DXを推進しようとしている多くの企業で、事業部門を悩ましているのが「組織やITシステムのサイロ化」です。
たとえば、購買情報などの社内データを部門横断で分析し、新たなビジネス展開のヒントとして活用しようとしても、「データがそれぞれの部門に散在している」「必要なデータがどこにあるのかわからない」「フォーマットや形式が異なりそのままでは利用できない」といった理由から、データを十分に活用できていないケースもあります。
そういった現状に対して、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)のエバンジェリスト林雅之氏は前回記事「データからビジネスを生むデータイネーブルメント」の中で「ビジネスのDXは『データの活用』が土台。データを活用できなければDXは絶対に進まない」と説きました。
前回記事で実施した「DX推進における自社課題」についての読者アンケートでは、1位「組織やITシステムのサイロ化(38%)」、2位「適切な人材のアサイン方法(28%)」、3位「経営層の理解が得られない(22%)」、4位「優先すべきIT投資の判断(12%)」という結果でした(2020/11/20時点)。
今回は、最も回答の多かった「組織やITシステムのサイロ化」をどう解決すればよいのかについて、林氏が解説します。
マルチクラウドで、システムのサイロ化が加速している!?
組織やITシステムがサイロ化することで、部門間でのデータ活用ができないことの弊害を、林氏は改めて強調します。

NTTコミュニケーションズ株式会社
エバンジェリスト 林雅之
NTT Comデータプラットフォームサービス部にて広報、マーケティング等を担当。国際大学GLOCOM客員研究員。総務省 AIネットワーク社会推進会議 構成員(2016-2018)。経済産業省 データ流通及びデータプラットフォームのグローバル化に関する研究会 招聘委員(2018)。一般社団法人クラウド利用促進機構 総合アドバイザーなども務め、クラウドを中心にDXの推進に寄与する活動に積極的に取り組んでいる。主な著書は『イラスト図解式この一冊で全部わかるクラウドの基本』(SBクリエイティブ)、『スマートマシン 機械が考える時代』(洋泉社)など。企業が「With/Afterコロナ」で検討すべきIT投資とは?など、Bizコンパスへの定期的な寄稿も行っている。
「ITシステムがサイロ化していると、部門の業務プロセスごとにシステムが最適化されてしまいます。その結果、アプリケーションなどから得られたデータが、他部門のシステムで活用できないケースが生まれます。
これが積み重なると、企業の資産ともいえる社内データがそれぞれの部門のみでしか蓄積しませんし、システムによって異なるデータフォーマットになっているとデータの統合も容易ではなくなります。
これらは従来、オンプレミスのレガシーシステムでの課題でしたが、昨今では、クラウドもサイロ化の要因となっています。各部門がシステムに合わせて独自でクラウドサービスを併用した結果、システムがバラバラになってしまうというケースです。こうなると、データの統合や活用だけでなく、セキュリティを担保することも難しくなります」
