林氏は、企業がデータを活用して新たなビジネスを生み出すために大切なのは「データイネーブルメント」の発想だと話します。
「データイネーブルメントとは、データをガバナンス的な側面から捉えるのではなく、ビジネスにおける付加価値創出に活用しようとする取り組みです。場合によっては、社外と連携してデータを活用することで、業界全体の最適化などにもつながります。
ただし、そういったデータ活用には、収集・集積したデータを利用目的に応じて適切に処理を行い、精度の高いデータクレンジングや分析を行うことが不可欠です」
たとえば、携帯電話端末から分かる位置情報データは生ログのままではほぼビジネス的な価値を持ちませんが、地域や時間などでデータを処理、分析することで人が密集しやすい場所や時間帯が分かるようになれば、コロナでの3密を注意喚起するための貴重なデータになります。
「このようにデータそのもののビジネス価値を高めることを『データ・バリューチェーン』と呼びますが、DXを推進するための企業内のデータ活用において、重要な取り組みになります。
各企業によるデータ・バリューチェーンが広がっていくと、データを媒介としたオープンイノベーションなど新たなビジネスで社内外がつながるきっかけになり、データドリブンのエコシステムができていきます。
データドリブンのエコシステムとは、行政が公開している公共の情報や橋や道路のセンサーから得られるインフラデータ、小売店による購買データや工場の設備稼働データといった多種多様なデータを、集約・統合・蓄積し、そのデータからアプリケーションやAI系のサービスを開発し、そしてインテグレータがインフラを含めた環境の構築と運用を行う総括的な取り組みによって、消費者に価値を提供するという形です。
業界横断でさまざまなデータが蓄積、活用されるエコシステムが構築されることで、社会課題の解決など公共性の高い取り組みにつなげていくことが可能になります。AIやIoTといったデジタルテクノロジーを活用した新たな街作りである、スマートシティも実現に近づいていきます」(林氏)