データのロケーションを最適化することによって「自社の競争力に関わるデータ」や「ITを活用した新規ビジネスに関連するデータ」がどこにあるのかがすぐにわかるようになります。しかし、それだけでは新たなビジネス創出のためにデータ活用するシステム環境としては不十分です。林氏はその次の段階として、収集したデータを適切に処理し、蓄積したデータを可視化・分析する「データマネジメントの流れが意識された」環境を整えることが重要だといいます。
「データマネジメントの一連のフローにおいて、ポイントとなるのが『自動化』です。システムがサイロ化していることで、必要なデータがどこにあるのかを各部門に問い合わせをしたり、手に入れたデータが自部門のデータとそのまま統合できないため、加工に時間を費やすといったケースがあります。しかしそれでは、データを集めることが目的となり、データを分析して新たな発見をするという営みに時間を使うことができません。
DXの推進を目指す事業部門において大切なのは、データを活用してマーケットの動きなどをリアルタイムに分析することで、ビジネスのヒントを見つけることにリソースを集中できる仕組みです」
林氏は、そのためには事業部門が情報システム部門と連携して、APIなどを用いてデータ連携を自動化したり、RPAやDigital Workerを利用して処理を自動化するといった「仕組みづくり」も視野に入れるべきだといいます。
「収集したデータを処理する際、たとえばAI-OCRを用いて紙文書として送られてきたデータを電子化する、あるいは翻訳や必要なデータの抽出といった処理において、AIを積極的に活用していくといったことです。

データマネジメントの流れ
データの収集や処理を自動化することで、分析に必要なデータが自動的にデータベースに蓄積されるようになれば、これまでサイロ化の課題となっていたデータの加工や統合も人手を介さずにできるようになりますし、事業部門では必要なデータを必要な時に取り出して分析をすることができるようになります。一歩進んだデータ活用が見えてくるはずです」(林氏)
後編では、読者アンケートで2番目に回答の多かった、DX推進における「適切な人材のアサイン方法」について、林氏が解説します。