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「Zoom」のセキュリティ(後編)使っても大丈夫か?
2020.09.03

今知っておきたいITセキュリティスキルワンランクアップ講座第24回

「Zoom」のセキュリティ(後編)使っても大丈夫か?

著者 北河 拓士

「Zoom」と中国政府とのつながりの疑惑

 「Zoom」はカリフォルニア州サンノゼに本社を置く米国企業ですが、創業者でCEOのEric Yuan氏が中国出身であることから中国政府との関係が一部で取り沙汰されています。2020年7月には、米上院のブルメンタル議員(民主党)とホーレー議員(共和党)が共同で「ZoomとTikTokについて中国政府との関わりを調査するよう」米司法省に書簡を送りました。

 現在のところ、中国政府とのつながりの疑惑が指摘されている事例は、暗号鍵が中国のサーバーから配布されていた件と、中国政府の要請に従って活動家のアカウントを停止した件の2件のみです。

 暗号鍵が中国のサーバーから配布されていた件に関しては、「中国の需要拡大に伴い急遽キャパシティを追加した時に設定を誤った。(前編を参照)」、中国政府の要請に従って活動家のアカウントを停止した件に関しては、「中国の法令を遵守するために必要な措置だったが、当時は特定の国からの接続をブロックする機能がなかった。(中編を参照)」としていずれの事例も誤りであったことを認めたうえで謝罪し、改善を行うとしています。

 2件の事例とも中国政府とのつながりがあるとするには根拠が乏しいですし、他に中国政府とのつながりがあることの具体的証拠が示されているわけではありません。

 Eric Yuan氏は、中国で生まれ、中国の大学を卒業した後、1997年に27歳で渡米し、Web会議システムのスタートアップ企業WebExに入社しました。WebExは2007年にCiscoに買収され、Yuan氏はCiscoのコラボレーションソフトウェア担当VP of Engineeringに就任します。その後2011年にCiscoを退社して「Zoom」を設立し、今日に至っています。また、2007年7月に米国籍を取得しています。

 「Zoom」は世界各国に21の事業所を置くグルーバル企業です。従業員の半数以上は米国を拠点としていますが、研究開発の拠点を米国と中国の両方に置いています。SEC(米証券取引委員会)に提出された年次報告書によると、中国で700名以上を雇用(2020年1月時点)し研究開発センターを運用しています。

 なお、「Microsoft Teams」を開発するMicrosoftや「Cisco WebEx Meetings」を開発するCiscoも「Zoom」と同様に中国で事業を展開し、中国にも研究開発拠点を置いています。(ただし、両社ともWeb会議システムの開発に中国拠点が関わっているかは不明)

 トランプ政権は、ファーウェイやTikTokなど中国のIT企業に対し、安全保証上の脅威があるとして米国市場から締め出しを行うなど非常に厳しい姿勢を見せています。今後、「Zoom」と中国政府とのつながりが事実であることが判明した場合は、米政府から何らかの制限を受ける可能性があり、そうなった場合には「Zoom」の収益の8割以上を占める米国市場において大きな打撃を受けるでしょう。

 「Zoom」はNASDAQ上場企業で、様々な開示義務やコンプライアンス遵守が求められています。Yuan氏以外の経営陣は米国人が多数を占めることから、Yuan氏の独断で法令を違反して中国政府の意向に沿うような意思決定ができるとは思えません。しかし、「Zoom」が研究開発拠点の1つを中国に置いていることには留意する必要があるでしょう。

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