Bizコンパスの人気記事をアクセス数順に紹介する「Bizコンパス 月間アクセスランキング」。今回は9月アクセスランキングを発表します。1位に輝いたのは、静岡県の名産品で知られるあの会社が、IoTを導入した記事でした。
1位に輝いたのは、静岡県浜松市の名産品「うなぎパイ」のメーカーとして知られる有限会社春華堂が、IoTで配送トラックを管理することで、安全運転のための仕組みを構築した事例に迫った「社員の安全と『うなぎパイ』ブランドを守る、春華堂のIoTの取り組みとは」でした。
春華堂では、商品を工場から直営店や量販店に運ぶ配送トラックの側面に、うなぎパイを大きくデザインし、“走る広告塔”としても活用しています。そのため、トラックの安全運転については、かねてから指導を徹底していました。しかし、指導を受けた社員が、本当に安全運転ができているのか、指導による効果は出ているのか、それらを確認する方法はありませんでした。
そんな折、春華堂の山崎社長は、同じく浜松に拠点を構えるある企業から「IoTサービスを導入したことで、社用車の交通事故・違反がゼロになった」という話を聞きます。検討の結果、交通事故・違反による業務効率の低下、保険料のコスト低減に効果が見込めることが判明したため、春華堂はIoTの導入を決定します。
同社が導入したシステムは、NTT ComのIoT車両運行サービス「Vehicle Manager」。通信機能やGPS機能を内蔵した小型車載器を搭載することで、車両の位置情報、急加速、急ブレーキ、速度超過などの運転状況をリアルタイムに把握できるサービスです。約1カ月という短期間で、17台の配送車両に車載器を搭載します。
この結果、導入から4カ月間にわたって無事故の記録が継続中。IoTによって速度や急発進、急ブレーキといった運転状況の振り返りができるようになったため、ドライバーも「安全運転をしよう」という意識が高まっているといいます。
しかし導入当初は、社員に『行動が監視されるのでは?』という懸念の声があったといいます。同社はどのようにして、従業員の不安を取り除いたのでしょうか?
2位には、海外拠点や海外のスタッフとテレビ会議をする際に、自動で翻訳をしてくれるサービスを取り上げた「もう英語だけの会議で戸惑わない!自動翻訳してくれるサービスが登場」(9月11日公開)でした。
ビジネスシーンにおいて、会議はつきものです。現在では、海外や遠隔地に勤務するスタッフやビジネスパートナーと映像・音声を結び、テレビやパソコンの画面を通じて会議をする「テレビ会議」「Web会議(ビデオ会議)」を利用するケースも多いでしょう。
こうした遠隔会議で困りがちなのが、言葉の問題です。たとえ互いに同じ言語を理解していたとしても、特有のアクセントが聞きづらかったり、微妙なニュアンスが伝わらないなどの問題が発生します。議事録を作成するのも一苦労でしょう。
しかし最近は、こうした会議における言葉の問題を、AIで解決するサービスが登場し始めています。たとえばNTT Comの「Arcstar TV Conferencing」には、各参加者が母国語で話すだけで、発言内容を聞き手側の言語に自動で翻訳するオプションサービスがあります。翻訳内容は、会議中の画面上へ字幕で表示され、音声でも読み上げられます。翻訳データはテキストファイルでダウンロードできるため、議事録の作成にも役立ちます。
なぜArcstar TV Conferencingでは、このようなことができるのでしょうか?その鍵を握るのが、NTT Com、Google、Microsoftの3社が提供するAPIです。Arcstar TV ConferencingではこれらのAPIを組み合わせており、日本語、英語を含む20言語/30種類の音声認識、20言語/21種類の翻訳に対応し、さらにはインド英語、オーストラリア英語といった地域ごとに異なる英語も認識可能です。
すでに利用者からは「十分にビジネスに活用できる」という声もあるようです。グローバルに展開する企業は、まずは短期契約プランで、使い勝手をたしかめてみてはいかがでしょうか。
3位には、学習塾「KUMON」の運営会社として知られる株式会社公文教育研究会(以下、KUMON)が、社員間や講師と密接なコミュニケーションを取る体制づくりのために、既存の電話システムを刷新した事例を取材した「社員同士の学びを推進する、スマホを使ったKUMON独自の『働き方改革』」(9月4日公開)でした。
KUMONでは、全国の教室で培われたノウハウを結集するために、各地の事業拠点を再編し、多くの社員が同じ拠点で働くスタイルへと変更しました。同時に、各教室との距離が物理的に離れてしまわないよう、今まで以上に講師陣と緊密な連携を図る体制を築くための新たなコミュニケーションについても、導入を検討していました。
特に課題となったのが、既存の電話システムと、スマ―トフォンの運用法でした。電話システムは、オンプレミスのPBX設備に3つのメーカーが混在しており、性能も更改時期もバラバラで、社員に提供できる機能にも、拠点によって差がありました。スマホについては、働き方改革の一環として従業員に貸し出していたものの、紛失や盗難の恐れがある点の不安がつきまとっていました。
KUMONはこれら2点の仕組みを変更。まず電話システムについては、各拠点でバラバラだったPBXを廃止し、データセンターにIP-PBXを設置し、音声基盤を統一。さらに、連絡先の情報を、端末ではなくクラウドで管理する、クラウド型のWeb電話帳も導入しました。これらのシステムを他の拠点に先駆けて導入した同社の東京・神奈川オフィスでは、フリーアドレス化、リモートワーク、フレックス勤務という新たな働き方が実現できているといいます。
特に、クラウド型のWeb電話帳の効果は、セキュリティ面だけでなく、使い勝手の面でも大きく変わったといいます。電話環境を刷新するだけで、ビジネスは従来よりもガラッと変わるということが、この記事でよくわかるはずです。
4位は、AI活用型のオンライン法律顧問サービスをスタートした株式会社アガルートに、サービスの狙いと特徴を聞いた「AI法律相談窓口をオンラインで開設、アガルートのリーガルテック戦略とは」(9月17日公開)でした。
アガルートのAI技術を活用したオンラインの法律相談窓口は、中小企業、小規模事業者向けのサービスとなります。多くの中小企業は、費用の観点から弁護士との顧問契約を結べていないケースが多いといいます。同社はそうした人たちが、法律を基礎から理解できるような窓口を目指し、オンラインの法律相談窓口の開発をスタートします。
同社が当初想定していたチャットボットでは、問い合わせに対するレスポンスが遅く、加えて検索精度も悪く、ユーザーが手軽に利用できる操作性には程遠い状況でした。しかし同社は、“あるテクノロジー”を導入することで、素早いレスポンス、回答精度の高さを備えたチャットボットを作りあげます。
こうして9月に、AIを用いた法律相談窓口「AIリーガルコモン」のベータ版がスタート。サービス提供開始時点で、人事・労務系で約1000件のFAQを準備しており、FAQの範囲を超えた質問に対しては、弁護士によるメールや電話、もしくは面談による個別相談で対応します。利用料金は月額基本料4,000円(税別)から。一般的な弁護士の顧問料である月額数万円と比べると、リーズナブルな価格となっています。
同社がAIリーガルコモンを作り上げるうえでキーとなった“あるテクノロジー”とは、一体何だったのでしょうか?その答えは本文でご確認ください。
5位は、現在Boxを社内の公式ツールとして利用している“お堅い会社”が、セキュリティ面における高いハードルを乗り越えて、正式導入するまでの経緯を取り上げた「“お堅い会社”が『Box』を公式ツールに採用。何がどう変わった?」(9月11日公開)でした。
タイトルの“お堅い会社”はNTT Com、Boxとは世界的に展開されている法人向けのクラウド型ファイル共有サービスのことです。NTT ComはBoxの日本国内代理店であり、社内でも公式ツールとして活用していますが、もともとNTT Comではセキュリティポリシーとして、BoxのようなSaaSサービスの利用は認められていませんでした。
2017年、NTT Comはトライアルという形でBoxの導入を認めます。しかし、当時の同社のIT環境は、情報漏えいリスクの少ないシンクライアント端末であり、Boxのようなブラウザベースのサービスは利用しづらい環境でした。
しかし、同年5月に個人情報保護法が改正されると、指定された技術要件を満たせば、社外への情報の持ち出しが原則認められることになりました。この法改正を受け、NTT Comでは、自社のセキュリティポリシー及び社内ITを、クラウド利用に適するよう大幅に変更。従業員に付与していた端末を、端末に情報を残してもセキュリティレベルを担保する「セキュアドPC」に変更。Boxも社内公式ツールとして認められました。
単にBoxの使用が許可されただけでなく、セキュリティ面でも対策が図られました。サービスの不正利用が発見できるよう、マイクロソフトのアクセス管理サービス『AzureAD(Azure Active Directory)』でユーザー認証を行います。さらに、モバイルデバイスから自社コンテンツへのアクセスを安全に管理するためのアプリケーション『Box for EMM』も導入、端末の紛失、盗難の際に、機密情報を削除できるにしています。
ITの世界では、新しい便利なツールが日々誕生していますが、“お堅い会社”では、ルール上、そうしたツールを諦めてしまいがちです。まだBoxが導入できていないという企業は、本記事を参考に、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
6位は、デジタルトランスフォーメーション(DX) に取り組む意欲はあるものの、何から取り組めば良いのかがわからず、立ち往生している企業に見られる“あるある”を取り上げた「なぜ日本でDXが進まないのか? 企業が陥る『あるある』を解説」(8月23日公開)でした。
7位は、デジタル技術を活用した新しいビジネスモデルの参入がゲームチェンジを起こす時代にもかかわらず、日本は経営者の理解不足や既存システムが足枷となり経済損失を生んでしまう「2025年の崖」というワードを解説した「『2025年の崖』とは、どんな崖か?」(2018年12月24日公開)でした。
8位は、東京急行電鉄が開発した、運行情報や、ホームや改札、車両の混雑度を可視化し、列車到着時間を表示する「東急線アプリ」について、同社の開発者にインタビューした「駅や列車の“今”が見えるUXに優れた東急線アプリ」(9月9日公開)でした。
9位は、インターネットから取得されるものを “すべて信頼できない”という前提でセキュリティ対策を行うクラウドサービス「Menlo Security」の安全性を解説した「CTO講演からひも解く!米国国防情報システム局も認める『Menlo Security』の安全性とその理由」(9月6日公開)でした。
10位は、ラグビーワールドカップ2019日本大会の公式キャッチコピー「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」を生み出したクリエイターの吉谷吾郎氏に、どのような経緯でこの言葉が生まれたのかをインタビューした「『4年に一度じゃない。一生に一度だ。』を生み出したラガーマンの矜持」(6月6日公開)でした。
今回のランキングは、1位の春華堂、3位のKUMON、4位のアガルート、5位の“お堅い会社”と、事例に関する記事が上位に集まりました。Bizコンパスでは今後も、企業に新たなITサービスを導入することで、業務を良い方向へと変えた、リアルな実例を取り上げていきます。引き続きご愛読いただけますよう、よろしくおねがいします!