シリコンバレーのある都市とSmart Cityのプロジェクトについて議論している時、あるIoT系スタートアップから「一番重要なのはIoTデバイスのバッテリーだ。」ということに気づかされた。たしかに、IoTのゲートウェイは常時通電可能な環境に設置されるが、IoTタグやセンサーはバッテリーで駆動するものが多い。Shoof社もAssett Tracking(アセット管理)技術に加えて、10年近くバッテリー交換が不要な仕組みを開発していた。
Jeeva社のCEOのScott Brightさんは、ビデオ会議で「我々が開発した革新的な無線通信方式のおかげで、Jeeva社のIoTタグの消費電力は、他社のIoTタグの消費電力の1/1,000なんだよ」と教えてくれた。Scottさんは「2010年ごろは、無線通信、コンピューティング、センシングのそれぞれがバランスよく電力を消費していたが、最近は無線通信にかかる電力がほとんどになっている。Jeeva社は無線通信にかかる電力を抑えることで長寿命なIoTタグを開発した」と続けた。
Jeeva社のIoTシステムは、「Endpoint」と呼ばれるIoTタグ、「Companion」と呼ばれるゲートウェイで構成されている。このゲートウェイがBLEでスマートフォンと通信し、Wi-FiやEthernetでクラウドと通信する。
ゲートウェイとEndpointの無線通信方式もユニークだ。EndpointからCompanionへの通信は標準的なプロトコルで通信し、CompanionからEndpointへの通信はJeeva社の独自プロトコルで通信する。しかもCompanionからの信号を受信したEndpointは、他のCompanionに反射させる。「この反射が省電力の秘密なんだよ。」とScottさんは言う。
1台のCompanionのカバレッジは半径200メールで、1台のCompanionで約65,000のEndpointを管理できる。通信速度は理論上最高で1,00kbpsだそうだ。こんなに高性能にも関わらず、Jeeva社の心臓部のICチップは指紋の渦程度の大きさであることも驚きだ。
Jeeva社がターゲットとしている市場はいくつかあるが、優先度が高いのは、物流と資産管理だそうだ。特に物流においては、コールドチェーンと呼ばれる冷蔵が必要な商品の輸送に注目している。コールドチェーンは、温度管理やトラッキングなどのソリューションを提案するStartupが多く誕生している注目の分野だ。
Jeeva社は評価キットを販売していて、Walmart(ウォルマート)社、Amazon社、P&G社、Google社、NASA、NSF(National Science Foundation、アメリカ国立科学財団)などがPoCを実施している。
Jeeva社はUniversity of Washington(ワシントン大学)の研究室からスピンアウトして2015年に設立されたスタートアップで、これまでに4M(400万ドル、約4.2億円)の資金を調達している。同社は認可待ち、認可済みを合わせて24の特許を生み出している。Jeeva社は2019年にScottさんをCEOとして迎え入れ、さらなる成長を目指している。
以前、無給電のIoTタグを開発しているスタートアップを紹介したが、Scottさんは「その会社のIoTタグは電波が多く発生している場所でないと電力が給電されないし、カバレッジも狭いので、私たちの製品の方が、実用性がある。少なくとも彼らの技術は、コールドチェーンソリューションとしては使えないと思うよ」と自身の考えを披露してくれた。
Jeeva社のCompanionは、LTEなどの携帯網、Wi-Fi、Zigbeeなどにも対応していて、MNO/MVNOパートナーも探している。ScottさんにあるMVNOサービスを紹介したところ興味を持ってくれた。
左:Jeeva社のPoCキット、右: Jeevs社の心臓

Jeeva社の通信概要
