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超省電力、使い捨て可能なほど安いIoTタグを開発したスタートアップが登場
2020.11.04

シリコンバレー通信第32回

超省電力、使い捨て可能なほど安いIoTタグを開発したスタートアップが登場

著者 小室 智昭

ブロックチェーンであらゆるIIoT環境を守るSmartAxiom社

 みなさんが設置しているIIoTデバイスは安全ですか? 誰が安全と証明した物ですか?

 ほとんどのIIoTデバイスは安全な物だと思われるが、悪意あるハッカーがアプリを改竄してこっそりネットワークに紛れ込ませたIIoTデバイスもあるかもしれない。IIoT市場は急速に成長しているが、その反面、システムがその急成長について行けていない。おそらく、多くのシステムは中央集権的なサーバー型アーキテクチャーで認証・暗号化で安全性を確保しているが、そのようなシステムは長い応答遅延、単一障害点の存在、認証と鍵管理の複雑さ、高い運用コスト、中間者攻撃を受けやすいといった欠点があると言われている。

 SmartAxiom社は、そのような課題をブロックチェーンで解決しているスタートアップだ。私がSmartAxiom社に最初に会ったのは2017年。その当時、ブロックチェーンを用いたIoT Securityに注目していたが、ほとんどのStartupがコンセプトだけで、SmartAxiom社も同じ状況だった。その後もSmartAxiom社と会っていたが、今回再開して話をしたところ、製品開発も一息つき、製造業などとパイロットプロジェクトやPoCをしていることが分かった。

 SmartAxiom社は、ゲートウェイ、ルーターなどのネットワーク機器、監視カメラ、Wi-Fi Mesh Node(メッシュWi-Fi)などのインターネットのエッジに相当するデバイスで、軽量でカスタマイズ可能なブロックチェーンを提供している。SmartAxiom社のCEOのAmit Biyaniさんは、「ブロックチェーンは信頼を構築するのに優れている。私たちのプラットフォームの中でIIoTデバイスが一旦相互に信頼できるようになると、それらは自律的に連携して自分自身と接続されているIIoTデバイスを守り始める。」と、SmartAxiom社のプラットフォームの特徴について説明してくれた。Amitさんは「私たちのプラットフォームは、手頃な価格でありながら高速で冗長性があり、拡張性も備えている。」と自信も見せていた。

 SmartAxiom社のプラットフォームは、3つの主要なコンポーネントで構成されている。一つ目は、Blocklockと名付けた軽量のエッジ型ブロックチェーンで、システムの中心をなす。二つ目は、「Beachhead」というセンサーやアクチュエーター(機会や装置などによってエネルギーの供給を受け、それを物理的な運動に変換する機械要素)などのエンドデバイスを守るファームウェア。三つ目は、ユーザーに管理ポータル、レポートを提供するTenaciousというクラウド環境とのインターフェース。

 SmartAxiom社のプラットフォームは、ユーザーの既存システムと相互に連携できるそうだ。しかも、サーバーが利用できない場合でも、ブロックチェーンに制御に必要なデータが保管されているため、システムを止めることなく安全に守り続けられる。これにより、エンドポイントからエッジ、クラウドまで一気通貫した、完全なIoTセキュリティソリューションを提供できる。

 SmartAxiom社のソフトウェアは一般的なネットワーク、OS、プロセッサーを利用できる。このことはユーザーにとって、大きなメリットだ。ユーザーは、Intel社やArm社のプロセッサーを搭載し、Linux、RTOSS、Window環境のデバイスにSmartAxiom社のアプリをインストールし、Bluetooth、ZigBee、Wi -Fi、5Gなどのネットワークにデバイスを接続するだけで、同社のソリューションを利用できるようになる。

 SmartAxiom社のソリューションは、HP社やVolvo社がスマートビルディングのソリューションとして利用し、Boa Logistics社やGlobe Teleservice社は、Intel社のゲートウェイ、Marvell社のWi-Fi Mesh Node、NXP社やRenaissance社のプロセッサと連携し、輸送中のコンテナを監視するスマートトラッキングに利用している。またトヨタ社とは、工場の管理・安全化に向けたパイロットプロジェクトを進め、マツダ社とは車両を守るためのPOCを実施している。

SmartAxiom社のシステム概要

業界注目のキーワード“システム異常”を予知「AIOps」を提供するUnifyPoint社

 絶対に壊れないシステム、故障しないシステムはない。常に動き続けているシステムがあるとしたら、システムの裏側で優秀なエンジニアが24時間365日で献身的に運用しているに違いない。しかし、いくら優秀なエンジニアでもミスは犯す。

「システム設計・構築のエラーの多くがヒューマンエラーなんだよ。」と打ち合わせの時に話をしてくれたのは、UnifyPoint社のFounder兼CEOのGeoffrey Mershonさん。IBM社の過去の調査レポートによると、調査に参加した企業の59%がヒューマンエラーによるシステムトラブルを経験したことがあると回答している。

 UnifyPoint社は、ヒューマンエラーを含むシステムの不具合を異常が発生する前に知らせてくれる今業界で注目のAIOpsを提供している。

 Geoffreyさんは、「アラート監視やパフォーマンス監視などのシステム監視ツールは30年以上前から導入されているが、複雑で柔軟性、拡張性が求められる現在のシステムではそれらは効果的ではない」という。

UnifyPoint社と初めて会ったのは2020年5月に開催されたTelecom Council社のバーチャルイベントだった。その時はStealth Mode(ステルスモード。製品やサービスを外部に公表せず、事業開始の準備を行うこと)でWebサイトもなく、数枚のスライドで説明を受けた。「AIOpsに関する情報が欲しい。」とグループ会社から要望をもらっていたが、手元にある情報が不十分であったため、その時は先に進めることはできなかった。それから5ヶ月経った10月、Geoffreyさんから「Beta版が完成してデモも見せられるから打ち合わせをしないか?」と連絡があった。

 Geoffreyさんの説明によると、UnifyPoint社のシステムは、システムの情報を収集するエージェントと、エージェントのインストール、システムの情報の分析、トリアージュ、対応要請を行う「Backend Node」で構成されている。ユーザーは、Backend Nodeをネットワーク内にインストールして、監視したいハードウェアのIPアドレスもしくはhostnameに関する情報を設定する。

 するとBackend Nodeが自動的にエージェントを対象のハードウェアにインストールして監視を始める。Backend Nodeは、単にパフォーマンスの低下を捕捉して警告を発するのではなく、独自のアルゴリズムで将来発生するであろう故障を予測して警告を発する。例えば、システムのAct-Sbyの切り替えが必要な異常を検知した時、システムの状態を分析して、ハードディスク、メモリー、通信ポートなどのハードウェアの不具合を予測し、ServiceNowなどのクラウド自動化ソリューションを通じてエンジニアに警告・交換要請を伝える。ServiceNowなどのツールを使うことで、故障の発生から修理・交換対応の履歴を時系列に管理できる。

 さらに、UnifyPoint社は新しい環境設定を有効にする前に確認するためのステージング環境も提供している。ステージング環境でテストを行うことで、本番環境でのエラーを削減するのが目的だ。

 UnifyPoint社のビジネスの柱は3つ。一つ目は、監視ソフトウェアのライセンス提供で費用は$18/machine(1マシンあたり約1900円)。二つ目はメンテナンスフィーで費用は$3/machine(1マシンあたり約300円)。三つ目は分析レポート。Machineは”ハードウェア”そのものだが、ブレードサーバーの場合は、ブレード数がMachine数になる。

 現在、Seed Round(シードラウンド、新ビジネスのスタートアップ期に行われる資金調達)として$1.5M(150万ドル、約1億5700万円)の資金調達を目指している。システム運用を効率化したい、UnifyPoint社の技術に興味がある、と思ったエンジニアは、デモを見れば、同社のシステムの良さがさらによく分かるはずだ。

上: UnifyPoint社のBefore(左)/After(右) 下: ServiceNowとの連携例

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