Bizコンパス

“空気”に縛られた会社を変える、3つの条件
2020.01.17

日本企業を動かしている「空気」の正体第2回

“空気”に縛られた会社を変える、3つの条件

著者 柴田 昌治

 日本の企業には、職務規定やルール、論理や理性ばかりではなく、 “空気”で動く側面が存在します。これを放置しておくと危険な状態を呼び起こします。混乱を避け、秩序を維持しようとする空気によって、経験済みのやり方を踏襲することをよしとする「前例主義」が組織に蔓延するからです。前例主義が当たり前になると、企業が進化と成長を遂げることは難しいでしょう。

 前編では、中身より表向きの体裁を重視する企業文化を「調整文化」と定義し、解説しました。後編では調整文化を克服するためのアプローチを紹介します。

 令和の時代を迎えた今もなお、日本企業には「思考停止」の調整文化が力を発揮しています。自分で考えて問題を解くよりも、既知の公式で手っ取り早く答えを出す無自覚な思考停止状態は、今の日本が抱える最も本質的な問題点です。

 日本企業は、どうすれば進化と成長を遂げられるのか? どうすれば挑戦する力を手にできるのか? それは、これまでの日本の教育で見逃されてきた「すぐには答えの出ない問い」に向き合い続けることで培われます。

 

組織ぐるみの思考停止は、「成長の原資」を溶かす

 調整文化というのは、組織の安定(混乱回避)を最優先する「組織第一」の価値観に根ざしています。それは組織が階層や役職に準ずる序列を重んじて「上」に従い、それぞれが“立場を守って”動くことを意味しています。立場を守ることの中には、与えられた立場で責任を果たすだけではなく、“分相応をわきまえ出過ぎたことをしない”他者の立場も守って互いに踏み込まない”といった、組織の安定のための不文律が潜んでいます。

 問題なのは、このような組織の混乱回避を第一とする調整文化が「絶対の基準」になってしまうことです。

 調整文化が絶対基準になることによって起こる致命的な問題が、企業における人的資本の脆弱化です。今のように複雑で不確実な時代の企業成長の原資となる「社員の考える力」が、調整文化のもとでは着実に奪われていくからです。

 調整文化が圧倒的に優位を保つ状態だと、組織の人間は、“挑戦を歓迎する”というタテマエとは裏腹に、「枠」からはみ出さないよう、空気を読み合って予定調和的に動きます。表向きの体裁を整えることを重視し、与えられた立場で予定どおりの結果に着地させていく「予定調和」の仕事には、自分で考えて改善したり創意工夫したりする必要はまずありません。リスクを避けて失点を出さないようにする前例踏襲は、手堅くはあるのですが、今までどおりのことをやるだけですから「思考停止」をもたらします。

 こうした日本企業に見られる組織人としての行動が、世界的に見れば異常行動であることに間違いはありません。結果として、日本の労働生産性は他の先進国と比べて異常に低いままで改善されず、調整文化に縛られた職場の空気は「過労死」という語を国際語にしてしまうのです。

 日本企業の社員は入社時から、終身雇用を前提に、この特殊な組織の条件(文化)に適応する人材として育てられています。このような、集団の考える力と知恵を塩漬けにしてしまう調整文化が日本の主要な企業を席巻している状況を放置したまま、明るい日本の将来を描くことはできないのです。

 これからの「知」を資本にしていく時代に求められるのは、挑戦文化の思考、つまり「事実・実態を大切にして問題を掘り下げる」ことで現状を見直し、企業の新陳代謝を促進する思考です。

 だとすれば、調整文化のそれは真逆の思考姿勢です。まずはそのことを自覚し、これまで軽視されてきた「考える力」を再び鍛えて回復させる必要があります。

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