シリコンバレーのスタートアップは、米国で成功を収めたあと、ヨーロッパ、日本、アジアにビジネスを拡大する。日本の商社なども優秀なスタートアップのサービスを積極的に導入している。
そんな時、一番困るのが”言葉の壁”だ。よくあるパターンとしては、お客様に見えるところは日本語化するが、ダッシュボードやエンジニア向けのサイトは英語のままというもの。
「以前、米国のスタートアップのサービスを日本に導入する際、技術に関する詳細情報の確認、お客様対応のために数え切れないほど米国の本社メンバーと打ち合わせしましたよ。その時の経験を活かしてWOVN社の今がある。」というのはWOVN社のCOOの上森久之さん。
WOVN社は「世界中の人が、すべてのデータに、母国語でアクセスできるようにする」をコンセプトに2014年3月に設立された日本のスタートアップ。”Webサイトの翻訳なんていいんじゃない。”という人もいると思うが、WOVN社のターゲットは、企業が提供するプロフェッショナルなWebサイトで、ターゲットが異なる。
上森さんによると、同社のプラットフォームは、単なる機械翻訳ではなく、オリジナルのWebサイトから適切に言葉を抽出し、NLP(Natural Language Processing; 自然言語処理)で抜き出した言葉を分析することによって、オリジナルのWebサイトに近い形でWebサイトを多言語化できるそうだ。
打ち合わせの中で上森さんは、英語のWebサイトを日本語に翻訳するデモを見せてくれた。デモでは、URLを指定し、いくつか情報を入力してしばらくすると、Webサイトの翻訳が終わる。この時点でかなりの部分の翻訳は完了しているが、製品名、ブランドなどは違和感が残るものがあるため、同社のダッシュボードから製品名、ブランドなどを補正する。
一般的にはWebサイトの修正はWebデザイナーに依頼する必要があるが、WOVN社のツールを使えば、マーケット担当者がチームスタッフと打ち合わせをしながら補正できる。この機能も、ユーザーフィードバックを迅速に反映させることが重要とされている現在のマーケティング手法に合致する。さらに補正された内容は学習し、次回の翻訳時には自動的に翻訳される。
同社の技術はグローバル市場で活躍する企業にも認められている。WOVN社のWeb多言語化ソリューションは、2018年にIPOしたサブスクリプションビジネスを支援するソフトウェアを提供するZuora社に採用された。Zuora社以外にも、日本の大企業がWOVN社のWeb多言語化ソリューションを採用している。
例えば、日本の商社が海外サービスを日本展開する際にWOVN社のソリューション(WOVN.io)を利用したり、訪日外国人向けのWebサイトの提供、多国籍化が進む企業の社内情報共有のために利用されている。そして、日本企業が海外展開する際のツールとしてもWOVN社のサービスを利用している。
課金モデルは翻訳するページに依存するそうだが、料金を決定する要素はそれだけではないようなので、WOVN社に相談するのが良いだろう。

左: WOVN.ioの翻訳プロセス
右上: WOVN社の翻訳方法
右下: 同社によるWebサイト多言語化ソリューション比較