国内メーカーにとっては厳しい状況を生んだ背景としてはもう1つ、行政による値引き規制によって低価格スマートフォンの需要が高まっていることも考えられる。なぜなら低価格なスマートフォンは、得られる利益が少なく、たくさん販売しなければ利益を確保できないからだ。
実際、低価格スマートフォンに強みを持つのは世界的に高いシェアを持つメーカー、具体的には世界最大手のサムスン電子や、ファーウェイ・テクノロジーズ、オッポ、シャオミなどの中国メーカーに限られる。それゆえ中国メーカーは、先の法改正を機として日本市場に次々とコストパフォーマンスの高いスマートフォンを投入し、価格競争力の高さで日本でのシェア拡大を図ろうとしている。
一方国内メーカーは、先にも触れた通り、世界での販売台数シェアが非常に小さく販路も少ない。それゆえ低価格スマートフォンの需要が高まるほど市場で不利になる可能性が高く、中国メーカーが携帯電話会社からの信頼を得るようになれば、いよいよ存亡の危機に立たされる可能性が出てくるだろう。
だが実は、スマートフォンで苦戦しているのは日本メーカーだけに限ったことではなく、世界的に見てもシェアの小さいメーカーは軒並み苦戦している。日本でも一世を風靡したHTCやエイスーステック・コンピューター、そしてLGエレクトロニクスなどもスマートフォン事業の不振に苦しんでいるし、中国でもかつて勢いがあったいくつかの企業が、撤退・吸収されるなどして再編が進んでいる状況なのだ。
その背景にあるのは、やはり世界的にスマートフォンが行き渡って飽和傾向にあることと、それに伴い低価格なスマートフォンへのニーズが高まっていることにある。それゆえスマートフォンもパソコンと同様に、シェアの高い5社程度がスケールメリットによる価格競争力を武器として世界的に販売を拡大する一方、それ以外のメーカーは不振で撤退するか、ニッチな市場に活路を見出すかのいずれかの選択を迫られると考えられる。