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独り歩きした数値目標が、企業を破壊する
2020.03.30

海外論文に学ぶビジネスのコツ第22回

独り歩きした数値目標が、企業を破壊する

著者 前野 智子

戦略と数値目標の混同を防ぐ3つの方法

どうしたら数値目標の独り歩きを防げるのか、論文では3つの方法が提示されています。

まず1つ目は「戦略を策定する場に、実行側も参加させる」ことです。戦略の抽象度が高く、数値目標が単純明快であればあるほど、数値目標だけが意識されがちになります。戦略と数値目標を乖離させないためには、経営幹部やマネージャー(戦略を従業員に説明し、数値目標を実行するポジションにある人)を、戦略の策定プロセスに関与させることが有効だといいます。彼らが戦略の成り立ちや数値目標との関連性を深く理解することで、数値目標の独り歩きの抑止に繋がります。

 2つ目は「数値目標とインセンティブを直接連動させない」ことです。ウェルズ・ファーゴではクロスセリングの件数が、従業員のインセンティブ報酬に直接結びついていました。不正後の調査によって、金銭的モチベーションが刺激されると、数値目標が強く意識され、その反動として戦略が軽視されることが明らかになりました。この反省と共に、現在ウェルズ・ファーゴではインセンティブ制度を廃止し、あらゆる売上目標すらも無くしています。

 3つ目は「複数の数値目標を併用する」ことです。ウェルズ・ファーゴのように、ある1つの数値目標だけが強く意識されていると、それが戦略を代替しているかような錯覚が生まれがちです。複数の数値目標を併用することで、1つの指標では戦略を捉えきれないという事実が強調されます。それによって、数値目標イコール戦略というようなすり替えも起きにくくなるといいます。

 抽象的な戦略を遂行するためには、具体的な業績指標に落とし込んで進めていくことが不可欠です。しかし指標の使い方を間違うと、戦略自体を台無しにする危険性があります。数値目標が独り歩きして戦略とすり替わっていないか、常に目を光らせておくことが必要なのです。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年3月25日)のものです。

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