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【CES2020 #3】自動運転車が“後付け”で作れるDIYキットが登場
2020.02.06

シリコンバレー通信第25回

【CES2020 #3】自動運転車が“後付け”で作れるDIYキットが登場

著者 小室 智昭

3.成長を期待する技術

 CTAが予測した分野意外にも成長が期待される製品、サービスがCES 2020に溢れていた。ここでは、そんな製品、サービスの一部を紹介する。

(1)Impossible Foods社

 植物由来の原料から作った食品「疑似肉(人工肉)」を開発するImpossible Foods社(連載18回目で紹介)はCES 2019に続き2度目のCES参加だ。2019年はMedia向けのイベントにしか参加していなかったため、一般参加社向けに披露したのはCES 2020が初めてとなる。

 Impossible Foods社は、Media Dayで、豚肉風味の疑似肉の「Impossible Pork」を開発し、Impossible Porkを使った「Impossible Sausage」を発表した。Sausage(ソーセージ)といっても、ハンバーガーのパテのような形をしている。

 また、Impossible Foods社は、Impossible Sausageを使ったクロワッサンサンドイッチを1月末から期間限定で、ジョージア州サバンナ市、ミシガン州ランシング市、イリノイ州スプリングフィールド市、ニューメキシコ州アルバカーキ市、アラバマ州モンゴメリー市の5都市にある139のBurger King社の店舗でテストマーケティングすることを発表した。

 Media Dayではその他に、焼売や中華まん用のImpossible Porkを発表していた。Media Dayの会場にFounder&CEOのPatrick O. Brownさんが登場すると、”次はベーコンを作ってくれ”と会場から要望されていた。

 同社はさらに、Central Plazaにプレハブ小屋を建てて、抽選会と試食会を行なっていた。Impossible Foods社は抽選会に参加するために並んでいる参加者に疑似肉を使ったSlider(小さめのバーガー)を配っていた。社員の話では、CES 2020の期間中に25,000個のSliderを配るという。そのため、プレハブ小屋の裏に設けられたキッチンには、大きな鉄板を二つ並べてパテとパンを焼き、その隣でSliderを箱に詰める作業を繰り返していた。

 火力が少し弱かったのか、パテがパリッと焼けていなかったが、Sliderを食べた人に、Impossible Foods社の疑似肉の味と食感は伝わったと思う。

(2)スズキ社

「AGL」という、The Linux Foundationが2012年に立ち上げた、自動車メーカー・サプライヤー・技術系企業が共同でLinux-based Open Software Platform(リナックスベースのオープンソースソフトウェア)を開発するためのプロジェクトがある。当初は10社で始まったAGLだが、今では世界中の自動車関連企業、半導体メーカーなどがAGLに参加し、企業会員も年々増えている。

 

 AGLはCES 2020でもWestgateにブースを設け、AGL参加企業が開発成果を展示していた。各社とも興味深い活動をされているが、ここではスズキ社の活動について紹介する。

 私の記憶違いでなければ、スズキ社はCES 2019のAGLに出典していなかったと思う。スズキ社はCES 2020でLinuxベースのインフォメーションパネルのプロトタイプを展示していた。説明員によると「新たな運転体験を提供するためのアプリ開発にはOSが欠かせなくなってきている。いくつかのOSがあるが、Open SourceなLinux-basedなOSに可能性を感じて研究・開発を進めている。」と話をしてくれた。

 スズキ社のプロトタイプのデモはとても分かりやすく、”エンジンのスターターボタンをオンにするとインフォメーションパネルが表示される”というもの。さらに説明員は「エンジンをかけてインフォメーションパネルが表示されるまでの時間は、既存のシステムと比べると長い。まだまだ改良が必要だ。」と話をしてくれた。

(3)Comma.ai社

 Comma.ai社は、世界で初めてiPhoneをハックしたと言われているGeorge Hotzさんが立ち上げたスタートアップで、誰でも簡単な工事で、自分の自動車を自動運転車に改造できるDIYキット「OpenPilot」を開発している。Georgeさんは、かつてはCEOを務めていたが、今は Comma.ai社のR&Dのトップとして開発をリードしている。

 Comma.ai社の商用化までの道のりは平坦なものではなかった。Comma.ai社は、2016年8月に、OpenPiliotの前身である「Comma One」の開発に成功し、数ヶ月後からShipping(発送)を始めると発表した。Comma One は、iPhone程度の値段で自分の車が自動運転車になるということで話題となり、筆者もPre-Order(予約注文)をした。

 ところが、Comma One発売直前に、米国運輸省の一部門のNHTSA(National Highway and Traffic Safety Administration)から、開発や安全性に関する試験データの提供を求める横槍が入ったため、自動運転機能を封印し、CAN(車載機器間の通信規格、Controller Area Network)のログが取れるOBD-IIデバイスだけを提供した。

 そして、3年以上の歳月を経て、Comma Oneから進化したOpenPilotがベールを脱ぐ。OpenPilotが提供している機能は、道路のレーンのセンターをキープする機能のみで、対応しているのは、14メーカーの98車種。GeorgeさんからCEOを引き継いだRiccardo Biasiniさんは「保証はできないが、Comma.aiコミュニティメンバーがテストをしているので、リストにない自動車でも使えるかもしれない。」と話をしていて、実際に使える車種はもう少しあるだろう。

 自動運転の機能については、前方を走行する自動車の追尾と、車間距離の確保と、車線変更。車線変更は、ウィンカーを出してハンドルを軽く切ると、運転手に変わって行なってくれるようだ。

 OpenPilotはComma.ai社のWebサイトから購入できるので、この記事を読んで興味を持った人は購入してみてはどうだろうか。

(4) 自動車のドライブスルーMRI

 連載第20回でも報告したが、CES 2020には”自動車のMRI”というべきサービスを展示しているスタートアップが複数社いた。CES 2020に出展していたスタートアップのシステム構成は、自動車を撮影するために複数のカメラを設置したセンサー、撮影した画像をAI、MLを駆使して診断するためのクラウドというもの。
 システム利用者は、ドライブスルーのように自動車を25mph程度の速度(約40km/時)でセンサーを通り抜けるだけ。すぐに細かい傷も見逃すことなく分析結果を確認できる。

 センサーの形はアーチ型、ドーム型、パネル型とまちまちだが、基本的なサービス内容はほぼ同じ。そのため、あるスタートアップは、自動車の底部も撮影できるセンサーを提供したり、クラウド基盤は共通化で専用ハードウェアがなくても車体の傷を分析できるようにスマートフォンアプリを提供するなどして差別化を測っている。

 各スタートアップは「レンタカーサービス事業者、流通業者、保険事業者などがターゲットだ」と異口同音にいう。あるスタートアップは傷の分析に留まらず、過去の修理データをベースにした見積もりサービスも提供している。そういう意味では、この分野のスタートアップのゴールは”システム売り”だけでなく、”業界を巻き込んだエコシステムの構築”なのかもしれない。

次のページ

4.CES 2020まとめ

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