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コールセンターのサービスレベル達成には「スケジュール遵守率」が鍵
2020.01.28

AI時代を生き抜く「本物」のコールセンター運営法第13回

コールセンターのサービスレベル達成には「スケジュール遵守率」が鍵

著者 熊澤 伸宏

スケジュール遵守を阻む原因と対策

 エージェントがスケジュールを遵守しない(できない)のは、おもに、以下に示す4つの原因からなります。それぞれについて、その対策と合わせて考察します。

 一つ目が、コールセンターの管理者の無為無策なマネジメントです。

 どんなにち密で完ぺきな計画を作ったとしても、実際にそれが目論見通りに機能しなければ意味がありません。

 エージェントのスケジュールには、業務量の正確な予測や最適なエージェント数の算出など、コールセンターの“計画”が集約されており、スーパーバイザーなどの現場の管理者には、それをしっかりと機能させる責務があります。

 そのためには、顧客コンタクトのプラットフォームなどの管理ツールや「MBWA」(Management By Walking Around; スーパーバイザーなどの管理者がエージェントの周囲を歩いて回りながら、サポートやコーチングをおこなうこと)などにより、エージェントの勤務状況をリアルタイムで確認・把握していなければなりません。

 さらに、その状況は、「リソース使用状況レポート」(エージェントが、いつ、何を、どれだけの時間おこなったかをデータ化したレポート)に客観的なデータとして反映され、管理者はそのデータを常にチェックして、即時に必要な対策を講じます。

 このような、現場の管理者の第一の責務と言える「リアルタイム・マネジメント」の手を抜き、成り行き任せで問題のもぐら叩きに終始しているようでは、せっかくの“計画”が機能するはずもありません。

 二つ目の原因は、「間際のコール」です。

 間際のコールとは、文字通り、顧客応対業務のスケジュールが終了する間際に応答したコールのことで、休憩やミーティングなど次のスケジュールに喰い込んでしまうケースです。

 特に、次のスケジュールが休憩時間の場合、後ろへずれ込ませると、その次のスケジュールに人員不足が生じてしまいます。しかし、エージェントの健康やモチベーションを考えると、安易に休憩時間を短縮することもできません。

 その対策のひとつとして、「チーム単位のブロック制休憩時間」は、この問題の緩和に有効です。

 これは、個人単位で休憩時間をスケジュールするのでなく、チーム単位で休憩取得の時間枠のみスケジュールし、その時間枠内で、スーパーバイザーがその時々の状況に合わせて個々のエージェントに休憩を指示するというものですが、その運用が容易でないのも事実です。

 このように、間際のコールは、例外なくすべてのコールセンターに発生する頭の痛い問題ですが、なかなか有効な対策を取ることができず、ほとんどの場合、仕方がないとあきらめるだけで、その場限りの一貫性のない対処に留まっています。

 しかし、少なくとも、間際のコールが発生したらどうするかというルールやガイドラインをあらかじめ定めておくことは絶対に必要です。そうでないと、スケジュール上のさまざまな混乱やエージェントの不平を生んでしまうからです。

 スケジュール遵守を阻む三つ目の原因は、ITツール使用時の待機時間です。

 PC、電話プラットフォーム、CRM、メール、チャット、社内業務システム、各種アプリなど、エージェントが使用するITツールは増える一方です。

 最近では、セキュリティの厳格化も加わって、例えば、始業時のログインに思わぬ時間がかかることがあります。そのため、コールセンターの営業時間開始後、しばらくの時間、エージェントの不足が生じ、サービスレベルの悪化を招いてしまうのです。

 そのために、シングルサインオンなど、システム上の対策強化はもちろんですが、「スライディングシフト」(エージェントの小刻みな時差出勤制度)など、人事制度上のケアも必要です。

 というのは、例えば営業開始時のログイン待機時間をカバーするために、始業前の準備時間を強制すると、それは労働時間となり、時間外賃金が発生するからです。

 以上の3つの原因は、いずれもエージェントの責に依らないものばかりです。

 一つ目の原因として述べた無為無策のマネジメントの場合、スケジュールの非遵守はすべてエージェント個人の責任として済まされることが多いのですが、決してそうではないことを理解しなければなりません。

 もちろん、エージェント個人の意識も重要です。それが四つ目の原因です。

 この問題が深刻な欧米では、業界を挙げて「Power of One」というコンセプトを掲げ、入社前の採用面接時から、スケジュール遵守の重要性について徹底的にトレーニングをおこないます。

 欧米ほどではないにしても、日本でも、すべてのコールセンターがエージェントの遅刻・欠勤などに悩まされています。

 にもかかわらず、本稿の冒頭に述べた精神論に頼って、この手の教育が十分でないのも確かです。

 日本にも、「Power of One」と同様の「One for All, All for One」(1人はみんなのために、みんなは1つの目的のために)というラグビー精神由来のコンセプトがあります。ラグビー人気にあやかるわけではありませんが、コールセンターのチームワーク醸成にも通じる考えであることから、このコンセプトを掲げて、スケジュール遵守に対するトレーニングの強化を図るのも良いでしょう。

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