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なぜ日本企業は先陣を切らないのか。スマートシティ開発3つの課題と最大の壁
2021.06.15

IT&ビジネスコラム第11回

なぜ日本企業は先陣を切らないのか。スマートシティ開発3つの課題と最大の壁

著者 NewsPicks BrandDesign

スマートシティがつくる“幸せな暮らし”とは

──課題が山積しているスマートシティ開発ですが、その社会への実装は“幸せな暮らし”を実現するのでしょうか。

加賀 幸せの形は多様化しているので定義が難しいのですが、あえて言うなら私たちは“ストレスのない街”をつくりたいですね。

 例えば、ある人がオフィスに行くと、ビルがその人好みに照明や空調まで調整してくれる。初めて街を訪れても、人の目的や好みに応じた情報や最適ルートが都度プッシュされる、とか。

 いろんなことが先回りで提供される世界をNTTコミュニケーションズとして実現したいと考えています。

豊田 リアル体験のUX改善ですね。それが実装できたらすごいですよ。シンプルに聞こえますけど、現実に統合するのは難しいですからね。

 僕が思う幸せな暮らし方として、“居場所の選択肢”が格段に広がると思います。

 コモングラウンドの実装が進めば、物理世界に縛られなくなる。すると、暮らし方はおのずと“離散的”になり、家も仕事も学校もエンタメも、距離を超えてすべて別々の場所を選べる。「都会に住むか、田舎に住むか」といった二択を迫られなくなります。

 自然の中で子育てしたいけど、田舎には仕事がないし、学校や塾も少ない。そういった理由から都心に住む人がたくさんいます。

 次世代型スマートシティが正しい形で実現すれば、いろんな場面で“二者択一”に縛られなくなり始めるでしょう。長年の課題である都市一極集中も、自然と解消される流れを生み得ると思います。

加賀 コロナ禍で疑似体験したのは、まさにその世界観ですよね。家にいながらにして、仕事も飲み会もできた。郊外へ移住する人も出てきていると聞きます。

 私が入社した頃、同僚と「通信の究極は、距離を超えること。その場に行かなくても、その場の体験が100%できる世界の実現じゃないか?」と話したことがあって。豊田さんが今おっしゃったのが、まさにそんな世界ですよね。

豊田 距離や時間に縛られなくなると、反対に内臓感覚や運動感覚のような、転送できないものの価値が浮かび上がってくると思います。

 神田のような“街のニオイ”は転送できませんし、人工的につくることも不可能。なので、リアル体験の価値や場所の個性、帰属するコミュニティのプライドのようなものが、もっと街ごとに大切にされるようになるのではないでしょうか。

──スマートシティ化すると、街は没個性になると思っていました。

豊田 むしろ、街のアイデンティティが際立っていくんです。

 今後の再開発では、まず大型ビルの“ディズニーランド化”が始まるでしょう。もう丸々一棟オフィス用途だけのビルなんて、不便でニーズがない。

 だから建築基準などの法改正をしてでも建物機能の多様性や流動性を上げ、再開発の大型ビルにもオフィスだけでなく、住居や教育などさまざまなサービスが細かく入り込んでいく。

 集約効果と量による高級化だけでは、不動産開発は早晩成り立たなくなります。

豊田 その後、神田のような既存の市街地の再評価が始まるはずです。

 新旧いろんな店が入り乱れ、床の借り方も大型ビルよりよっぽど流動的。足りないのは大型再開発にあるような、集約効果としてのエリア単位のサービスです。

 もしデベロッパーが土地のデータやインフラを含めたサービスプロバイダ化して、既存の街でも再開発エリアと同等のサービスが受けられるようになれば、「画一的な再開発エリアよりも、多様なアイデンティティが混在する土地に分散して拠点を持つほうがいい」という考え方も出てくる。

 実際、コロナ禍はその動きを加速しています。そんなふうに、街の歴史性や土着性が重視される流れが生まれるのではないでしょうか。

 スマートシティが実現すれば、人々が街に求める価値は間違いなく変わっていくはずです。

(構成:横山瑠美 聞き手・編集:中道薫 撮影:森カズシゲ デザイン:岩城ユリエ)

※この記事はNews Picksから配信されています。

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