Bizコンパス

独り歩きした数値目標が、企業を破壊する
2020.03.30

海外論文に学ぶビジネスのコツ第22回

独り歩きした数値目標が、企業を破壊する

著者 前野 智子

戦略と整合しない指標は、誤った達成方法を誘発する

 ウェルズ・ファーゴの不正は極端な例ですが、多くの企業で戦略と数値目標のすり替えは日常的に起きているといいます。

 たとえばある企業が「顧客に喜んでもらうこと」を理念に掲げ、顧客満足度調査のスコアを使ってその進捗を測るとします。すると従業員は顧客に素晴らしいサービスを提供する方法よりも、顧客満足度調査のスコアを最大化する戦略を考え始めることがわかっています。その結果、顧客に「10以外は失敗と見なされるので10をつけてください」と迫ったり、しつこく調査への協力を求めるメールやポップアップウィンドウを設計したり、といったことが起こります。戦略と指標を取り違えた結果、顧客を喜ばせることが理念にもかかわらず、顧客満足度を下げる行動を取ってしまうのです。

 戦略と指標に不整合がある場合、指標の独り歩きは特に大きな弊害をもたらします。たとえば「高品質な製品を作る」ことを戦略目標に掲げた場合、その達成状況を測る指標には何通りもの種類があります。

 もし「この部品の直径は10㎜、誤差は0.0001㎜以内」といった非常に細かい品質基準で判断する場合には、問題は起きにくいと思われます。しかし、「返品数の少なさ」を指標にした場合、製品の品質とはかけ離れたところで、返品を防ぐ方法が編み出される危険性があります。たとえば、本来返品になるべきものを修理や変更で収めたり、返品するための手続きを煩雑化するといったやり方です。いずれも高品質な製品を作るという戦略目標からは、大きく乖離しています。

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