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FinTechからスマートヘルスケアまで、PNP Winter Summit 2020の気になるスタートアップ(後編)
2020.12.21

シリコンバレー通信第34回

FinTechからスマートヘルスケアまで、PNP Winter Summit 2020の気になるスタートアップ(後編)

著者 Bizコンパス編集部

(3-3) InsurTech

 InsurTechのカテゴリーには23社のスタートアップが登場した。ここでは、個人的に注目している気象リスクに関するソリューションにおいて、気象リスク分析のプラットフォーム、気象リスク分析に必要な情報を提供するソリューションを提供しているスタートアップを紹介する。

InsurTechプログラムに参加したスタートアップ一覧

 

a) TCS(The Climate Service)社

 TCS(The Climate Service)社は、企業、自治体、保険会社向けに気象変動に伴うリスクをファイナンスの観点で測定するSaaSプラットフォームを提供しているスタートアップ。TCS社のCOOのJoseph Lakeさんは、「自社のプラットフォームは山火事、洪水、干ばつ、気温などの物理的な災害リスクも測定できる。」と説明した。さらに、「規制、投資家のプレッシャー、悲惨な災害に伴う財政難がTCS社のプラットフォームが必要とされている理由」と続けた。TCS社は、ニーズの高まりに合わせて企業としても成長していて、収入は4倍、1年前は5人だった社員数も20人以上になったという。

 TCS社は地球上のあらゆる場所において、現在から将来にわたる気象変化を「何が、どこで、いつ」をコスト目線で分析する。さらに被害の大きい災害リスクも予測するほか、戦略的な判断をできるようなレポートも提供している。

 同社のダッシュボードは、地図を使った直感的なものになっている。将来の災害リスクの地図上での確認、指定した場所の災害リスクスコア、スコアの理由を確認ができる。
 Forrester Research社はTCS社の確実なデータと分析能力を評価して、同社を2020年の”Climate Risk Analytics”分野のリーダーに認定した。

 同社は2017年に設立され、Series Aとして$3.8M(380万ドル、約4億円)の資金を調達している。日本の保険会社もSilicon Valleyのスタートアップと協業していて、今後も気象関連のスタートアップとの連携の流れは後も続きそうだ。

TCS社の分析概要(上)と同社のDashboard(下)

 

b) Urban Sky社

 Urban Sky社は成層圏をビジネス利用するためのバルーンを開発しているスタートアップ。Urban Sky社がターゲットとする空域はLEO(Low Earth Orbit; 人工衛星の低軌道)と商用のエアラインの空域の間にある成層圏である。成層圏の利用は、衛星軌道の空域の利用よりも劇的にコストが安くすることができる。さらに、リモートセンシング、高解像度で更新間隔が短い衛星撮影もメリットとなる。

 「成層圏でバルーンを常に予定通りに安定して飛行させることは非常に難しい。」とUrban Sky社のCo-Founder & CEOのAndrew F. Antonioさんは説明する。「成層圏で一般的に使用されているのが気象予測に利用されるバルーンだが、バルーンはコントロールが難しいので、私たちはバルーンは使わない。」と続けた。

 そこでUrban Sky社は、成層圏の狙ったところに打ち上げられる”Microballoon”と名付けたバルーンシステムを開発した。Microbaloonは、狙った場所の高解像の写真撮影、頻度の高いデータ取得を可能とした。

 Andrewさんは、「同社の衛星写真は、既存の衛星写真の解像度の3倍高解像で、航空写真の10倍以上更新頻度が高い。」と同社の強みを説明した。

 Andrewさんは、成層圏でのビジネス開発をしているWorld View社でエンジニアだったJared Leidichさんと出会い、Urban Sky社を立ち上げた。Jaredさんは今、Urban Sky社のCo-Founder & CTOを勤めている。

 Urban Sky社は合計で$1.2M(102万ドル、約1億円)の資金調達をし、NASAとは山火事の監視を目的としたプロジェクトについて$115K(11万5千ドル、約1,200万円)で契約を交わしたそうだ。Andrewさんは保健業界が必要としているリスク分析、保険の申請手続きにUrban Sky社のソリューションが役に立てると考えているようだ。

上: UrbanSky社のサービスコンセプト、下: サービス内容(左)とパートナー事例(右)

(3-4) Health

 Winter Summit 2020のしんがりを務めるHealthのカテゴリーには、International Programから参加した3社を加えて18社のスタートアップがピッチを行った。参加したスタートアップは以下のように分類できる。

・ Chronic Disease / Digital Therapeutics(慢性疾患/デジタル療法)

・ Telemedicine / Medication Management(遠隔医療/投薬マネジメント)

・ AI / Analytics / Data Management(AI/分析/データマネジメント)

・ Diagnostics & Drug Development(診断&医薬品開発)

・ Clinician Decision Support(医師の判断支援)

 ソリューションの傾向としては、スマートフォンによる遠隔診断ソリューションが多く(6件)、メンタルヘルスメンタルヘルスに関するソリューションも2社と注目が高まりつつある。Healthのカテゴリーは、日本でもニーズがありそうなスタートアップを紹介する。

Healthプログラムに参加したスタートアップ一覧

 

a) Kintsugi社

 Kintsugi社は、音声をバイオマーカーとして精神疾患を判別するソリューションを提供しているスタートアップ。Kintsugi社は、独自アプリを開発し、App Storeで配信している。ユーザーは、同社のアプリで相談したり、話しかけたりすると、Kintsugi社が声をリアルタイムに分析し、必要なアドバイスを提供する。Kintsugi社は現在、いくつかの医療機関、ヘルスケア企業のコールセンター、TeleHealth Platform(遠隔医療プラットフォーム)、Remote Patient Monitoring application(遠隔患者モニタリングアプリ)に利用されている。

 Kintsugi社のビジネスモデルはサブスクリプションモデルで、セルフヒーリング(自己回復)を含めた3つのプランを提供し、同社のカスタマーセンターは24時間365日休み無しでユーザーをサポートしている。

 Kintsugi社はSDKを提供しているので、独自のメンタルヘルスアプリを開発することも可能だ。

 Kintsugi社は、Disrupt SF 2016、SXSW、RSA Innovation Sandboxにもファイナリストとして登場している。Graceさんの説明では、Kintsugi社はNEA社などから$20M(2千万ドル、約20億円)のSeries Aの資金を調達しているそうだ。

 メンタルヘルスはヘルスケア業界で注目分野の一つで、Meditation(瞑想)サービスを提要しているCalm社など、多くのスタートアップが市場で凌ぎを削っている。

 Kintsugi社のサービスには全く関係ないが、Kintsugi社のFounder & CEOのGrace Changさんがオンライン会議ツール「mmhmm」を使ってプレゼンをしていたのが気になった。mmhmmはニューズ番組を見ているような感覚でピッチを聴けるのだが、プレゼン資料の文字が小さくて読めないスライドもあった。

Kintsugi社のサービスの流れ(上)と競合比較(下)

 

b) KeepAppy社

 Kintsugi社に続いて登場したのは、メンタルヘルスのためのモバイルアプリを提供しているKeepAppy社。同社はメンタルヘルスに関する、監視、管理、パーソナライズされたトレーニングメニューを提供している。

 KeepAppy社によると、世界中で74%の人が精神のコントロールに悩んでいるという。治療費がとても高いこともその理由の一つであろう。市場にはいくつもメンタルヘルスのためのソリューションがあるが、ストレスを解消できない、気分が上がらない、一般的な内容でユーザーにマッチしていない、単一昨日しかない、など課題が満載だそうだ。

 KeepAppy社のCo-Founder & CEOのAimee-Louise Cartonさんは、自社のソリューションを”The Gym for your メンタルヘルス”と表現する。 KeepAppy社は心理学者が認める10の機能を、次のようなフローで提供している。

1) KeepAppy社のスマートフォンアプリで8つのVital Data(脈拍や血圧などの生体情報)を毎日モニターする。

2) Vital Dataを分析して、パーソナライズされたコンテンツをスマートフォンに配信する。

3) ユーザーは、パーソナライズされたコンテンツで気分をあげるなどの改善を図る。

 KeepAppy社はB2C向けアプリとB2B2C向けアプリを提供している。B2B2CモデルはKeepAppy社のアプリを利用している社員の情報を秘匿化する機能も提供している。

 KeepAppy社のB2C向けアプリはFreemium(フリーミアム、基本サービスは無料で、高度な機能を利用する際には課金が必要になる)モデルで月額課金、年間課金、Lifetime(永続利用)の3つのプランを提供している。B2B2C向けアプリは、社員数に合わせたユーザー数見合いの課金モデルだ。

 KeepAppy社はBeta版公開後の1ヶ月で、100カ国以上で利用され、アクティブユーザーは3,300人以上いるそうだ。

 KeepAppy社のアプリは、他のサービスよりも解約率が低いという。Aimeeさんは、その理由を、データに基づくによるアプローチ、優れたUX、実際に役に立つツールと分析している。

KeepAppy社のサービスコンセプト(左上)と競合比較(右上) KeepAppy社が提供するサービス(左下)とSmartphoneアプリ画面(右下)

 

c) VROR社

 VROR社は、VR HUDを使った目の治療ソリューションを提供している韓国のスタートアップ。VROR社のVR HUDはEye Tracking(視点追跡)機能を実装していて、患者がコンテンツのどこを見ているのかをクラウドを通じて眼科医がダッシュボードで確認できる。同社は、米国のFDA承認と韓国でも医療機器としての承認を受けている。

 VROR社は2020年8月にサービス提供を始め、韓国の携帯通信事業者がコンタクトしているそうだ。

 VROR社は韓国、米国だけでなく、日本市場への参入も検討しているようだ。

VROR社のVRソリューション(左)と専用端末(右)

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