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都市間の輸送を自動化、ローカル5Gを加速させるスタートアップが登場
2020.08.20

シリコンバレー通信第30回

都市間の輸送を自動化、ローカル5Gを加速させるスタートアップが登場

著者 小室 智昭

ローカル5Gを加速させるスタートアップ達

5Gで遅れをとった日本は6Gに向けて動き始めるようだが、「5Gもまだなのに6Gなんて」というのが、率直なところだろう。COVID-19でContactless(非接触)、業務効率化・自動化の実現に迫られている工場、倉庫、インフラなどの業界において、スマートファクトリー、IIoTを加速させるためには、5Gは必要不可欠だ。ここでは、ローカル5Gを実現するソリューションを提供する有望な2社のスタートアップを紹介する。

 

(1) Beam Semiconductor社

 Beam Semiconductor社(以降、Beam社)は、P2P Communication(ピア・ツー・ピア通信)に注目したローカル5Gを開発しているスタートアップ。同社は、有線ブロードバンドを無線の5G信号に変換する技術を開発している。

 同社の5G信号は、24GHz、28GHz、60GHzの周波数帯に対応している。同社のテストによると、60GHzに対応したプロトタイプの場合、通信可能な範囲は50m〜400mで、通信速度は10Gbps以上だったそうだ。

 Beam社のCEOのStacy Josephさんは、「他社のローカル5G製品は導入時に複雑な設定や調整が必要だが、我が社の製品は機器を設置して電源を入れてブロードバンド回線をつなげるだけ。機器が届いたら、自分たちだけで設置できるから新型コロナ渦でもPOCはできるよ。」と提案してくれた。今年、他社製品のPOCを予定していたが、新型コロナの影響でエンジニアが派遣できないという理由でPOCを断念したことがあったが、同社の製品であれば、そのような心配はしなくてもよさそうだ。

 Stacyさんによると、現在、第二世代の機器の開発が今年中に完了ので、そのあとであればPOCを実施できるようだ。

 Beam社はイスラエル発のスタートアップで、同国のレホボト市とカナダのトロント市に本社を持つ。「近いうちにトロント市の本社をシリコンバレーに移転することを考えている。」とStacyさんは話す。

 Beam社がSeed Round(シードラウンド、新ビジネスのスタートアップ期に行われる資金調達)で調達した資金は$6M(600万ドル、約6億3千万円)。シリコンバレー以外にも日本の投資家からも資金を調達している。Beams社のWebサイトには東京駅周辺の写真が掲載されているが、それは同社が2019年の冬に日本の投資家のリードで同社の初号機を用いて東京駅周辺でPOCを実施したからだ。

 同社は、2021年Q2を目標に$9M(900万ドル、約9億5千万円)のSeries Aの調達を目指している。

Beams社のPrototype(28GHz)

 

(2) Lunewave社

 Lunewave社は既存のセンサーの課題を解決するユニークなアンテナを開発しているスタートアップ。ユニークなのはアイデアだけでなく、アンテナの制作方法もユニークだ。

 同社のアンテナはLuneburg Lens(ルネベルグレンズ)という球体型のアンテナなのだが、それを3D プリンターを使って制作している。Luneburg Lensは全方向の電波に対して均一にキャッチできるという特性がある。Lunewave社のCEO&Co-FounderのJohn Xinさんによると、「Luneburg Lensを用いたセンサーは、自動運転自動車に実装するセンサーを少なくできる。巷で開発されている自動運転自動車には少なくとも16個以上のセンサーが実装されている。

 しかし、我々のアンテナを搭載したセンサーを用いると、4個のセンサーで自動運転自動車に必要な情報を得ることができる。」と話をしてくれた。当然のことだが、管理する部材の数が減れば、故障率やコストを削減できるため、OEM、Tier 1 Supplier(ティアワンサプライヤー、一次サプライヤーのこと)にとってはメリットがある。

 Lunewave社にとって、自動車業界は優先度が高い市場だが、自動車業界だけが同社が狙う市場ではない。同社が開発しているLuneburg Lensは5Gアンテナとしても利用することができる。Johnさんは、「私たちが開発しているX Band Lensは、5Gアンテナとして一般的に利用されているフェーズドアレイアンテナの9台分の能力を発揮できる。」と説明してくれた。Lunewave社は5Gネットワークの範囲内に同社のLuneburg Lensを複数設置し、エンドユーザーに近い200 ヤード(約182メートル)程度のカバレッジでのビジネス展開を想定しているようだが、同社の技術を活用したケーススタディは無限にあるに違いない。

 ちなみに、Silicon ValleyにInnovation Centerを構える日系のTier1 Supplier(ティアワンサプライヤー、一次部品メーカー)がNDAを交わしてPoCを実施している。

左: Lunewave社のアンテナを搭載したセンサー(左)
右上: 既存の自動運転車のセンサーのカバレッジ
右下: Lunewave社の技術を利用した場合のセンサーのカバレッジ

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