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マラソン「厚底シューズ」から見る“ゲームチェンジャー”になる方法
2020.02.27

小山宣宏の「勝利の裏にあるもの」第42回

マラソン「厚底シューズ」から見る“ゲームチェンジャー”になる方法

著者 小山宣宏

なぜナイキはマラソンに力を入れるのか?

 スポーツ用品市場で業界トップクラスの売上を誇るナイキは、現在、特にマラソンに力を入れている。

 世界のスポーツ用品市場は2005年から右肩上がりの成長を続けており、2018年時点の売上高はナイキ(およそ3兆9300億円)、アディダス(およそ2兆8600億円)で二分にしており、以下、アンダーアーマー(およそ55億円)、プーマ(およそ55億円)、アシックス(およそ40億円)と続く。(数字の出典は「Sports Business Magazine」より)

 中でもナイキは、1980年にアメリカのスポーツシューズのシェアで50%を超える一大企業へと成長している。1988年から広告キャンペーンで使用された「JUST DO IT.」というおなじみのフレーズは、アメリカの広告・マーケティング誌で、「20世紀で5本の指に入る名フレーズ」と称され、これを元にさまざまな地域や競技でシェアを伸ばした。

 一方で、ゴルフ用品事業からの撤退という挫折も味わった。世界的に有名なゴルフプレイヤーのタイガー・ウッズやロリー・マキロイと契約を交わしたものの、アメリカ市場の需要減少を食い止めることはできなかった。2016年5月にブランド売上高が前年比8%減少を示したことで、撤退することとなった。

 その後、ナイキはマラソンシューズ市場に注力。2017年に「厚さは速さだ」をキャッチコピーとして「厚底シューズ」第一モデルを発表した。2018年2月の東京マラソンでは、このシューズを用いた設楽が2時間6分11秒と当時の日本新記録を樹立。設楽は報奨金として1億円を獲得した。

 その後、第二モデルが登場すると、同年10月に大迫がシカゴマラソンで2時間5分50秒の日本新記録を達成した。勢いはこれにとどまらず、現行のヴェイパーフライネクストが第三モデルとして2019年に登場すると、同年9月の東京オリンピックマラソン代表男子選考会では、中村匠吾(富士通)、服部勇馬(トヨタ自動車)、設楽を含む上位10人中8人が、このシューズを使用した。

 さらに今年の1月に開催された箱根駅伝では、出場選手210人のうち、177人がヴェイパーフライネクストを使用。これは全体の84.3%に上る数字だ。結果、13人が区間新記録をマークしたが、そのうち12人がこのシューズを履いていた。

 日本の陸上競技界には、元々「長距離走には薄底シューズ」という常識があった。しかし、この事実を見る限り、厚底シューズはマラソン界において“ゲームチェンジャー”になったといっても過言ではないだろう。

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