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AWSの新サービスが次々に発表「re: Invent 2019」レポート
2020.01.06

シリコンバレー通信第22回

AWSの新サービスが次々に発表「re: Invent 2019」レポート

著者 小室 智昭

2.CEO Keynote

 AWS社のCEOのAndy Jassyさんの基調講演は、毎年、二日目の朝早くから行われる。今年も朝の8時開始にもかかわらず、多くの参加者が会場に押し寄せた。会場が空いてAndyさんが登場する1時間あまりの間、DJがアップテンポな音楽を流して会場を盛り上げる。これもAWS re:Inventでの見慣れた光景だ。

 基調講演の内容は、例年通りに最新情報の共有、パートナーからのユースケースの共有、そして新サービスの発表だ。ミュージシャンが関連するキーワードを含む楽曲を披露してから、そのキーワードを引用して最新情報を共有するスタイルは今年も健在だ。Andyさんがお気に入りのキーワードは、昨年は”Don’t stop me now.”だったが、今年は”I’m having such a good time, I don’t want to stop at all.”のようだ。ちなみにいずれもQueenの楽曲からの引用だ。

 今年のAndyさんのKeynoteでのUse Caseは、どこかで聞いたことがあるもので目新しさはなかったが、新機能の発表には目を見張るものが多かった。以下が、AWS re:Invent 2019で発表された新サービスだ。

 

(1)Instances

(1-1) M6g, R6G, C6g instances for EC2

 M6g, R6G, C6gはEC2の新しいインスタンス(仮想サーバー)タイプで、AWS Graviton2プロセッサーを採用したARMベースのインスタンス。既存のx86ベースのインスタンスと比べてコストパフォーマンスが40%改善されるなど、様々な性能が向上されている。

(1-2) Inf1 Instances for EC2

 Inf1は、AWS inferentialプロセッサーを搭載したInterferece(機械学習の推論)向けのインスタンスで、他のクラウドサービスと比べて最も早く、最もコストパフォーマンスが良いインスタンス。既存のG4インスタンスと比べると、低遅延、3倍のスループット、40%のコストパフォーマンスの改善を実現している。2020年初めには、Amazon ECSAmazon EKSAmazon SageMakerも対応する。

(2)Containers

(2-1) Amazon Fargate for Amazon EKS

 Amazon Fargateは、Amazon EKS向けのサーバーレスなKubernetes(コンテナ型の仮想化環境を構築・運用自動化するためのプラットフォーム)をセキュアに利用するための信頼性と拡張性を考慮したサービス。ユーザーは、サーバー、クラスターを気にすることなく、Kubernetesを利用することができる。

(3)Storage

(3-1) Amazon S3 access Points

 Amazon S3 access Pointsは、Amazon S3に保管されている共有データを拡張性が必要なアプリケーションが利用する場合、ユーザーが自由に設定したホスト名、アクセスポリシー、アクセス権限などで、簡単にアクセス管理ができるようにしたサービス。

(4)Amazon Redshift

(4-1) Amazon Redshift RA3 Instances with Managed Storage

 Amazon Redshift RA3 Instancesは、SSDの容量を超えそうな場合、頻繁に利用されないデータをAmazon S3に自動的に転送するためのマネージドストレージ機能を実装したインスタンス。

(4-2) AQUA(Advanced Query Accelerator) for Amazon Redshift

 AQUA(Advanced Query Accelerator)は、ハードウェアベースの高速化キャッシュで、他のクラウドサービスと比べてクエリーのパフォーマンスを最大で10倍高速化させることができるサービス。

(5)Data Base

(5-1) UltraWarm for Amazon Elasticsearch Service

 UltraWarmは、Amazon Elasticsearch Serviceで利用できる新たなアーキテクチャーで、頻繁にアクセスされないデータをS3に自動的に転送するサービス。同じ量のデータを保存する場合、最大で90%のコストを節約できる。現在、Preview版として提供されている。

(5-2) Amazon Managed Apache Cassandra Service

 Amazon Managed Apache Cassandra Serviceは、DynamoDBへの移行が難しいユーザーをターゲットにした、拡張性と高い可用性を兼ね備えたCassandra 3.11に対応したManaged Cassandraサービス。

(6)SageMaker/Machine Learning

(6-1) SageMaker Studio

 SageMaker Studioは、ML(Machine Learning、機械学習)のために、WebベースのIDEでトレーニング、チューニング、実装を簡単に実施できるサービス。今回発表されたSageMaker Notebooks、SageMaker Experiments、SageMaker Debugger、SageMaker Model Monitor、SageMaker Autopilotと連携し、MLのDevOpsの中心的な開発ツールとなっている。

(6-2) SageMaker Notebooks

 SageMaker Notebooksは、事前の環境設定がなくてもワンクリックでML開発に必要な環境を構築するサービス。例えば、当初の予想よりも大きな環境が必要になった場合、自動的に必要とするサイズの環境を用意してコンテンツやデータを新しい環境に移行し、古い環境は削除してくれる。

(6-3) SageMaker Experiments

 SageMaker Experimentsは文字通り、MLの試験、記録、整理、ステップごとのトレーニング、チューニングを自動的に行ってくれるサービス。複雑な入力データ、全てのパラメーター、設定値を記憶し、SageMaker Studioでいつでも確認できる。また、リアルタイムに試験状況を把握することや過去の試験結果の確認もできる。

(6-4) SageMaker Debugger

 SageMaker Debuggerは、MLモデルの精度を向上するためのトレーニングの試験、モデルのプロファイリングができるサービスで、SageMakerの標準機能として提供される。デバグの結果は、SageMaker Studioで確認できる。

(6-5) SageMaker Model Monitor

 MLモデルは不変ではなく、市場や環境の変化で更新が求められる。SageMaker Model Monitorは、MLモデルのConcept Drift(前提条件の変化)を監視し、Concept Driftを検知した場合、新たなMLモデルを自動的に生成・実装するサービス。モニターリングの状況はSageMaker Studioで確認できる。

(6-6) SageMaker Autopilot

 SageMaker Autopilotは、ユーザーがトレーニング用のデータをAWSに入力するだけで、最適なMLモデルを提案してくれるサービス。データが入力されると、データの分析、最適なアルゴリズムの選択、最大で50の異なるモデルでのトレーニングを行い、最適なMLモデルを提案してくれる。SageMaker Studioが、SageMaker Autopilotが提案するMLモデルを正確性の順に表示してくれるため、ユーザーは、SageMaker Studioを見ながら自分にあったMLモデルを採用できる。

(7) Machine Learning Service

(7-1) Amazon Fraud Detector

 Amazon Fraud Detectorは、MLの経験がなくてもデータ偽装サービスを検知できるサービス。企業ユーザーはデータをAWSに転送するだけで、AWSがデータの調査、付加価値化、検知モデルのトレーニング、検知モデルの最適化、検知モデルの試験、検知モデルの構築を行った上で、専用のAPIを提供してくれる。企業ユーザーは、オンライン申し込み、オンラインショッピングの際にそのAPIを利用することで、Fraud Score(詐欺の確率)を知ることができる。現在、Preview版として提供されている。

(7-2) Amazon CodeGuru

 Amazon CodeGuruは、MLを用いたコードレビューサービス。Amazon CodeGuruは開発者が開発したコードを自動的にレビューし、無駄が多いラインを発見してくれる。さらに、コーディングの基準の提案や不具合があるコードに対して、人が読める形でコメントしてくれる。Amazon社の約80,000のアプリケーションで利用されていて、Amazon Prime Dayのアプリケーションでは、CPUの利用率が325%改善し、39%のコストが節約されたそうだ。現在、Preview版として提供されている。

(7-3) Contact Lens for Amazon Connect

 Contact Lens for Amazon Connectは、Amazon Connect向けのMLを活用したコンタクトセンター分析サービスで、Amazon Connectからワンクリックで申し込むめる。自動的にユーザーとエージェントとの会話のテキスト化、会話の内容および長い沈黙に基づいた感情分析をほぼリアルタイムに可視化できる。現在、Preview版として提供されている。

(7-4) Amazon Kendra

 Amazon Kendraは、ML、NLP(Natural Language Processing、自然言語処理)を用いたエンタープライズ向けのコンテンツサーチサービス。

 ユーザーは、AWS社のコンソールからAmazon Kendraにアクセスし、SharepointboxなどのクラウドストレージサービスとAmazon S3と同期させる。Amazon Kendraは保存されているドキュメントやオプションでユーザーが設定したキーワードからSearch Indexを作成する。これだけで、クラウドに散乱している企業データをSingle Window (ワンストップ)で管理できる。

 作成したSearch Indexのリンクはどこにでもコピー&ペーストできるため、企業のKnowledgeサイトに簡単に実装できる。現在、Preview版として提供されている。

 

 

(8)Braking Through Barriers

 企業が抱えるクラウド導入バリアを解決するためのソリューションとして以下の3つの新機能が発表された。

(8-1) AWS Outposts: On-premise workloads and resources

 AWS Outpostsは、ユーザーのデータセンター(on-Premise)にAWS社の物理ハードウェアを設置して、AWSを拡張するためのサービス。発表時に利用できるサービスは、Amazon EC2、Amazon EBS、Amazon ECS、Amazon EKS、Amazon EMR、Amazon VPC。Amazon S3は2020年前半に提供予定だそうだ。AWS Outpostsは、どの地域でも他のAWSサービスとシームレスに連携することができる。

(8-2) AWS Local Zones: Single-digit Latency in a particular geographic area

 AWS Local Zonesは、定遅延なインフラが必要なユーザー向けに都市部のデータセンターに設置したAWSのインフラを利用できるサービス。現在は、ロサンゼルス市でAmazon EC2、Amazon EBS、Amazon FSx、Amazon VPC、Amazon ELBをInvitation Only(招待制)で提供している。今後、Amazon RDSもしばらくすると利用できるようにするとともに、提供エリアも順次拡大していくという。

(8-3) AWS Wavelength: Mobile Users and Connected devices

 AWS Wavelengthは、モバイル機器、Connected Device(インターネット接続デバイス)をターゲットにした、5Gに対応したAWS社のネットワークサービス。AWS社の最初の5G パートナーはVerizon社。今後、Verizon社とのパートナーシップのもとで、順次KDDI社、SK Telecom社、Vodafone社などのサービスが利用できるようになる。

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3.自動車業界 x AWS

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