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新ビジネス「コロナテック」に挑むスタートアップが登場
2020.05.01

シリコンバレー通信第27回

新ビジネス「コロナテック」に挑むスタートアップが登場

著者 小室 智昭

4.Health checkできるオールインワンのスマートフォンカバー

 COVID-19の影響で、自主的に毎日検温している人もいるだろう。できれば、ついでに体脂肪、血中の酸素量、呼気中のアルコール比率といったデータも計りたいと思っている人もいるかもしれない。

 Moscase社は、そういう人の希望をかなえてくれるスマートフォンカバーを開発している。Moscase社は2018年にベルギー人の起業家の Akos Baloghさんがドイツ人の Chanteva Schochさんなどと立ち上げたスタートアップ。同社の特許取得済みのスマートフォンカバーは、心拍数、体脂肪率、呼気分析、ストレス分析などの健康状態を測定できるようになっている。呼気を分析するための化学センサーは、アルコール比率以外に、栄養状態も分析できるため、将来はダイエットや運動をしている人に、食事のコンサルタントサービスを提供したいと考えているようだ。

 ビジネスモデルは、医療機関、スポーツ関連企業へのB2Bモデルと家電量販店、携帯電話事業者を介したB2B2Cモデル。B2Bモデルについては、Equinox社やPeloton社などと話をしているそうだ。また、B2B2Cモデルについては、Apple社、AT&T社、Verizon社、Amazon社などとのパートナーリングを目指していると言う。

 一般消費者への課金は、基本サービスは無料で提供し、医療機関への相談、Yogaやリラクゼーションなどのフィットネスサービスは有料で提供するFreemium(フリーミアム、基本サービスは無料で、高度な機能を利用する際には課金が必要になる)モデルを同社は検討している。Akosさんによると、端末のターゲットプライスは$129(約1万3千円)で、月額利用料のターゲットプライスは$6.99(約750円)を想定しているそうだ。

 現在の同社の製品は、iPhone 11にフィットするデザインとなっている。そこで、「端末のデザインは毎年変わるが、どうやってキャッチアップするの?」と質問をしたところ、「端末のデザインが毎年変わるのは分かっていて、端末の価格はそれを想定したものになっている。」とAkosさんは答えてくれた。

 同社はこれまでに$2.6M(260万ドル、約2億8千万円)の資金を調達し、そのうちの$1M(100万ドル、約1億円)は自己資本だと言う。「絶対に必要な端末だから絶対に成功する。$1Mの自己資金は惜しくない。」とAkosさんは笑って答えてくれた。現在、大量生産、市場展開のために$5M(530万ドル、約5億4千万円)の資金を調達している。投資家への支援依頼をしているなかで、投資家からは、ハードウェアよりもソフトウェアの開発に力を入れるようにアドバイスされているようだ。

Moscase社のスマートフォンカバー型Health Checkデバイス (左上: 測定できる項目、右上: 組み込まれているセンサー 左下: 製品の外観、右下: 同社による他社製品比較)

 Akosさんによると、同社は2020年ごろに製品の販売を開始、2021年にFDA(Food and Drug Administration, アメリカ食品医薬品局)承認の取得を目指す。

 市場の優先順位は、アメリカ、カナダ、イギリス、アジアの順番で、日系企業とはまだ一部の企業しか話をしていないそうだ。「まずは、Apple Storeで取り扱ってもらえるようにしたい。」とAkosさんは語ってくれた。

  同社のFDA取得目標の2021年に向けて、連携に向けて今から準備を始めてみてはどうだろうか。

5.検査結果を忠実に再現できる3Dモデル

 ここで紹介するスタートアップも、COVID-19対策に有効なソリューションを提供している。COVID-19のおかげで日本でも遠隔診断が本格的に始まろうとしているが、遠隔診断先進国のアメリカではさらに先を行っている。

 ImmersiveTouch社はCT(Computed Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)の画像に忠実な3Dモデルを制作するサービスを提供している。

 同社は3Dモデルの製作依頼を受けると、CT画像の場合は全自動で数秒で3Dモデルを制作し、MRI画像の場合はエンジニアが編集する必要があるが、数時間で3Dモデルを制作する。制作した3DモデルはAWS経由でPCにダウンロードできるようになっている。エンドユーザーはダウンロードした3Dモデルを専用アプリで読み込むことにより、VR Glass(VRゴーグル)で見られるようになる。

 ImmersiveTouch社は、高品質の3Dモデルをリアルタイムで360度操作できるようになっているため、PCとVR Glassを有線ケーブルで接続できるOclus Riftを推奨端末に指定している。

 主なユースケースは、内科医、外科医による病巣の確認、外科医による手術前の予行演習だという。米国の医療は主治医制となっているため、主治医や専門業社がCTやMRIを撮影すると、撮影した画像をDVDに焼いて患者に渡す。患者はそのDVDを持って、実際に手術をする病院や専門医に持っていって、詳しく診てもらうことになる。

 たまに、「使っているシステムが違うからもう一度撮影するね。」ということはあるが、医療データは個人の判断で医療機関と共有してもいいことになっている。病院が変わるたびに何度もCTやMRIを撮影し直す必要がないので、患者にとっては時間とお金を撮影することができる。医者にとってもCT、MRIに忠実な3Dモデルを利用することで、誤診や医療ミスのリスクを避けることができる。

 現在、ImmersiveTouch社のサービスは、同社の本社がある米国のシカゴ市近郊のほかフィラデルフィア市近郊、ロサンゼルス市近郊、フロリダ州、テキサス州などの50の病院の150人の外科医が利用しているそうだ。

 同社は、米国での市場拡大に取り組みながら、オーストラリア、中国、日本進出への道を探っている。オーストラリアについては販売パートナーとビジネスを始め、日本市場においては、2019年6月に東京で開催された医療系カンファレンスに出展し、数社の医療関係者と話をしているという。

 ビジネスモデルの話をすると、「今は3Dモデルごとの課金で、3Dモデルの制作費として1モデル当たり$1,000(約10万円)を課金しているが、将来は年間サブスクリプションモデルも提供していきたい。」とImmersiveTouch社のCOOのJay Banerjeeさんは将来のビジネス拡大に意欲をみせていた。

左: 機能一覧、右上: Dynamic Cutting画面、右下: 専用装置と連携した手術トレーニング

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