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セキュリティ、スマートシティ、クラウドの分野で活躍が期待されるスタートアップたち
2020.06.22

シリコンバレー通信第29回

セキュリティ、スマートシティ、クラウドの分野で活躍が期待されるスタートアップたち

著者 小室 智昭

4.クラウド時代の保険サービス

 クラウドサービスを利用する機会が増えていると思う。しかし、システムに故障はつきもので、普段は問題なくても、突然システムダウンしてしまうこともある。また、システムは稼働していても、アクセスが集中してレスポンスが悪くなることもある。業務での利用、個人での利用を問わず、そのような経験をしたことがある人は少なくないだろう。クラウドプロバイダーはユーザーに一定の品質を保証するSLA(Service Level Agreement)を明示しているが、システムダウンによる損害の保証まではしてくれない。

 保険業界では、被害状況を確認せずに保険料を支払う保険のことをParametric insurance(パラメトリック保険)というそうだが、Parametric insuranceをヒントにして社名を決めたというParametrix社は、Parametric insuranceと同じコンセプトでクラウドサービス向けの保険サービスを提供している。

 同社のサービスの仕組みはシンプルだ。Parametrix社は、AWS、Microsoft Azure、Google CloudなどのクラウドプロバイダーのAPIを通じてクラウドサービスのパフォーマンスを監視している。そして、クラウドサービスのパフォーマンスが基準以下になると自動的に保険金を保険契約者に支払う。

 契約手順も簡単で、ユーザーがクラウドサービスの申し込みをする際に、Parametrix社のサービスを利用するかどうか、クラウドプロバイダーの申し込みページのチェックボックスをチェックするだけ。同社はパフォーマンスを測定するためのAPIを公開しているクラウドサービスであれば、どんなクラウドサービスとも連携できる。Parametrix社は明確な料金表はなく、今のところ、その都度交渉して利益配分を決めているようだ。

 クラウドサービスの安心安全を謳うための新サービスを検討しているようであれば、Parametrix社のサービスは検討の価値があると思う。

Parametrix社のDashboard

5.センサーでCurbside Parking(路上駐車)をスマートにするAppyway社

 都心に車で出かけた時の一番の悩みは駐車場だろう。誰もが駐車スペースを探して同じ場所をグルグルと走った経験があるはず。

 Appyway社はそんな課題を解決してくれるスタートアップだ。会社概要を最初に見たときは、「Curbside Parking(路上駐車)のデータを集めて地図上に表示するだけだよね。」と思ったが、同社のソリューションはそれだけではなかった。Appyway社はインテリジェントでスマートなパーキングプラットフォームで、地図、ペイメント、利用データを組み合わせて、コネクテッドカーのニーズに対応したパワフルなAPIも提供している。

 AppyWay社は駐車スペースのデータも利用するが、リアルタイム性に欠けるため、LiDAR(光センサー技術)とカメラを合わせて利用する。最初に、Appyway社はLiDARとカメラから得られたデータを元にMachine Lernig(機械学習)を用いて道路、歩道、自動車などの物体を認識し、誤差3cmの3D Mapを作成する。そして、その3D Mapからスマートフォンアプリに路上駐車場の情報を表示する。

 そう言う意味では、Appyway社のコア技術はセンサーデータから高い精度で3D Mapを作る技術で、Curbside Parkingアプリは同社のプラットフォームを活用した一つの事例に過ぎない。

 同社はHarrogate Borough Council(イギリス・ハロゲイト)、 Calderdale Council(イギリス・カルダーデール)、 Dundee City Council(イギリス・ダンディー)、 Portsmouth City Council(イギリス・ポーツマス)と提携して、街に設置されたLiDAR、カメラのデータを用いて都市部をスマートにするプロジェクトを進めている。Appyway社のCEO&FounderのDan Hubertさんは「それ故、Appyway社はMobilityだけでなく、GovTech(ガブテック、政府や地方自治体など、行政の利便性を⾼めるテクノロジー)としても注目されているんだよ。」と話をしてくれた。

 そのプロジェクトでは、リアルタイムに駐車場情報を提供することも目的の一つとなっていて、センサーデータを遅延なく処理するために、Appyway社は5Gに大きな期待を寄せている。現在は、ロンドン・ヒースロー空港、Continental社、FCA(Fiat Chrysler Automotive)社などのヨーロッパの主要の交通機関、自動車メーカー、自動車関連メーカーと都市のスマート化について話をしていると言う。

 さらに、Appyway社の技術の高さが認められ、ロンドン市の6つの地域からの要望を受けて駐車場データの分析を行ったLeica Geosystems社は、データ分析プラットフォームとしてAppyway社を採用した。その後Leica Geosystems社は、Appyway社のサポート受けて、ブライトン市、ケンブリッジ市、オックスフォード市、ポーツマス市、コベントリー市、そしてヨーロッパの主要都市へと駐車場データ分析の市場を広げていったそうだ。米国市場においても、ある都市からもスマートシティ計画について相談が来ているという。

 Appyway社は、今は固定されたセンサーの情報を利用しているが、固定されたセンサーだとエリアの展開に時間とコストがかかってしまう。そこでAppyway社は、より多くのセンサーデータを取得するために、DashCam(ドライブレコーダー)に注目した。

 DashCamは日本のみならず世界的に成長分野で、常に走行データが録画されているにもかかわらず、車上荒らし抑止か交通事後が起きた時の証拠と個人的には利用用途が限られているように見える。そこで、Appyway社はDashcamの映像を元に3D Mappingを制作することで、展開エリアの拡大とリアルタイム性の向上を目指す。例えば、配送業社や公共交通機関と提携すれば、より多くのデータを入手できるため、提供範囲は一気に拡大するはずだ。

 駐車場情報データについては、APDS(Alliance for Parking Data Standards) という非営利団体が立ち上がり、駐車場データの世界標準を目指して活動している。APDSには、Appyway社や2019年に日系商社が投資したQ-Park社などの企業が参加していて、今後Industry 4.0のような大きな波になるかもしれない。

 Appyway社のスマートフォンアプリは利用できるCurbside Parkingの情報を表示してくれる。同社のスマートフォンアプリは、Mobile決済の機能も実装しているため、ユーザーは、これまでのように道路脇に設置された料金メーターで支払いをする必要もない。COVID-19の観点では、誰が触ったのか分からない料金メーターを触らなくても良いので、Appyway社のスマートフォンアプリは、衛生面でも安心してCurbside Parkingの利用を可能としている。ただ、Curbside Parkingの空きスペースまでのナビゲーション機能は実装されておらず、現在開発中だそうだ。

 スマートフォンアプリという観点では、Appyway社はAPIを公開しているため、同社のプラットフォームと連携した駐車場アプリが登場する日も遠くないだろう。

 Appyway社は、UK(イギリス)市場でのリーダー的ポジションの獲得とグローバル展開のために€20M(20万ユーロ、約24億円)のSeries Bを調達中だ。スマートフォンアプリについては改善点があるかもしれないが、UK在住、もしくはUKを訪れる機会があれば、是非試して欲しい。

上: Appyway社が作成した3D Map(左: Parking情報重畳後、右: Parking情報畳重前) 左下: Appyway社が提供する価値、右下: Appyway社が作成したCurbside Parking地図

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