森岡毅氏は2010年、赤字続きのユニバーサル・スタジオ・ジャパンの再建を託される形でユー・エス・ジェイに入社します。森岡氏の入社当時、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの年間集客数は730万人台にまで落ち込んでいました。そうした状況下に始まりながらも、森岡氏は着任した年から集客数を毎年100万人ずつ上昇させることに成功します。2015年度には、集客数は1390万人を記録し、東京ディズニーシーを追い抜いて、遂に世界第4位にまで上り詰めました。見事なV字回復を実現させたのです。
森岡氏のマーケティング手腕は、高等数学を用いた独自の統計学の手法を用いることで高く評価されています。緻密な現状分析の結果、東京ディズニーランドと比較した上でのUSJの弱点が判明します。顧客として30代後半世代と10代以下の子供の非常に少ないことが結論として導き出されたのです。
この結果から、森岡氏は子連れ家族を顧客として取り込むべく施策の打ち出しを始めます。すべて施策の源泉と戦略の核は、高度な分析力から生み出されたものでした。これにより単年度だけに収まらない継続的な改善を可能としました。このような緻密な分析力と、ここという場面で腹をくくって実行できる胆力こそが、彼の真骨頂です。
例えば柔道の一流選手は、誰もが切れ味鋭い得意技を持っています。井上康生なら内股、山下泰裕なら大外刈り、古賀稔彦なら背負い投げです。一流選手というものはすべての技に磨きをかけるよう、日々練習を続けているものですが、結局最後に勝負を決めるのは得意技です。
経営者にとっても、私たち個人にとってもそれぞれに性格や資質というものがあります。つまり得意技もそれぞれです。ビジネスマンにとってはコンピテンシー(高い業績をあげる人の行動特性)として企業の側から求められる能力ももちろん重要です。しかし、独自の強みを活かして結果を導き出すことこそが卓越者に共通していることなのです。このことを押さえておくことにも、大きな意味があるといえます。
次回は、「習慣4.マグマのごとく燃え上がる激しい情熱を持つ」、「習慣5.常識にとらわれず、常に正解を求める」、「習慣6.時に大勝負を仕掛け、逆境こそ進化の糧と心得る」、「習慣7.試行錯誤と工夫を惜しまない」を紹介します。