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コンタクトセンターの人手不足は自業自得、その原因と対策を考える
2019.12.27

顧客接点の最前線第3回

コンタクトセンターの人手不足は自業自得、その原因と対策を考える

著者 熊澤 伸宏

まずは、正しいやり方で「基本」の徹底に努める

 ここからは、上述の内容を踏まえ、コンタクトセンターが成すべき課題や対策について見ていきます。

 まず何よりも、「自己流」「勘と経験」という旧態依然たるスタイルから脱却し、世界標準のコンタクトセンター・マネジメントの「基本」を学び、その実践に努めることが必要です。

 この場で、コンタクトセンター・マネジメントの「基本」のすべてを語ることはできませんが、人手不足対策として特に重要な、「リソース・プランニング」「スケジューリング」「エージェント・エンゲージメント」の3つについて、それぞれ具体例を挙げて考察します。

リソース・プランニング

 リソース・プランニングは、コールセンターのすべての活動の起点となる仕事です。「業務量の予測」と「エージェント数の算出」、「シュリンケージ」、「応答率」と「稼働率」について順に説明します。

 

(1) 「業務量の正確な予測」と「最適なエージェント数」の算出

 驚くべきは、「業務量の正確な予測」と「最適なエージェント数の算出」を“きちんと”やっていないコンタクトセンターが圧倒的多数派であることです。重要なのは、世界標準の科学的な手法を使って「正確」で「最適」であることですが、それができていないのです。仕事の量や必要な人数が曖昧なのですから、人手不足や人余りになるのも当然だと言えます。

 業務量の予測は、現在のところ世界中のコンタクトセンターに最も使われている「時系列分析」モデルを使用します。

 エージェント数の算出には、「アーランC式」(インバウンドコールやライブチャットの場合)、「ワークロード人数算出式」(メールやFAXの場合)、「DPH方式」(アウトバウンドコールの場合)といった世界標準の算出モデルを用います。

 

(2) 「シュリンケージ」を考慮しないとオペレーションは回らない

 エージェント数の算出や組織の編成を、「シュリンケージ」の要素を欠いておこなうコンタクトセンターが多く存在します。

 エージェントは、“本業”である顧客応対のほかに、トレーニング、ミーティング、休暇などに多くの時間(その時間を「シュリンケージ」と「呼びます)を費やしているため、それを加味して人数編成をしないと、現場のオペレーションが回りません。

 一般に、エージェントの勤務時間の25~35%がシュリンケージであり、最近では、「働き方改革」の影響で勤務時間が減る一方、有給休暇の取得が推進されるなどして、シュリンケージの割合が増加傾向にあります。

 エージェント数の算出に、これを加味しないということは、スタート時点から人数不足の状態であることを意味します。

 

(3) 「応答率」「稼働率」信仰から脱却する

 コンタクトセンターの“在り方”を決める根本指標は「サービスレベル」です。なぜなら、「アーランC式」によるエージェント数の計算をはじめ、コンタクトセンターのすべての活動において、提供するサービスや、必要なリソースの質や量を決める役割を担っているからです。

 ところが、圧倒的多数のコンタクトセンターが、諸外国にはその概念すらない「応答率」を、根拠なく最も重要な指標としています。まさに、国内コンタクトセンターが“ガラパゴス状態”であることを象徴する事象です。

 また、「稼働率」も大変な人気ですが、ホテルやエアラインの客室稼働率などと混同して、「稼働率は高ければ高いほど良い」と誤解しているコンタクトセンターが大変多いのも困りものです。

「稼働率」が上がると、サービスレベルや放棄率など、すべてのサービス指標が悪化します。エージェントはトイレに行く暇もなく受電に追われ、疲弊して燃え尽き、ついには退職に至ってしまいます。コンタクトセンターが自らブラック化を推進しているようなものです。

スケジューリング

 エージェントの「勤務スケジュール」は、職場としてのコンタクトセンターを選択する上で、最近では報酬と同等、あるいはそれ以上に重要な条件となっています。たとえば、「自分のライフスタイルに合わせて勤務時間を選択できる」「ストレスなく休日休暇を確実に取得できる」「勤務シフトや休暇の変更が柔軟かつ簡単にできる」といった、「働きやすさ」に対するニーズは高まる一方です。

 そのために欧米のコンタクトセンターでは、表2に示すような「スケジューリング・オプション」(スケジュールの柔軟性を高めるためのさまざまな選択肢)や、「エージェント・プリファランス」(エージェントの個人的なニーズをスケジュールに反映、また、エージェントがスケジュールの策定に参画)といった施策を実行し、エージェントの「働きがい」や「働きやすさ」の実現に工夫を凝らしています。

 すでに、欧米の一部のコンタクトセンターでは、エージェントが自宅に居ながらにして、自分のスマホを使って勤務シフトの申請や変更、あるいは同僚とのシフトの交換をするまでになっています。

 このように、管理者の専権事項であった「スケジューリング」は、管理者の手を離れ、エージェントが自ら策定・運用するようになるでしょう。そうしなければ、エージェントの支持を得られない=エージェントに選択されなくなってしまうからです。

 日本企業がこれらの施策を講じるためには、コンタクトセンター独自の制度設計が必要です。しかし、旧態依然とした硬直的な労働慣行や、社内外の伝統的な諸制度、さらには、社内のパワーバランスを最優先する組織風土などが、その大きな妨げとなっています。

表2:スケジューリング・オプションとエージェント・プリファランスの事例

エージェント・エンゲージメント

 エージェントは、「エンゲージする」ことで、「働きがい」を感じるようになります。

 エンゲージメントを日本語化するのは大変困難ですが、たとえば「組織に対して強い愛着を持ち、仕事に熱意を持っている状態」(米・ギャラップ社)などと定義されます。

 エンゲージすることは、同時に「働きやすさ」の促進にもつながり、意欲と誇りを持ったエージェントが、ますます高い成果を挙げるようになります。

 エンゲージしている状態を表す例えとして多く紹介されるのが、「サグラダファミリアの二人の石工」です。

 旅行者が、サグラダファミリアの二人に石工に何をしているか尋ねると、一人は不機嫌な表情で「この忌々しい石を切ってるだけだ」とぼやき、もう一人は満足そうな表情で「世界一美しい大聖堂を造っています」と誇らしげに答えました。

 コンタクトセンターのエージェントが、後者の石工のようにエンゲージするためには、「エンパワーメント」「モチベーション」「エンカレッジメント」「リコグニション」「リワード」「リテンション」といったキーワードに基づいたさまざまな施策を講じることで醸成されていきます。

 紙幅の都合で、詳しい説明は省きますが、それぞれの関係性のイメージ(全体像)と上記の各キーワードの定義を図1に、具体的な施策例を表3に示します。

図1:エージェント・エンゲージメントの全体像

表3:エージェントのエンゲージメント向上をサポートするアクションやツール

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