米国カーネギーメロン大学(CMU)のソフトウェア工学研究所(SEI)が、「The Critical Role of Positive Incentives for Reducing Insider Threats(インサイダー脅威を減らすための積極的なインセンティブの重要な役割)」の研究結果として、内部者(従業員)が、組織(雇用主)の利益に合致した行動を取りつつ、本質的なインセンティブを得るための3つの方法を特定した。
【1】従業員の仕事へのエンゲージメント
◦ 従業員が仕事に強い関心を持ち、没頭する程度のこと。
◦ 従業員の強みに基づく管理と専門能力の開発は、従業員の仕事に対するエンゲージメントを高めることができる。また、従業員の強みに基づいた管理は、キャリア形成やパフォーマン向上に大きく貢献するものである。
【2】組織的なサポートの認識
◦ 従業員の組織への貢献を評価し、福祉を大切にし、社会感情的欲求を支援し、公正に扱われることを従業員に実感させること。
◦ 内部不正をする従業員の多くは、普段から組織的なサポートが得られていなかったことを強く感じている。
【3】職場でのつながり
◦ 従業員が働く相手を信頼し、親しみを感じ、やり取りしたいと思う程度のこと。
◦ チームビルディングやジョブローテーション等の実践により、従業員の対人関係の感覚を高めることができる。
この研究結果で得られた教訓は、「内部者に対する組織的なサポートを強化することで、内部不正を減らすことができること」である。特に、内部者が組織的なサポートを認識して、安心感を得ていることが重要であるとしている。
以上のように、内部不正の対策は「ネガティブなインセンティブ」として、さまざまな仕組みで防止することが期待できる。しかし、それ以上に、「ポジティブなインセンティブ」として、人間の行動原理に着目した 組織内の環境づくりも極めて有効なものとなることに注目していただきたい。