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オープンなオフィスでは、逆に心理的な“壁”が作られる
2020.03.03

海外論文に学ぶビジネスのコツ第21回

オープンなオフィスでは、逆に心理的な“壁”が作られる

著者 前野 智子

 オフィス設計のトレンドは、仕切りのある半個室型の固定席が並ぶ空間から、フリーアドレス制やオープンスペースの充実など、より開放的でフレキシブルな方向へ変化してきました。多くの場合、その目的は社員同士の交流やコラボレーションを活性化させることでした。

 しかしオープンなオフィス設計が、逆に社員同士のコミュニケーション量を減らす弊害を持つことが、最近の研究結果によって明らかになっています。組織行動を専門とするハーバード・ビジネススクールのイーサン・バーンスタイン准教授らは、論文“The Truth About Open Offices”の中で「常にコミュニケーションできるオフィス環境が、かえって心理的壁を作る」と分析しています。

対面コミュニケーションを阻む心理的な「第4の壁」

 イーサン氏らは2つの大企業の本社を対象に、半個室型オフィスからオープン型オフィスに移行する前後で、社員同士のコミュニケーションがどのように変化したか、数か月に渡る調査を行いました。様々なセンサーやデジタルデータを使って社員の行動を追跡したところ、オープン型オフィスに移行した後、社員同士の対面でのやりとりが約70%も減少していることがわかりました。そしてその減少分を埋めるように、デジタル上でのやり取りが急増していました。

 筆者らはこの理由を、18世紀フランスの哲学者ドゥニ・ディドロ(Denis Diderot)の言葉を用いて解説しています。ディドロ彼は「役者が演技に集中するためには、観客と自分との間に分厚い壁があると想像するべき」と説き、実際には存在しないその壁を「第4の壁」と呼びました。その心理的壁を築くことによって、役者はコントロールできないもの(観客)から自分を切り離し、コントロールできるもの(芝居の場面)に集中することができるというのです。

 同様に、シュートを打つ時のバスケットボール選手も、ゴールの裏にいるファンの動きに気を取られないよう、第4の壁を作っているといいます。この壁は、公衆の面前ながら、心理的に隔離された、プライベートな空間を作り出します。観客が多くなればなるほど、この壁の重要性が増すのです。

 オープンなオフィスでは、周囲からの視線を遮る物がないため、自分の仕事に集中する手段として、第4の壁が作られるようになります。そして同じ条件下で働いている同僚も、その壁を尊重します。オープンなスペースであればあるほど、誰かが仕事に集中していたら、周りはそれを邪魔してはいけない、という第4の壁の規範が素早く定着する、とイーサン氏らは分析します。その結果として、オープンなオフィスでは、対面のコミュニケーション量が大幅に減少することになるのです。

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