日本におけるIT担当者と、欧米におけるIT担当者には、業務の内容に大きな差があります。日本では、企業側とITベンダー側の間で“板挟み”となり、両者の落とし所を見つける姿がよく見られますが、欧米では全社的な業務改善の中核を担うのが一般的です。
前回の記事では、日本のIT担当者がこのような板挟み状態になる原因について詳しく触れましたが、今回はどのように板挟みから脱却するかをITIL4の内容に絡めて、深堀りしたいと思います。
そもそもITサービスの価値とは?
ITIL4ファンデーションの日本語試験、書籍が11月にリリースされたことにより、弊社の研修・セミナーを受講される方の関心が「新しいものを知りたい」ということから「具体的にどう活用するか」ということに移ってきています。いよいよ日本でも、実践レベルでITIL4が普及し始めていることを感じています。
しかし、せっかくITIL4を学んだとしても、仕事の中身が従来と変わらない“板挟み”では、意味がありません。
日本のIT担当者が、欧州のIT担当者のように業務改善の中核を担うためには、自分たちの提供しているITサービスの価値を明確にしなくてはなりません。
では、ITサービスの価値とはなんでしょうか?
これまでのITサービスマネジメントの視点では、利用者側の業務をサポートすることといういうことになるかと思います。しかし、それだけでは前述のような全社的な業務改革の中核になることはできません。
ITIL4では、サービスマネジメントをおこなうにあたって、汎用的、永続的に意識しなくてはならない「従うべき原則」を7つ定義しています。そのひとつに「価値に着目する」という原則があります。
ITIL4ファンデーション書籍の解説を読むと「組織が実施するすべての活動が、組織とその顧客およびその他の利害関係者にとっての価値に直接的または間接的にリンクしている必要がある」と書かれています。
ここで大事なポイントは「利害関係者にとっての価値」と言っていることです。つまり、直接的な利用者だけでなく、そこから影響をうける関係者すべてにとっての価値を考えなくてはならないということです。
少し話は変わりますが、「1/4インチのドリルが欲しいのではなく、1/4インチの穴が欲しいのである」という言葉があります。 これはマーケテイングの権威であるT.レビット博士が「近視眼的マーケティング」という有名な本の中で書いた言葉です。
つまり、ドリルを買いに行く人は、ドリルという道具を求めているのではなく、ドリルが開ける穴を求めているということです
このように広い視野を持って顧客が本来求めている価値を理解する必要があります。
ITサービスの価値を考える際にも、この視点は非常に大切かと思います。つまり、利用者が求めている本当のサービスはなにかをきちんと理解し、ITという形にとらわれるのではなく、利害関係者に対して自分たちが提供すべき本来の価値は何であるのか?を広い視野を持って考える必要があります。