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元ヤクルト・橋上秀樹氏が語る、若手を「潰す」指導と「伸ばす」指導の違い
2020.01.23

小山宣宏の「勝利の裏にあるもの」第41回

元ヤクルト・橋上秀樹氏が語る、若手を「潰す」指導と「伸ばす」指導の違い

著者 小山宣宏

ヤクルトの村上宗隆が新人王を獲るまでに至った指導法

 コーチが若い選手を育成する上で心がけなければならないこととは何か。その答えは2つある。

 1つは「相手と信頼関係を築くこと」。もう1つは、「何も言わず、遠くからジッと見守ること」である。

 後者の例で成功したのが昨年、セ・リーグの新人王に輝いたヤクルトの村上宗隆選手である。

 熊本の九州学院高校出身の村上は、2017年のドラフトで3球団競合の末、ヤクルトに1位指名された。身長188センチ、体重95キロという恵まれた体の右投げ左打ち。それに加えて、天性ともいえる並外れたスイングスピードを武器に、将来はヤクルトの、あるいは球界を代表するスラッガーになると期待された逸材だ。

 1年目となる18年のシーズンは、村上はそのほとんどを二軍で過ごした。しかしながら、シーズン終盤の9月には一軍で初打席初ホームランを記録するなど、力の片鱗は見せていた。その年のオフに行われたフェニックスリーグ(宮崎県で開催される秋季リーグ戦)では好成績を残したこともあり、当時一軍の小川淳司監督は、私を含めた一、二軍のコーチ陣を前にこう宣言した。

「村上にあれこれ指導するのは止めて、黙って見守るようにしてほしい」

 村上の良さは「相手の球種を読んで打つ」ことにある。読みが外れたときにはもろさを露呈する一方、難しいコースに変化球が来ても、反対方向にホームランを打つことのできる能力を兼ね備えていた。小川監督は「多少の欠点には目をつぶって、長所を伸ばしていこう」と考えたのだろう。コーチがあれこれと細かくアドバイスを加えて、萎縮させるようでは、彼の長所を生かすことはできないとも考えていたはずだ。

 臆することなく、村上はバットを振り続けた。どんな場面でも普段通りのスイングを心がけることで、山のような凡打も築いたが、切れ味鋭いバットスイングで並みいる好投手を打ち崩すことにも成功した。その結果、セ・リーグ最多記録となる184三振を喫した一方、高卒2年目タイとなる36本塁打、高卒2年目最多となる96打点を記録するまでになった。

 もし、コーチがあれこれ村上にアドバイスしていたらどうなっていたか。私はA選手のように、コーチに言われたことをこなすことに終始してしまったと思う。「今、どんな課題に取り組むべきか」が明確にならず、頭の中が混乱したことだろう。つまり、村上に関しては小川監督の判断が正しかったのだ。

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