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独り歩きした数値目標が、企業を破壊する
2020.03.30

海外論文に学ぶビジネスのコツ第22回

独り歩きした数値目標が、企業を破壊する

著者 前野 智子

 理念や戦略が組織の目指すものであるならば、数値目標はそれを実現するための材料となります。理念や戦略だけでは抽象的過ぎるため、その進捗や成果を計測するための何らかの指標を設定し、具体的な行動に落とし込んでいくのです。

 しかし、数値目標がいつの間にか目的そのものにすり替わり、企業生命を危うくするような大惨事を招く例が後を絶ちません。

 ハーバードビジネスレビュー誌掲載の論文“Don’t Let Metrics Undermine Your Business”では、米大手金融機関Wells Fargo(ウェルズ・ファーゴ)の失敗例を取り上げ、数値目標がどのようにして独り歩きし、企業を危険に陥れるのか、そのメカニズムを分析しています。

数値目標が理念や戦略にすり替わって暴走する

 ウェルズ・ファーゴでは「顧客と長期的な関係を築くこと」を戦略として掲げており、それを実現する手段のひとつとして「クロスセリング」(顧客に関連商品も併せて勧めるセールス手法)に重点的に取り組んでいました。

 しかし、このクロスセリングの指標、つまり「顧客1人に何個の金融商品を販売できているか」を重視するあまり、大規模な不祥事が発生します。多くの従業員が、顧客の同意無く普通預金口座を開設したり、クレジットカードを発行したりしていたのです。

 不正件数は350万件を数え、5000人以上が懲戒解雇されました。2016年の不祥事発覚後、ウェルズ・ファーゴは当局からの制裁金や損害賠償に数十億ドルを支払っており、未だにその負の遺産に苦しんでいます。

 なぜウェルズ・ファーゴの従業員たちはこのような不正に手を染めてしまったのか、それは「クロスセリングの数値を上げること」こそが、戦略であり目的になっていたからだといいます。現場では顧客の口座数が日々熱心に集計され、従業員に世帯当たりの口座数目標が課せられていました。

 さらに当時のCEOは“Eight is great”をスローガンに掲げ、「顧客当たり8つの金融商品を保有してもらうことが我々のゴールだ」と繰り返していたことが明らかになっています。

 こうしてクロスセリングが手段から戦略そのものにすり替わった結果、従業員はクロスセリング件数の最大化だけを目指すようになりました。それがエスカレートした結果、法律に反してでも不正口座を開設するという行為が蔓延していきました。本来ウェルズ・ファーゴの戦略「顧客と長期的な関係を築くこと」を実現する手段であったはずの数値目標が、皮肉にも多くの顧客を失わせることになったのです。

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