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なぜ日本企業は先陣を切らないのか。スマートシティ開発3つの課題と最大の壁
2021.06.15

IT&ビジネスコラム第11回

なぜ日本企業は先陣を切らないのか。スマートシティ開発3つの課題と最大の壁

著者 NewsPicks BrandDesign

日本特有のスマートシティ開発3つの課題

──こうしたスマートシティの実現に向けた動きがあるなかで、日本が抱える課題は何でしょうか?

豊田 大きく分けて、法整備とキープレイヤー、マネタイズの3つではないかと思っています。

豊田 次世代型スマートシティのあり方を長期的に考えていくと、土地の所有権、データの所有権と利用権、セキュリティの問題などが複雑に絡み合ってきます。

 なのに、そうした新しい領域を扱う法律がまだない。

 この点を整理するのが、コモングラウンド実装にあたっての喫緊の課題。今まさに法律や行政の関係者と話を進めているところなんですよ。

加賀 街頭の監視カメラの映像も、撮った人のものなのか、撮られた人のものなのかという議論がありますね。

豊田 そう。既存の法解釈とは異なるべきはずの、良くも悪くもグレーな部分がまだたくさんある。

 もちろん、テロの危険性などを考慮してセキュリティは担保されなければなりませんが、現行の「所有権」といった考え方を超え、公共のために公開するデータ領域もあるほうが、より良い社会になるかもしれない。残った個別の問題は、後で考えればいい。

 そうでなければ数年のうちに、データは膨大にあるのに権利関係がガチガチでまったく使えない、なんてことになりかねません。

法整備が進まなければ、公共のためのデータに“ブラックホール”が生まれることになる

豊田 NTTグループは、米・ラスベガス市のスマートシティプロジェクトに参画されていますよね(※)。データの所有権やアクセス権はどうされているんですか?

※2018年9月より、ネバダ州・ラスベガス市・NTTが共同で行っている実証実験

加賀 データの所有権は原則、すべてラスベガス市にあるというスタンスです。

 「NTTはプラットフォームを構築してデータを取得するけれども、それをどう使うかは市で決めてください」ということですね。この提携で得たデータを保有して、収益源にしていこうという考えは一切ありません。

 世界各地でスマートシティ開発は進んでいますが、実証実験で終わってしまうところが多い。それはやはり、マネタイズが難しいからだと感じています。

 うまくいっているスマートシティはたいてい、国や自治体、企業が莫大な先行投資をしています。中国・杭州がその最たる例ですね。アリババが国のお墨付きを得て大変なスピードで開発を進めている。日本にはとても真似できません。

──なんだか、マネタイズの見通しもないインターネット黎明期に、粛々と根を広げていたGAFAを想起させますね。

豊田 そう、ネットの登場と同じで、エシカルな面も含め、スマートシティ開発は未開の“ビジネスの新大陸”レベルなんですよ。

豊田 米中型のスマートシティ開発は、資金力・技術力・開発力のある巨大IT企業がキープレイヤーとなって単独で進めていますよね。

 加賀さんが挙げた杭州や、撤退はしましたがGoogleの関連会社Sidewalk Labs(サイドウォーク・ラボ)が推進していたカナダ・トロントなどがそうです。

 反対に、EU型のスマートシティ開発は自治体主導。トップクラスの有識者が内部にいて、ソーシャルグッドの旗印のもと、複数の企業と慎重かつオープンに連携するスタイルです。

 日本の可能性がまだあるとすれば、そのハイブリッド型と言いましょうか。テクノロジーは米中寄りですが、複数社が関わらざるを得ない点は、むしろポジティブな意味でEUに近い。

 ただ、国や自治体にそれをグランドデザインできる人がいるわけではないので、結局、民間主導になる。

 すると、どうしても各社が今ある自社商品を売らんがための、近視眼的なまちづくりに陥る危険性もはらんでいます。

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