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IoTから自然エネルギーまで、PNP Winter Summit 2020の気になるスタートアップ(前編)
2020.12.14

シリコンバレー通信第33回

IoTから自然エネルギーまで、PNP Winter Summit 2020の気になるスタートアップ(前編)

著者 小室 智昭

(3-4) Energy

 Energyのカテゴリーには13社のスタートアップが登場した。Keynoteに登場したEvergy Ventures社のManaging DirectorのBrock Smithさんは、エネルギー業界を以下のように分析した。

・過去130年は計画化されたインフラで、集中生成、一方向の電力フロー、Threat-Fee、規制で守られた業界。
・今は分散化、ニーズに応じた提供、電化、双方向の電力フロー、環境への配慮、短期・長期の蓄電効率が業界の関心事項。

 BrockさんもKeynoteの中で話をしていたが、世界中で発電・配電・蓄電の仕組みも多角化している。世界最大の家電見本市のCES(Consumer Electric Show)でも、家庭用のソーラーパネル、蓄電池、EV Charger(電気自動車の充電器)が数多く展示されている。

 PNP Winter Summit 2020でもデータセンター、工場、車両で利用できる水素から効率的かつ高速に発電する技術を持ったスタートアップの他、リサイクル、新素材、エネルギーマネージメントとさまざまソリューションを提案しているスタートアップが登場し、日本の化学メーカー、家電メーカー、商社と連携しているスタートアップもいた。

 米国の現トランプ政権は石油、石炭といった化石燃料以外のクリーンなエネルギーと環境問題には全く興味がないが、次期バイデン政権は真っ先にパリ協定に復帰すると目されているくらい環境問題に積極的だ。それを受けて、少なくとも次の4年間は、Clean Energy、Renewable Energy(再生可能エネルギー)、Sustainability、Climate Change(気候変動)に関するスタートアップがこれまで以上に誕生すると思われる。

Energyプログラムに参加したスタートアップ一覧

 

a) HeyCharge社

 HeyCharge社は、EVオーナー、アパートオーナー、ビルオーナー、駐車場オーナー向けに導入が簡単で低コストな後付けのEV Charger Solutionを開発しているスタートアップ。同社はドイツのミュンヘン発のスタートアップ。

 ピッチの冒頭でHeyCharge社のFounder & CEOのChris Cardéさんは、「ヨーロッパの全人口の42%にあたる1億8,700万人がアパートに住んでいる。EUは、2050年のカーボンニュートラルの目標達成のために2030前半までに販売する新車をEVに限ると発表していて、2020年9月時点でEVの登録車数がディーゼルエンジン車の登録車数を初めて超えた」とヨーロッパの現状について説明した。

 そういう状況を受けて、アパートに住んでいるEVオーナーが大勢HeyCharge社に相談にやってくるという。というのも、アパートにEV Chargerを設置するのは、現場の調査に始まり、インターネットの開通、管理システムの設置など、多くの時間、作業、初期費用、運用費用がかかるそうだ。

 そこで、HeyCharge社はスマートフォンを活用してインターネットを必要としないEV Chargerを開発し、大幅に初期費用、運用費用を抑えようとしている。同社は、HeyCharge Homeというダッシュボードを開発し、施設内のEV Chargerの稼働状態の可視化機能、Admin Console(管理者ツール)機能も提供している。

 同社のシステムは既存の給電システムと連携させられるため、さらに低コストでEV Chargerをアパートに設置できるという。

 同社は現在、2021年に向けて€1.5〜2M(150万~200万ユーロ、約1億8千万円~2億5千万円)のSeed Roundの機会を探しているとともに、B2Bビジネスパートナーを探している。

左上: 既存のEV Chargerの設置フロー、左下: HeyCharger社の設置フロー、右上: HeyChargerのデモシステム、右下: HeyChargerの構成概要図

 

b) ElectricFish社

 ElectricFish社は、都市部で5分で充電できる蓄電池を活用したFast Charger(急速EV Charger)を開発しているスタートアップ。同社のCo-Founder & Product and Strategy のAnurag Kamalさんは、「2035年までに新車販売の100%クリーンカーを目指すカリフォルニア州は今後、50,000台のEV Chargerを設置し、電力消費のピークを15GWatt(150億ワット)以上増やす必要があり、巨大な電力ストレージマーケットが誕生することになる」と説明した。

 Anuragさんは、このような電力ストレージを設置場所として、カーオーナーが慣れ親しんできた既存のガソリンスタンドがベストだと考え、同社のFast Chargerは既存のガソリンスタンドに設置できるように設計したそうだ。

 ElectricFish社は、同社の本社があるシリコンバレー周辺に10台のFast Chargerを設置している。公開されている地図から設置場所を確認したところ、全てPhillips 66社のガソリンスタンドの敷地内だった。同社は電力のオフピーク時に蓄電池を充電し、蓄電された電気を5分間の充電で100マイル(160キロメートル)までの走行可能なFast Chargerで給電する。Anuragさんの説明によると、ElectricFish社の充電システムの大きさは、一般的なセダンタイプの自動車が止められる駐車スペース程度だそうだ。

 同社は現在、$2M(200万ドル、約2億円)のPre-Seed Roundの資金調達機会を探り、2021年には$3M(300万ドル、約3億1千万円)のSeed Roundの資金調達の実現を目指している。

 私の周辺を見渡すとほとんどのEV Chargerは、ショッピングモール、映画館、オフィスの駐車場に設置されている。最近は、近所のTarget(アメリカのスーパーマーケット)の駐車場に26機のTesla社のSuper Chargerが突然現れて驚いた。そういえば数ヶ月前、近所のExxonMobile社のガソリンスタンドは、水素ステーションを併設した。燃料の多様化が始まっている中、ガソリンだけに頼らずに顧客を繋ぎ止めようとする動きが始まっているのかもしれない。

上: ElectricFish社のサービス概要図、 左下: ElectricFish社のEV Chargerの設置イメージ、 右下: ElectricFish社のEV Chargerの設置場所

後編はこちら

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