会議的なサービスではない。高いセキュリティのもと、IoTデータ、データ分析、AIなどの技術と共有された医療データを連携すれば、チャットボットによる患者自身のSelf-Diagnositc(自己診断)が可能となる。

 また、専門的な知識と経験を積んだ人材不足に悩む企業にとって、遠隔支援はすぐにでも使いたいソリューションだと思う。最近のツールは、AR/VR/MR、IoT、AI、データ分析とともに、業界標準となっているツールやそのツールを利用するための優れたUIがさらに効率的な作業支援を可能としている。遠隔支援ツールを開発しているTacit社は、ARグラスを活用した業務支援ソリューションを開発する一方、社外の業界エキスパートとマッチングするマーケットプレイスの提供も目指している。社内にいない優秀なエキスパートとの出会いを提供するマーケットプレイスは大きな市場となるだろう。

Tacit社のRemote Support画面

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