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元ヤクルト・橋上秀樹氏が語る、若手を「潰す」指導と「伸ばす」指導の違い
2020.01.23

小山宣宏の「勝利の裏にあるもの」第41回

元ヤクルト・橋上秀樹氏が語る、若手を「潰す」指導と「伸ばす」指導の違い

著者 小山宣宏

ドラフト上位の若手を「潰した」指導とは

 名前は伏せるが、これはある球団で実際に起こった話である。

 仮にその選手の名をAとする。彼は高校時代に甲子園に出場し、その後、ドラフトの上位で指名されてプロ野球での将来を有望視されていた。開幕から内野のレギュラーを任され、スケールの大きな選手になるよう、一軍の打撃コーチは特に目をかけ、気になることがあれば、とにかく彼にアドバイスを送っていた。

 たとえばバットの構えから、フォロースルー(バットを振り終わるまでの動作)に至るまで、打撃コーチが「こうしたほうがいい」と逐一アドバイスする。一見すると、丁寧に指導していると思えるが、体つきや筋肉の強さや柔らかさなどは、個々の選手によってまったく違う。つまり、「コーチの言われたことに適合する選手もいれば、そうでない選手もいる」というわけだ。

 残念ながら、A選手の場合は、打撃コーチの指導通りに成長することはできなかった。コーチのアドバイスを聞き流すことなどできるはずもなく、コーチに一方的に言われるがままの練習をひたすら行うだけだった。それだけでは信頼関係など築けるはずもない。最終的にはどこをどのように修正すればいいのかわからなくなってしまい、打撃練習ですら嫌になってしまった。

 悲劇はそれだけに止まらなかった。その一軍コーチは、二軍の打撃コーチとA選手の欠点について、情報を共有していなかったのだ。一軍と二軍で選手の欠点や課題を共有していなければ、二軍コーチが指導できるわけがない。

 結局、A選手は一軍の打撃コーチからアドバイスを送られている間は、まったく芽が出なかった。そうして打撃コーチは結局「彼はダメだ」と一方的に見切りをつけてしまったのである。

 だが、皮肉なことにA選手が結果を出し始めたのは、この直後からだった。打撃コーチから何も言われなくなり、自ら課題を考え、日々の練習を繰り返していくうちに、打撃技術が向上していった。一軍の試合でも活躍できるようになったのだ。

 コーチから言われたことをこなしている間は成績がまったく上がらなかったのに、自ら考えて練習に取り組むようになってから成績が向上したのだから、これではコーチの存在意義が問われてしまうのも無理はない。

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